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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

8/20(火)第11回東京音楽コンクール/本選ピアノ部門/優勝および聴衆賞は黒岩航紀さん

2013年08月21日 00時48分59秒 | クラシックコンサート
第11回東京音楽コンクール 本選 ピアノ部門

2013年8月20日(火)18:00~ 東京文化会館・大ホール 自由席 1階 3列 16番 2,000円
指 揮: 梅田俊明
管弦楽: 日本フィルハーモニー交響楽団
【演奏者と曲目】
小林海都★ラフマニノフ: ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
今田 篤★ラフマニノフ: ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
黒岩航紀★ラフマニノフ: ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30
佐藤元洋★ショパン: ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11

 東京音楽コンクールも今年2013年で第11回を迎える。CDによる予備審査を経て、7月から非公開審査の第1次予選、公開審査の第2次予選を通過したピアノ部門のファイナリストは4名。今年はどうした訳か全員男性である。本選会はオーケストラとの共演でピアノ協奏曲を演奏することになるわけだが、モーツァルトからプロコフィエフまで37曲に及ぶ課題曲の中から4名のファイナリストが選んだ曲は、上記の通りである。今回はラフマニノフが3曲とショパンが1曲。コンクールのファイナルだから、演奏する側は極度の緊張を強いられ、必死の思いで演奏するのであろう。一方で聴かせていただく私たちは、将来有望な若手のイキの良い演奏を1曲500円で聴くことができる、などといったら大変不謹慎であるが、いずれにしても若い人たちの演奏は生命力が強く感じられて、清々しく聞こえる。選考結果の予測なども交えて、演奏順に追っていこう。
 なお最終選考の結果は、本日午後9時50分頃から始まる表彰式で発表されるとのことであったが、演奏会は午後6時に始まり9時頃終了したので、結果を待たずして帰宅することにした。結果は早々にWebにアップされるとのことであった。このブログを書いている時点では、すでに発表になっている。従って以下に書かれるのはまったくの私見、予選会はまったく聴かずに、本選会のみを聴いた個人的な印象をまとめたもので、客観性は・・・・あまりないようである。

●小林海都さん(1995年生まれ/上野学園高等学校3年在学中)
【曲目】ラフマニノフ: ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
 ファイナリストでは最年少。全体的に遅めのテンポ設定で、曲の流れ自体が重々しく感じられた。小林さんのピアノは、均等に音が配分されていてバランスが取れているのは良いのだが、逆に平板な印象が強かった。とくに第2楽章の分散和音などはしっかりと正確に演奏しようとしていたためか、機械的で深みが感じられなかった。全体的にも表現力の幅がまだまだ狭いような感じだった。また、どうもオーケストラとのアンサンブルがバタついている印象。お互いが合わせようとしているのにうまく噛み合わない、といった感じで、遅めのテンポ設定がリズム感を悪くしていたような気がする。とくにミスがあったわけでもなく、無事弾き切ったが、一人目ということもあってか、力を十分には発揮できていなかったのではないだろうか。

●今田 篤さん(1990年生まれ/東京藝術大学大学院音楽研究科1年在学中)
【曲目】ラフマニノフ: ピアノ協奏曲 第2番 ハ短調 作品18
 続けて同じ曲であったが、アプローチが全然違っていた。まずテンポが全体的に速めで、推進力がある。冒頭から伴奏にまわったピアノの分散和音に流れるようなリズム感がある。オーケストラの隙間を突いて浮かび上がる主旋律の呼吸が上手い。小さなフレーズのひとつひとつにも細やかなニュアンスが描かれ、その描写力、表現力は群を抜いていたと思う。音質も実に多彩で、硬質な金属音のような重低音からガラス玉を転がすようなクリスタルな響きまで、非常に豊かな音色を持っていた。テクニックも安定しているし、リズム感も良い。オーケストラとのアンサンブルもピタリと合っている。その際、ピアノの音が自然に溶け込んだり、旋律が飛び抜けてきたり、明瞭に描き分けられていた。オーケストラ側もノリが良く、演奏しやすそうだった。

★この時点で私の評価は、今田さん/小林さんの順。

●黒岩航紀さん(1992年生まれ/東京芸術大学音楽学部4年在学中)
【曲目】ラフマニノフ: ピアノ協奏曲 第3番 ニ短調 作品30
 後半はラフマニノフの3番から。黒岩さんは身体は小柄だが驚くべき超絶技巧の持ち主のようだ。テクニックには自信があるから、この難曲を選んだのだろう。3番は2番に比べてピアノの比重がさらに大きくなる。第1楽章のカデンツァも長いし、第2楽章にも第3楽章にもソロで弾く部分が多い。オーケストラがお休みして、ピアノの一人舞台となったとき、黒岩さんの目の覚めるようなテクニックが冴える。テンポを速めにして、とにかく指がよく回る。装飾的なパッセージなどはスゴイ早さで目にも止まらない。これだけの技巧の持ち主なら、この曲を選んで正解なのだろう。
 一方で気になったのは、音量が意外に小さいことだ。他の3人に比べても明らかに小さい。だからオーケストラとのアンサンブルでは、音が飲み込まれがちで、よく聞こえない部分も多かった。ソロ部分が目立ったのは、そういう状況もあったような気がする。予選会は聴いていないので分からないが、ピアノ・ソロの演奏であれば、かなり煌びやかなパフォーマンスであったろうと想像されるが、協奏曲ではパワー不足が今後の課題だろう。

★この時点で私の評価は、今田さん/黒岩さん/小林さんの順。聴衆賞は黒岩さんだろう。

●佐藤元洋さん(1993年生まれ/東京芸術大学音楽学部2年在学中)
【曲目】ショパン: ピアノ協奏曲 第1番 ホ短調 作品11
 最後はショパンの1番。佐藤さんはヒョロリとした体型で、いかにもショパン弾きというイメージだ。しかし曲が冗長であるためか、この曲を最後まで飽きさせないで弾くのは大変だと思う。第1楽章はソナタ形式だが長いし、第2楽章は変奏曲風、第3楽章はロンド。つまり同じような旋律が延々と繰り返されるからだ。佐藤さんの演奏も、どうしても繰り返していくうちにヴァリエーションが底をついたようになり、変化に乏しくなってしまった。逆にショパンならではの美しい旋律を装飾音符を付けて弾くような部分では、徐徐的な表現力と繊細な音色が素敵で、非凡なところを見せた。

★全曲終了しての私の評価は、今田さん/黒岩さん/佐藤さん/小林さんの順となった。聴衆賞は黒岩さんでキマリだろう。こうして勝手に順位を付けたりしつつ、結果を待つほど暢気でもないので帰宅することにした。聴衆賞は、今田さんに1票を投じた。帰宅する途中、iPhoneで東京文化会館のWebサイトをチェックしたら、選考結果が既に掲載されていた。結果は以下の通りである。

【第11回 東京音楽コンクール《ピアノ部門》最終選考結果】
  ●第1位・・・・黒岩航紀
  ●第2位・・・・小林海都、今田 篤
  ●入 選・・・・佐藤元洋
  ※聴衆賞・・・・黒岩航紀

 うーむ、ガッカリ。私の評価はすっかりハズレてしまった。やはりピアノは難しい。奥が深い。審査委員のそうそうたるメンバーを見ると、やっぱりエライ先生方の評価の方が絶対間違いないような気がしてくる。素人の私は1曲500円で楽しませていただいたということにしておこう。

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