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オペラとクラシック音楽に関する肩の凝らない芸術的な鑑賞の記録

12/23(土・祝)読響土曜マチネー「第九」指揮がゲッツェルに変更/キレが良くドラマティック、しなやかなサウンドが轟く

2017年12月23日 23時00分00秒 | クラシックコンサート
読売日本交響楽団 第202回土曜マチネーシリーズ

2017年12月23日(土・祝)14:00〜 東京芸術劇場コンサートホール S席 1階 A列 16番 6,141円(会員割引)
指 揮:エマニュエル・クリヴィヌ → サッシャ・ゲッツェル
ソプラノ:インガー・ダム=イェンセン 
メゾ・ソプラノ:清水華澄
テノール:ドミニク・ヴォルティヒ 
バ ス:妻屋秀和
管弦楽:読売日本交響楽団
コンサートマスター:長原幸太
合 唱:新国立劇場合唱団(合唱指揮:三澤洋史)
【曲目】
ベートーヴェン:交響曲 第9番 ニ短調 作品125「合唱付き」

 読売日本交響楽団の「第202回土曜マチネーシリーズ」でベートーヴェンの「第九」交響曲を聴く。年末恒例の行事だ。読響は「名曲シリーズ」「土曜マチネー」「日曜マチネー」「みなとみらいホリデー名曲シリーズ」の4つの定期シリーズが12月の公演は「第九」演奏会となる。私は複数のシリーズで会員になっているので、毎年どこかの会場で必ず、読響の「第九」を聴いている。ことしは色々なスケジュールの都合で、「土曜マチネー」を聴くことになった。東京芸術劇場コンサートホールは音が響き過ぎる傾向があり、とくに声楽や合唱はあまり適していないような気がする。残響が長く、音が少々こもってしまうため、「声」がすっきりと通らないようである。
 それはともかくとして、毎年聴いている読響の「第九」は、オーケストラの特性はよく知っているので、殊更、指揮者による違いが明確になる。ところが、その指揮者が直前に変更になった。急遽代役で登場することになったサッシャ・ゲッツェルさんは、ウィーン・フィルのヴァイオリン奏者から指揮者に転向した人で、シンフォニーにもオペラにも着々とキャリアを積み上げている。昨年2017年4月に読響に客演していて、なかなか好評であった

 演奏の方は、結論から言うと久々に(?)素晴らしく感動的な「第九」となった。最近の傾向というわけではないかもしれないが、外国からどちらかというと若手から中堅の指揮者を招聘して「第九」を演奏すると、速めのテンポでアッサリした演奏することが多いような気がする。「第九」が決して特別な曲ではなく、ベートーヴェンの九つ目の交響曲というような捉え方だろうか。それに対して巨匠タイプのベテランは緩やかなテンポで堂々とした造型を好む。そんな中、ウィーン生まれのゲッツェルさんはまたひと味違った「第九」を読響から引き出したようである。

 第1楽章は速めのテンポで始まったので、またか、という思いであったが、ゲッツェルさんの音楽は決してアッサリはしていない。微妙に変化するテンポ感がとてもしなやかで、強弱のメリハリが強い。読響の特性である爆発力を上手く捉えていて、非常にダイナミックな造型を作り出すことに成功していた。弦楽のアンサンブルにキレとパワーがあり(コンサートマスターは長原幸太さん)、金管と打楽器のリズム感も良く、早いテンポでも旋律をしなやかに歌わせていた。
 第2楽章のスケルツォは、これもテンポは早めではあるが、とにかく強弱がハッキリしているため、音楽が非常にダイナミックに聞こえる。テンポ感もリズム感も良く、いわゆるノリの良い演奏。オーケストラが一つになって弾むイメージだ。
 第3楽章は、緩徐楽章。テンポはそれほと速くはないが、20世紀の巨匠達に比べれば、速い方になるだろうか。ゲッツェルさんはオペラにも強い人なので、緩徐楽章の息の長い主題の歌わせ方が上手い。大きな身振り手振りでオーケストラを牽引していく。読響もキレの良い演奏で、しなやかに付いていく。
 第4楽章は、冒頭から非常にメリハリを効かせ、低弦のレチタティーヴォもしなやかに歌わせる。歓喜のテーマが低弦に現れオーケストラ全体に広がっていく部分では、速めのテンポでダイナミックレンジを広く取る。全合奏のパワフルさは読響ならではの迫力と質感の高さだ。そして妻屋秀和さんのバスが朗々とホールに響き渡る。そこから先は、まさに「第九」の世界観が作られていく。4人のソリストは、それぞれ力量も十分だったが、埋もれがちになってしまうメゾ・ソプラノの清水華澄の声がよく通っていた。今一番ノッているメゾだろう。合唱は唯一のプロ、新国立劇場合唱団。人数はさほど多くなくても、瞬発力があり、息の長いチカラもある。何よりハーモニーのキレが良く、ソプラノ、アルト、テノール、バスのバランスも見事である。弱音から極めて美しく引き締まったハーモニーを聴かせ、強音ではかなりパワフルだ。大人数の合唱団とは違った、プロの音楽である。「第九」の中にオペラ『フィデリオ』のイメージが重なってくるのも、新国立劇場合唱団ならではであろう。

 今回の読響の「第九」は久し振りに感動的・・・・といったら失礼かもしれないが、とても素晴らしかったと思う。ゲッツェルさんの音楽作りがウィーン風なのか、テンポ感とダイナミックレンジに優れた演奏の中に、どこかまろやかな味わいがある。つまりはオーケストラも合唱も、しなやかな節回して歌わせていると言うことだろう。即物的、器楽的な演奏ではなく、人の持つチカラが前面に出て来ていて、生命力に溢れた演奏。聴く者の心に響き、共感を呼ぶような、エネルギーが感じられたのである。

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