犬鍋のヨロマル漫談

ヨロマルとは韓国語で諸言語の意。日本語、韓国語、英語、ロシア語などの言葉と酒・食・歴史にまつわるエッセー。

妓生/キーセン~もの言う花(5)

2006-11-28 06:56:41 | 慰安婦問題

 川村湊著『妓生』は,朝鮮時代の暴君,燕山君についてもふれています。

 今年の前半に封切られた「王の男(ワンエ ナムジャ)」に出てきた王様ですね。「怪物/グェムル」に抜かれてしまいましたが,一時的に観客動員最高記録を塗り替えました。

 
燕山君十年 諸道を大小邑に分け,皆に妓楽を設け,運平と号す。運平三百人を選び,都平に入内させ,任士洪を以て採紅使と為す。(朝鮮実録)

 
燕山君は,妓生は「泰平」を運んで来るという理由で「運平」という名称に変えさせた。任士洪を「採紅使」という特別な官職に任命し,各地方,各郡の美人の誉れの高い女性たちを,人妻だろうが,妾だろうが,一切構わずに強奪させ,「運上」させた。また,各郡の八歳から十二歳の容色の優れた女たちを「選上」させ,これを淫したという記録もある。「王,色を漁す,区別なし」と『朝鮮実録』は,呆れたように記している。

 
彼はまた,妓生専門に各種の施設を作り,住居は「含芳院」「蕾陽院」「趁香院」,病院は「欽清閣」,食料倉庫は「護花庫」,給食係の役人は「典備使」と名付け,年老いた妓生のために養老院を作り,とくに覚えのめでたかった妓生は「会緑閣」で手厚く保護した。

 
一方,化粧をしなかったり,衣装が汚れていた,乱れていたという理由だけで,その妓生,世話をすべき妓夫に,容赦なく杖叩きなどの罰を与えた。妊娠した妓生は宮中から外に出し,生まれてきた子はそのまま生き埋めにさせた。埋めなかった死体片付人は,これを重く罰した。

 
それ以外にも奇行の数々が伝えられている。牝と牡の馬がつがったのを見物したり,妓生の夫を調べ上げて皆斬殺したりした。皇后を廃し,その後に見境なく女性を後庭に引き込んで淫蕩な行為を行った。女性の数は百人に始まり万人に至ったという。また,普通なら表彰すべき孝子や烈女を,偽善をなし,人をたばかる者として断罪したりした。

 
晩年には慶会楼付近に大きな築山としての万歳山を作り,その山上に月宮を作って満山を切り花で飾った。池には龍舟を浮かべて,妓生三千余人が笙を吹き,歌をうたって沸騰するような賑やかさだった。全国各地の未婚の処女を「青女」と称して「選上」させた。

 
彼の治世は,奸臣と妓生を除いた多くの人々を苦しめ,十二年間も続いたのである。

川村湊『妓生-もの言う花の文化誌』より引用

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