弁理士の日々

特許事務所で働く弁理士が、日常を語ります。

金賢姫拘束の真相(5)

2008-04-26 11:31:26 | 趣味・読書
昨年の12月15日にフジテレビ放送の『大韓航空機爆破事件から20年 金賢姫を捕らえた男たち~封印された3日間~』を見て以来、このブログでは4回にわたって金賢姫拘束に至るできごとで知り得た事実を述べてきました。
昨年12月16日 金賢姫拘束の真相
  12月26日 金賢姫拘束の真相(2)
  12月28日 金賢姫拘束の真相(3)
今年1月29日 金賢姫拘束の真相(4)

参考文献としては、
砂川昌順著「極秘指令~金賢姫拘束の真相
李鍾植著「朝鮮半島最後の陰謀―アメリカは、日本・韓国を見捨てたのか? 「非道な北朝鮮」と「愚かな韓国」
を読みました。

フジテレビの番組を見るまで、金賢姫拘束に至る主役は韓国官憲であると単純に信じていました。ところが、日本の在中東大使館員たちが独自の調査で、バーレーンに潜伏する金賢姫らに到達し、バーレーンから出国しようと試みた金賢姫らを拘束するに至ったらしいことがわかりました。
私はそれでも、韓国官憲ルートと日本大使館ルートがそれぞれ独自に金賢姫に到達したのかなと、類推していました。たとえ日本大使館ルートが存在しなくても、韓国官憲ルート単独でも金賢姫に到達しえたのではないかと。

ところが、砂川さんが書いた極秘指令~金賢姫拘束の真相によると事実は異なるようです。
複数の情報相互間で矛盾がある場合、砂川さんの本の内容に(たとえ誇張はあるにしろ)嘘はないものとして扱いました。矢原さんがご存じの範囲で「それは違う」というところがありましたら、ぜひ教えてください。

《在バーレーン日本大使館での動き》
1987年11月30日午後、アラブ首長国連合の日本大使館から極秘大至急電報が入ります。「大韓航空機が行方不明になったことと、その飛行機からアブダビ空港で降りた客の中に2名の日本人名らしき客がいること、貴国に入国していないか調べてほしい」という内容でした。
調査開始時の時刻は4時6分です。
大使館員として航空会社に問い合わせても相手にしてもらえません。砂川さんは裏ルートを使い、ガルフ航空の搭乗者名簿の閲覧に成功、「シニチ、マユミ」という2名の名前を見つけました。
砂川氏は直ちに空港に向かいます。出入国管理官室で膨大な入国カードの調査を開始します。砂川氏は、2人が搭乗機を予定より早い便に変更したと自分で推理し、その推理に基づいて入国した時刻を勘で予想し、入国カードの山の一部から調査を開始します。勘は当たり、チェックをはじめて6、7分経過後に2人の入国カードが見つかりました。
その日の夜、本国の外務省から出張でやってきた審議官との夕食会の席上で砂川氏は「バーレーン中のホテルに電話をかけまくりましょう」と提案します。まず最初に目星をつけたリージェンシーホテルに電話をしたら、果たして2人は滞在していたのでした。砂川氏が蜂谷真一と電話で話をします。話の様子から、砂川氏はこの2人がただの旅行者でないことに気付きました。テレビ番組では、参事官が蜂谷真一と話を交わしたことになっています。

《韓国官憲ルート》
空港において、砂川氏立ち会いの下で蜂谷真一の所持品チェックをしたところ、在バーレーン韓国大使館の金書記官の名刺が見つかりました。名刺には、大韓航空機の墜落を示唆する文字がボールペンでメモ書きされていました。ホテルで金書記官が2人に接触したことを物語っています。
2人が自殺を図り、病院へ搬送された後、韓国大使館の金書記官が空港に飛び込んできます。「ホテルで会った時は、二人は単なる旅行者だと思ったのですが・・・。まさか、こんな事態になるとはまったく想像だにしていませんでした」
韓国当局から2名について外務省を通じて在バーレーン日本大使館に照会があったことなど、一切登場しません。
これが真実とすると、韓国ルートにおいて、蜂谷真一と真由美にバーレーンで面会までしていながら、単なる旅行者であって爆破犯人であるとは気付かず、あやうく取り逃がすところだった、ということになります。


《在UAE日本大使館での動き》
こちらについて、私は情報をほとんど持っていません。
番組紹介その他によると、「大韓航空機が突然消息を絶った」というそれだけの情報から、矢原さんは「爆破墜落した可能性が高い」「日本人が関与しているのではないか」「搭乗員名簿を自分の目で確かめるべきだ」とお考えになり、調べた結果、問題の飛行機からアブダビで降りた「シニチ」「マユミ」の2名の名前を発見します。
その後の2人の足取りは不明であるまま、中東の各日本大使館に「大至急調査して欲しい」との緊急電を発します。


ところで、写真でイスラームというブログサイトで、昨年末にこの話題が記事になり、矢原さんが発言なさっているのを拝見しています。

このサイトでの矢原さんの以下のご発言が気になっていました。
---矢原さんのご発言---
韓国警察が何故でてきたのか、これも不思議ですよね。
11月30日、私がしつこく調べているのに不審を抱いた、大韓航空のアブダビ支店長からの「日本大使館はいったい何を調べている?」との問いに初めて「二人の日本人名が搭乗者名簿にある。」と答え、ここから韓国側が大騒ぎし始めたのを覚えています。その後韓国大使館とは連絡をとりましたが、韓国警察とは一切接触も、情報交換もしていません。

韓国大使館との関係ですが、私が大韓航空に二人の日本人名を伝えた後、韓国大使館と情報交換を約束し、事実、色々な情報のやりとりをしました。ただ、大韓航空のK支店長や大使館の人たちは、手柄を自分のものにしたいという欲望があったのかもしれませんね。

シンイチとマユミの二人がバーレーンへ向かったとの情報を入手した後は、これをバーレーンに電報と電話で連絡し、その後は連絡を取り合っていましたから、これ以降のアブダビの様子はバーレーンでも承知していた筈です。二人が当初計画していたGF353便からGF003便に変更してバーレーンに向かったこと、バーレーンに二人が入国した情報も含めて、私が入手した情報は全てバーレーンにも連絡してあります。(番組では少々違うようになっていますが)

番組では、塩原、砂川そして私の三人の事だけが強調されていますが、他にも事件解決のキーパーソンが何人かいます。
今回JALが取材を拒否したため、彼らのことはあまり触れられていませんが、JAL(番組では日系航空会社となっていました)のT氏とY氏の協力なくして事件は解決していません。
---引用終わり---

世の中では、「金賢姫拘束に至った捜査の中心は韓国官憲が担っていた。日本は、韓国からの要請で蜂谷真一らのパスポートが偽造であったことを調べたのみ」という常識がありました。
今回のテレビ番組から「韓国官憲は独自に捜査を絞り込んでいたかもしれないが、日本大使館ルートも独自に調査を進めていた」のかな、と想像しました。

しかし、砂川さんの著書と矢原さんのご発言から、全く別の姿が見えてきます。
○蜂谷真一らの存在をあぶり出したのは、矢原さんの独創と努力の賜です。
○矢原さんの調査結果を知らされてはじめて、韓国サイドは蜂谷らの存在を知りました。
○そしてバーレーンの韓国大使館員がホテルで蜂谷らと面会までしていながら、日本人の旅行者としか認識せず、日本大使館が動かなかったらあやうく二人を取り逃がすところでした。


もう一点、二人がバーレーンに飛来したことの確定と、バーレーンの空港で二人の入国カードを発見するいきさつです。
砂川さんの著書では、二人がバーレーンに来たかどうかわからないままに調査を開始し、二人が搭乗便を変更したことは全く砂川さん単独の推理ということになっています。
一方、矢原さんのご発言では、二人がバーレーンに向かったことも、搭乗便を変更したことも、矢原さんが気付いてバーレーン日本大使館に連絡なさったということです。
この矛盾をどう考えるか。
砂川さんが緊急情報の第一報を受けてから二人の入国カードを発見するまで、ほんの数時間です。矢原さんが第二報、第三報を発信しても、受信したバーレーン日本大使館の電信担当官が解読し上司に報告し、外で飛び回っている砂川さんに到達するまでの間に、砂川さんが独自に解明した、ということは十分にあり得るだろうと思っています。


以上のような疑問点を抱えている状況ではありますが、そしてフジテレビの番組作成にはいろいろの問題があったようですが、それにしても、矢原さんのお働きがわれわれの目に触れたというその一点については、本当に良かったと思っています。

ぜひ、矢原さんには本当のところを語っていただきたいと思っています。

追伸:この記事の続編を金賢姫拘束の真相(6)で継続中です。
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37 コメント

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本人です (矢原純一)
2008-04-26 16:18:53
真実を語るのは当事者である私の責務かもしれませんね。しかも、あんなフィクション小説やフィクションドラマが横行しているとなると。

私は砂川氏の著書「極秘指令」を読んで、世の中にはこんなにも嘘を平気で書ける人間がいるのかと驚きましたが、「空想の世界で勝手に自分の自慢してろ!」と無視してきました。外務省が当時の公電(電報)を公開すれば全てバレルことなのに。

彼の著書の嘘を指摘すれば、それだけで一冊の本が書けますが、文章を書くことが大の苦手である私には、とてもしんどい作業です。

今の私には二つの相反する気持ちがあります。
一つは、これまでどおり、砂川氏のフィクション本を無視し続けることです。あんな嘘つきと関わってもろくな事はないと考えています。しかし他方で、あんな嘘つきをこれ以上のさばらせてはいけない、という気持ちもあります。

ブログでは相手の顔が見えませんし、好き勝手なことを書く人が多いので、私もその一人になってしまうような気がしています。そしてこのブログにしても、どんな人が読んでいるのか、ひょっとすると管理人さんと私の二人でメールのやりとりをしているだけかもしれませんしね。

これ以上のコメントを書き込むべきか、も含めて少し考えてみます。コメントを書き込むにしても、もし多数の方が読んでいるとすれば、全ての方に誤解のないようしっかりと書く必要があるでしょうし、かなり長くなると思いますので、何回かに分ける必要がでてくるでしょうね。

そもそも、20年以上前の事件ですから、興味を持っていらっしゃる方は少ないだろうと思います。一人熱くなって書き込むのも、空しい気がします。
返信する
本当のこと (ボンゴレ)
2008-04-26 17:17:19
フジテレビの番組が放送されるまでは、矢原さんのお働きについて知っている日本人はほとんどいなかったわけです。以前NHKが番組にしたときも、NHKは砂川さんの著書のみを参照し、在UAE日本大使館の果たした枠割は全く知らなかったのでしょうから。
今回の番組放映以降、興味を持った日本人は大勢いると思います。私もその一人ですが。

このブログは、一日300人以上の方が閲覧されています。そういった意味では、私と矢原さんのメール状態になることはないでしょう。一方それほど大規模なサイトでもありません。
どのような検索キーワードでこのサイトにたどり着いたかを確認していると、「矢原純一」キーワードでたどり着く人が何日かに一人はおられます。ここに発言されれば、興味ある人の目に触れることにはなるでしょう。

人が書いた本のどこが間違っている、という指摘の仕方ではなくても、淡々と真実の姿を語っていただければいいと思います。
それでは、今後ともよろしくお付き合いください。
返信する
大韓航空機爆破事件の真実① (矢原純一)
2008-04-27 16:47:39
そうですね。事実だけを淡々とお話しましょうか。私は嘘つきが大嫌いな性格ですので、ついつい、年甲斐もなく熱くなってしまいました。砂川氏が、「あれはフィクション小説だよ。」とおっしゃれば、それは「嘘」にはなりませんからね。ただ、事件の当事者が「フィクション小説」を出すことは問題だとは思います。ハッキリとフィクションであると断らなければ、読者は当事者が書いた本であれば事実と思い込んでしまいますからね。

砂川氏の著書は別にして、昨年のフジテレビの放送で事実と違う部分を取りあえず一つご紹介しましょう。外務省が当時の公電(電報)を公開すれば、ほとんどの事は事実かどうかはっきりしますけど…。

長くなりますので、何度かに分けてお話しますが、番組の中で、
①砂川氏が各航空会社へ電話して、シンイチとマユミの二人が搭乗していなかったかと、問い合わせています。そして、調査している理由は話せない、と語っていました。

②砂川氏がバハレーンの空港で入国カードを調べているシーンがあります。当初GF353便(ガルフ航空)の到着時刻あたりに見当をつけ調べていましたが、途中、GF003便で到着したのではないかと閃いたことにして、その到着時刻付近を調べ、二人の入国カードを発見しています。

③砂川氏が裏の世界の顔役に会いに行くシーンがあります。

上記の3点は、相互に関連がありますので、明日以降のコメントでこのことについての事実関係をお話しましょう。最初にお断りしておきますが、私は文章を書くことが大の苦手ですから、分かりづらい文章になるかもしれません。わかりづらい場合は質問してください。
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大韓航空機爆破事件の真実② (矢原純一)
2008-04-28 10:04:23
少しくどくなりますが、時間を20年前の1987年11月29日に戻しましょう。事の始まりは、外務省本省の領事第2課(海外における邦人保護担当)首席事務官からアブダビとバクダッドの日本大使館に「大韓航空機858便が、アブダビを発った後行方不明である。日本人乗客の有無を調べろ。」という電話連絡が来ます。これに対し、アブダビもバクダッドの日本大使館も調査の結果、「日本人乗客なし。」と報告しています。

このやりとりには、バハレーンは関わっていません。KE858(大韓航空)の出発地と経由地である、バクダッドとアブダビの大使館に指示が来ています。私は当日、隣のドバイに出張していて、夕刻帰宅しこの情報を領事から入手しました。

何故、私が調査したのかとか、何をどう分析したのかは、ここでは省略しますが、翌11月30日朝、本省から、この件に関して主管課を領事2課から北東アジア課へ変更するとの連絡が来ます。この意味は、本件は日本とは関係がない、一件落着との判断です。私が分析の結果、爆破された可能性が大であるとの結論に達し、再度大韓航空アブダビ支店に依頼し、搭乗者リストを入手、「シンイチ」「マユミ」の日本人名を発見したのは、30日のお昼過ぎです。大使に報告し、一旦は無視されましたが、二人のアブダビまでの足跡を掴み、再度大使に報告し、説得して本省への電報の発信の許可を取りました。そして第一報を起案した訳です。

内容は、①KE858にバクダッドから搭乗しアブダビで降りた乗客リストにSHINICHI/MR及びMAYUMI/MISSの2名の日本人名が発見されたこと。
②当館の分析では、当該KE858が爆破された可能性があり、その方法は、バクダットから機内に持ち込んだ爆発物(時限発火装置付)を機内に残致しアブダビで降りた可能性もあり得ること。

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ありがとうございます (ボンゴレ)
2008-04-28 18:50:20
矢原さん、事実に関する記述をはじめていただき、ありがとうございます。

実は私は明日から旅行に出かけ、6日に帰ってきます。旅行中はコメントできない可能性が高いですが、矢原さんのペースでここにコメントしていただければと思います。

それでは、よろしくお願いいたします。
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大韓航空機爆破事件の真実③ (矢原純一)
2008-04-30 17:03:29
この電報の宛先は本省領事第1課(海外における邦人に関わるテロ担当)で、転送先(メールでいうCCと同じ)はオーストリア(二人が航空券を購入した)、ベオグラード(二人が5日間滞在)、イラク(二人がKE858に搭乗した場所)、タイ(KE858の次の経由予定地)、韓国(KE858の目的地であり、航空機の所属国)です。バハレーンにはこの第一報は送っていません。この時点ではバハレーンは全く関係がなかったからです。この電報を受けた本省領事1課や各国大使館はビックリしたと思います。ビックリしたというより、ア首連(アラブ首長国連邦)の大使館は何をトチ狂ったのか、と思ったかもしれません。この件は、日本に関係なし、既に一件落着となっていたからです。特に領事1課はこれまで何も関わっていませんでしたので、「一体何のこと?」と思ったことでしょう。前日の指示は領事2課からですし、今朝になって主管課が北東アジア課に変更されたばかりですから。

皆さんもご承知のとおり、各省庁は、口では「全省あげて」とか「全省横断的に」とか言いますが、実態は典型的な縦割り社会で、隣の課が何をやっているかなど知る由もありません。本件は領事2課から始まったことで、その後地域課に主管が変更されたいわば一件落着済みの事件です。領事1課がどの程度関心を持っていたかは極めて疑問です。本来であれば、電報の宛先は、変更された主管課である北東アジア課とすべきですが、私は「テロ」と勝手に決めつけていましたので、敢えて宛先を領事1課にしました。
縦割り社会と言えば大使館も同様で、実は同じ大使館に勤務していながら、この事件に私が関わっていたことを知らない館員が数名います。多分昨年の番組を見たとしたら、ビックリしていることでしょう。
返信する
大韓航空機爆破事件の真実④ (矢原純一)
2008-05-03 17:05:39
第一報の電報を起案し、大使の決済を受けているとき、大韓航空の「金」アブダビ支店長から電話がありました。内容は、「日本大使館は昨日から何度も問い合わせをしてきているが、一体何を調べているのか。」という問いでした。そういえば、前日本省からの指示で、当館の参事官と領事が大韓航空に問い合わせをした他、今日になってからも、私の指示でアッバスという現地職員が再度問い合わせています。この時点でも「日本人乗客なし。」という返答に、三度、乗客名簿をくれと大韓航空オフィス使いを走らせました。ここで私が「SHINICHI / MR. MAYUMI / MISS」という名前を発見します。更に、この二人の航空券について問い合わせをして、発券場所や、二人の足跡を掴むことができました。異常とも言えるしつこい問い合わせに、さすがの大韓航空アブダビ支店のスタッフも金支店長にこのことを報告したものと思われます。

金支店長からの問い合わせに、①858便の乗客の中、アブダビで降りた乗客の中に二人の日本人名が見つかったこと。②その名前はSHINICHI / MR. MAYUMI / MISSとなっていること。③この二人が何者か、またこの二人が858便の行方不明に関わりが有るか否かは不明。と答えるとともに、今後の情報交換を約束しました。この時点で初めて韓国サイドが日本人乗客の存在を知ることになったのです。金支店長と実際に電話で話したのは参事官で、「矢原君、大韓航空のGM(支店長)から問い合わせが来ているけれど、どこまで喋ろうか。」と訊いてきたのを憶えています。そこで上記の3項目を返答した次第です。事件後、この金支店長が、二人の日本人名を独自に発見したような発言をしていますが、日本大使館からの情報を「独自」と言っているのか、あるいは別のストーリーを仕立てているのかは私には分かりません。いづれにしても、この時点まで、韓国サイドは日本人乗客には全く気づいていなかったことは確かです。実際に電話で話した参事官に取材してみれば確認できることです。金支店長が正直に、アブダビの日本大使館からの情報で「シンイチ」と「マユミ」の存在を知ったと言っていれば、韓国で横行している「韓国の自作自演説」にも何らかの影響を与えたのではないかと私は思っています。確か、事件解決から1~2年後だったでしょうか、「真由美」というこの事件を題材にした韓国映画を見た記憶があります。この中で大韓航空アブダビ支店長の金氏が、二人のアブダビまでの足跡をみながら、「これは『けものみち』だな。」と言っていました。この「けものみち」という言葉は、私が二人の足取りを掴み大使に報告したときの片倉大使が私に言った言葉で、それまで半信半疑だった大使もこの二人の足跡をみて、尋常ではないと感じたのでしょう、第一報の発電を許可してくれました。

この「けものみち」という言葉については、多分事件後、片倉大使か誰かが金支店長に話したのだと思います。私も金支店長の名刺を持っていますので、会ったことはあるのだと思いますが、残念ながらどの時点で会ったかは記憶にありません。ただ、私は大韓航空を利用したことはありませんので、事件後、事件に関する何らかの席で名刺を交換したものと思います。

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お詫びとおことわり (矢原純一)
2008-05-06 14:35:41
先日、こちらにコメントを書き込んだ時、「嘘、嘘つき、暴露」等、過激で不適切な言葉を使ってしまいました。これらの言葉で不愉快な気分になられた方がいらっしゃいましたら、申し訳ありません。お詫びいたします。

そもそも、砂川氏にしても、最初からフィクション小説として作品を書かれたとしたら、それは「嘘」ではなく、設定であり、小説としての筋書きであり、脚色ということになりますよね。当事者だから「フィクション小説」を書いてはいけないという法律はありませんものね。

昨年のフジテレビの番組にしても、フジテレビが、最初からフィクションドラマのつもりで番組を作ったのでしたら、これも小説同様、設定であり、演出ということになります。嘘という言葉は適切ではないかもしれませんね。私だけが勝手に「ドキュメンタリー番組」と思いこんでしまっていたのかもしれません。最初からフィクションドラマをつくるつもりだったと考えると、全てに合点がいきます。途中、私がフジに「嘘のない、事実だけで番組を作ってほしい。」との申し入れを無視されたことや、番組制作会社であるスロー・ハンドの担当ディレクターの不可解な言動も全て納得できます。私は騙されたのではなく、私が勝手に「ドキュメンタリー」だと思い込んでしまったことに問題があったのかもしれません。

これから「大韓航空機爆破事件の真実」と題して少しコメントを書き込ませていただきますが、この中で、砂川氏の著書を引用する場合があります。この場合彼の著書を「小説」、小説の中に登場する砂川昌順氏は「主人公」または「砂川理事官」と呼称させていただきます。また、実在する砂川昌順氏は「砂川氏」と区別させていただきます。また、昨年のフジテレビの番組「土曜プレミアム ~金賢姫を捕らえた男たち~」は「番組」と呼称させていただきます。
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記述をありがとうございます (ボンゴレ)
2008-05-06 19:04:15
矢原さん、詳細な記述をはじめていただき、ありがとうございます。
30日の昼過ぎ、矢原さんが乗客名簿の中からシンイチ、マユミの名前を発見し、大使を説得して電報を打たれたのですね。大使が承諾しない限りこの情報が外務省及び各国日本大使館に発信されなかったということで、このあたりは私の想像もできない外務省の世界ですね。

30日の昼過ぎから、その日の夕刻までの間に事態が急展開すると、「番組」及び砂川氏著書から理解しています。この間の時間的な前後関係に大きな興味があります。

これからもよろしくお願いいたします。
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大韓航空機爆破事件の真実⑤ (矢原純一)
2008-05-07 17:48:50
しかし、ここから先の韓国サイドの動きは素早いものでした。大韓航空機の行方不明だから、当事者であり、当事国ですから当然と言えば当然ですが。在UAE韓国大使館の金参事官とリュウ書記官はその日の中にバハレーンへ飛んでいますし、大韓航空の金支店長も時期は不明ですがバハレーンに入っています。私は858便搭乗しアブダビで降りた乗客の中に「シンイチ」と「マユミ」の日本人名があったことを情報として韓国側へ伝えたのは事実ですが、その後は韓国側から逆に情報を貰うことが多かったと思います。これらが「韓国主導」で事件を解決したように伝えられている要因の一つだと考えています。

しばらくすると、大韓航空と韓国大使館(大韓航空と韓国政府は一体と考えていいと思います)から、アブダビ空港での二人の日本人らしい人物の目撃情報がもたらされました。そして私が愕然としたのはこの二人がガルフ航空でバハレーンに向かったとの情報でした。この時私は、何の物的証拠も無いのに勝手に、この二人が858便を爆破したと決めつけていました。また、この二人は日本赤軍ではないかとの疑念を強く持っていました。事実、日本赤軍はこの時期「ソウルオリンピック粉砕」を掲げていましたし、数日前、東京で赤軍幹部である丸岡修が逮捕されたばかりで、彼らの動きが活発になっていた時期だったからです。バハレーンへ向かったと聞いて真っ先に頭に浮かんだのが、JALの便でした。この時代、バハレーンはJALの南回りヨーロッパ線の経由地になっていましたので、もし二人が日本赤軍のメンバーであれば、今度は丸岡修奪還のため、JALをターゲットに何かを仕掛けてくる可能性が大きいと判断しました。しかし、この判断は伏せたまま、まず、参事官にバハレーンの日本大使館へこの情報(これまでバハレーンの日本大使館はこの件に全く関わっていませんでしたので、これまでの経緯と二人がガルフ航空でバハレーンへ向かったという事実関係のみ)を伝えるよう依頼し、私は直ぐにアブダビの日本航空に電話を入れました。JALによると、当日夜(30日)は471便、翌12月1日は472便がバハレーンを経由するとのことでした。直ちに私は日航アブダビ空港支店長を大使館に呼び、これまでの経緯と私の分析を説明しました。この空港支店長は今朝、私に858便の飛行経過や位置通報の情報を提供してくれた方で、とても信頼できる人物でした。私は彼らからの情報の提供がなければ何の分析もできなかったと考えています。最後にもう一度述べるつもりですが、この空港支店長とオペレーションマネージャーのお二人が、事件解決の第一の功労者だと思っています。
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