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感想:『図書館危機』

2009年08月17日 20時31分59秒 | 有川浩
図書館危機図書館危機
価格:¥ 1,680(税込)
発売日:2007-02


至福を感じながら読める本は貴重である。ページの残り数が減ることを残念に思う。キャラクターの一挙手一投足にハラハラドキドキし、彼らの掛け合いに吹き出し、時にぐっと来る。ひたすら物語に没頭し、一文字も漏らすまいと必死に目で追う。
「図書館戦争」シリーズ3冊目。勝手知ったる世界。馴染みのキャラクター。本を読む幸せがここにある。

痴漢や言葉狩りを扱う事は、ちょっとした「あざとさ」を感じないわけではない。それらが元から内包されていた幻想世界というわけではなく、現実側から無理矢理作品世界へと投げ込まれた異物であるから。だが、その「あざとさ」をほとんど感じさせないのは著者の手際の良さによる。特に際立つのがストーリーテラーとしての上手さだ。演出や構成は決して奇をてらわないが、惹き込むようなストーリーの魅力が読者を飽きさせない。

キャラクターの配置も見事。特に各年代に様々な人物を配している。ライトノベルに限らず、どんな作品でも登場するキャラクターの年代は2~3世代といったところだが、このシリーズは非常に多様だ。登場機会は少ないながら、とりわけ魅力的に描かれていた稲嶺司令の存在はとても印象的だったし、本書での彼の勇退は胸に迫るものがあった。

本編は残り1冊。外伝がまだ2冊あるとはいえ、大きな区切りとなるだけに、寂しいような気持ちにもなる。早く読みたいようなもったいないような、でもそんな想いをして待つことも楽しみの一つなのだ。