孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

イギリス  “下院議員の手当請求問題”でブラウン首相・与党労働党の支持率失墜

2009-05-21 20:19:07 | 国際情勢

(今月12日 ブラウン英首相とナンシー・ペロシ米下院議長 ブラウン首相も苦境にありますが、民主党の実力者ペロシ下院議長も“ブッシュ政権下のテロ容疑者に対する水責め尋問を黙認していた”として批判の渦中にあります。“flickr”より By Downing Street
http://www.flickr.com/photos/downingstreet/3525001172/)

【ドッグフードやピザ代まで経費請求】
イギリスの政治の実情については何も知りませんが、議院内閣制発祥の地でもあり、日本の政治システムのお手本のひとつとして“良い”イメージがあります。
ただ、最近の“下院議員の法外な手当請求問題”にみる“政治と金”というか“政治家のモラル”の有り様は、日本の政治家のそれとも相通じるものがあります。
正直なところ、つまらない政治家が多いのは日本だけじゃないと、少しほっとした感じもあります。

****英国:首相、国民に謝罪…下院経費問題で 保守党党首も****
英下院で議員らの不明瞭(めいりょう)な経費請求が常態化していた問題で、ブラウン英首相は11日、「政治家とすべての政党を代表して謝罪したい」と国民に陳謝した。日曜紙「メール・オン・サンデー」が10日公表した世論調査結果によると、支持率の長期低迷が続くブラウン首相について52%が「辞任すべきだ」と答え、調査開始の1943年以来「最も不人気な首相」(同紙)となった。

下院では、多数の閣僚を含む議員らが住宅手当を「乱用」し、ドッグフードやピザ代まで経費請求していたことが発覚。暴露キャンペーンを続ける保守系デーリー・テレグラフ紙は11日、野党・保守党の有力議員らが自宅の園芸費用に4000ポンド(約60万円)、電球25個の取り換えに115ポンドを請求していたなどと新たに報じた。
 事態を受け、保守党のキャメロン党首も同日、謝罪。下院の経費問題は、2大政党の党首がそろって国民に頭を下げるという異例の事態となった。
メール紙の世論調査による政党別支持率は、労働党23%、保守党45%、自由民主党17%。英国では来春の解散総選挙が有力視されている。【5月12日 毎日】
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【「あまりの低支持率で解散できない」】
就任当初「優柔不断」のレッテルを貼られ、すこぶる不人気だったブラウン首相は、昨年秋以降の世界的金融危機に対し公的資金による銀行への資本注入を柱とする銀行救済策を迅速に実施、「ゴードン・ブラウンは欧州の救世主」(仏紙ルモンド)と評されるまでに評価を高めました。
当時、「即断即決」に豹変したブラウン首相は90年代の日本の金融危機に触れ、「その教訓は迅速に対応することだ」とも語っています。
低迷していた与党労働党支持率も急速に回復し、最大野党・保守党との差を数ポイントまで縮めました。
かつての「首相(党首)交代論」はすっかり影を潜め、総選挙への期待感も与党に溢れていました。

しかし、その後イギリスも他国同様景気低迷が深刻化。
3月に発表された失業者数(速報値、季節調整済み)は202万9000人と、労働党政権下の1997年以来で最悪となり、失業率は6.5%で前期比0.5ポイント悪化。
失業者数は、来年には300万人を突破するとの市場予測も出ています。

こうした経済悪化で再びブラウン首相と与党労働党の支持率は悪化していましたが、今回の“不明瞭な経費請求”で、支持率は更に急降下、「ブラウンおろし」もでそうな情勢になっています。
与党内には、「あまりの低支持率で解散できない」と低空飛行の継続を予測する見方も出ているとか。

こうした、政治指導者・与党の支持率の変遷、それに伴う「今こそ選挙に打って出るべき時期だ」とか「○○おろし」の動き、更に「低支持率で解散もできない」とか・・・日本の政治情勢とダブルものがあります。

与党支持率はついに20%を割り込み、“IoS社の世論調査によると、労働党の支持率は16%まで低落し、12年ぶりの政権奪回をうかがう保守党(31%)の半分となった。”【5月19日 読売】とか。
議員手当でぜいたく品などを請求する事例は、労働党だけでなく保守党や第3党・自由民主党にも及んでいますが、批判は首相らの対応に集まっているようです。
こうした状況に保守党のキャメロン党首は「政治的混乱を収拾するには、即刻、総選挙を実施し、国民の審判を問うしかない。解散を求める署名活動を明日から開始しよう」と鼻息が荒くなっています。

【314年ぶりの失態】
また、問題の手当制度の改革に抵抗し続けていたマーティン下院議長(労働党)が事実上解任されるという“314年ぶり”の失態も。

****英議会:314年ぶり失態 下院議長を事実上解任*****
英議会下院で住宅手当を巡る不明瞭(めいりょう)な経費請求が常態化していた問題で、マイケル・マーティン議長(労働党)は19日、6月21日に辞任する、と表明した。事態への対応を誤り、その責任を取らされた事実上の解任で、英議会史上、議長の解任は1695年以来314年ぶり。
また、野党・保守党のキャメロン党首は国民の政治不信を背景に、「事態収拾には解散しかない」と訴え、解散・総選挙を求める請願書への署名運動を始める方針を打ち出した。ブラウン首相は早期解散を拒否しているものの、議会の混迷は深まるばかりだ。
下院では、議員のロンドンでの生活拠点となる「第2住宅」手当を乱用し、ドッグフード代から支払い済み住宅ローンの利子負担までさまざまな請求が行われてきたことが発覚。メディアは連日、リーク情報に基づく大々的な報道を続けている。
こうした状況下、マーティン議長は各議員の経費請求データをリークした「犯人」捜しを優先するかのような言動を取り、その方針に疑問を呈した同僚議員を叱責(しっせき)。これに対し、与野党の議員やメディアは「議長にあるまじき行為」と非難の集中砲火を浴びせ、不信任動議も提出されていた。
マーティン議長は19日、短い声明を発表し、「下院の団結を維持するため」との理由で議長辞任だけでなく、議員も辞職することを表明。英議会では、1695年に当時の議長が収賄で辞任に追い込まれて以来の議長「解任」となった。【5月20日 毎日】
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何はともあれ、“1695年に当時の議長が収賄で辞任に追い込まれて以来”という歴史の長さは、さすがイギリスです。
それと、“議長辞任だけでなく、議員も辞職することを表明”というのも、いさぎよい出処進退です。
さすがは、“お手本”の国だけであって、見習うこともあります。

【いつもぶつぶつ英国人】
イギリスの政治情勢の話ついでに、「欧州で一番不平を言うのは英国人」という話。

****いつもぶつぶつ英国人=週10時間強、欧州一*****
14日付の英大衆紙サンは、「欧州で一番不平を言うのは英国人」との調査結果を伝えた。不平の矛先は特に「悪天候」とされた。
調査結果によると、英国の平均的な大人が不平を言うことに費やしている時間は1週間に計10時間18分(年換算では22日強)で、フランス人(週5時間56分)とドイツ人(同5時間22分)のおよそ2倍だ。
英国人の中でもイングランドの人が11時間46分と最も長く、その後にスコットランドの人が10時間24分、ウェールズの人が9時間30分と続く。
調査を実施した会社の関係者は「英国といえば悪天候。悪天候は人の気分を変えるので、英国人が不平を言う時間もおのずと長くなるのだろう」と推測している。
以下は英国人の不満の種トップ10。
 1位悪天候、2位疲労感、3位くだらないテレビ番組、4位インターネットの接続の遅さ、5位家が片付いていないこと、6位交通渋滞、7位仕事量、8位二日酔い、9位店員の態度の悪さ、10位体調不良。 【5月15日 時事】
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“イギリス人がいつも悪天候のことでぶつぶつ文句を言う”という話は半分冗談かと思っていましたが、本当のことのようです。
しかし、どうやって調べた調査でしょうか?



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