孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

砂漠化防止対策  “数百年後”のセネガルの「緑の壁」完成を待つだけではなく・・・

2008-11-04 19:30:04 | 環境

(ニジェールでの砂漠化防止事業 8万本の植林を行う計画だそうですが、セネガルで進められている「緑の壁」プロジェクトとの関連はわかりません。
“flickr”より By vodkamax
http://www.flickr.com/photos/ooyooy/360598025/)

【壮大にして単純、かつ野心的】
アフリカの砂漠化についての記事を見ましたが、“今後とも頑張ってほしい”と言うべきか、“それでどうなるの?”と言うべきか、“国際支援はないの?”と言うべきか・・・なんとも言いようのない感想です。

****アフリカの砂漠化を防ぐ「緑の壁」プロジェクト、効果が表れるのは数百年後?*****
アフリカの砂漠化を食い止めるべく、西はセネガルから東はジブチまで、7000キロに渡って樹を植えようという「緑の壁」プロジェクト。砂漠化で脅かされる数千万人の命を救おうというこの壮大にして単純、かつ野心的なプロジェクトが、セネガルでも2005年から始動している。

セネガルは、長さにして543キロ、面積にして76万ヘクタールを担当するが、目標にはほど遠いのが現状だ。雨期の終わりを迎え、薄緑色の茂みで覆われた北部のサヘル地域。AFP記者を案内したダカール出身のドライバーは、「これが、アブドゥラエ・ワッド大統領が世界中に宣伝していた、あの緑の壁なんですか?」と失望を隠さない。 実際、この国における「緑の壁」は、緑色の茂みがところどころに生えているといった程度に過ぎない。ここWidoy Thiengolyに2005年に植えられたゴムの木とナツメヤシは、まだ膝の高さにもならない。

■まだまだ小さな緑の壁
プロジェクトに携わるアルマミー・ディアラさんは、「年に3か月程度しか雨が降らない地域では、打てば響くといった結果は望めない。ゴムの木は最初に根をしっかり張ってから、丈を非常にゆっくりと伸ばし始めるという性質がある」と説明する。
ゴムの木には、水をほとんど必要とせず、干ばつに強いという利点がある。なかでも、しっかりと張った根が土層を固定して水分を浸透しやすくし、ほかの植物との共生を可能にする「微気候」を生み出すという点が、砂漠化の抑制に最適だという。また、こうした植林プロジェクトは村の若者の雇用を創出している。
関係当局によると、2005年には300ヘクタール、06年には400ヘクタール、07年には675ヘクタールが植林された。今年の目標は5000ヘクタールだったが、既に5230ヘクタールを植林した。
当面は資金面での課題が残るが、今後少なくとも25年間、毎年2万5000ヘクタールを植林していく必要があるという。
ゴムの木が成長すると、新たな収入源が生まれるとの期待もあるが、関係当局者は「辛抱が肝心だ」と言う。「543キロにもおよぶ植林は、数世代後にようやく完了するという息の長い仕事なのです」【11月3日 AFP】
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まさに“壮大にして単純、かつ野心的”であり、“緑の長城”といったところですが、“辛抱が肝心だ”と言っても、その取組みはあまりにもゆったりとしています。
“今後少なくとも25年間、毎年2万5000ヘクタールを植林していく必要がある”とありますが、ここまでの実績から見ると殆ど不可能のようにも見えます。
実績のペースで進むと、計算上は“完成は何百年後”ともなります。
その頃には、最初に植えた木々はすでに枯れているかも。
地球の気候自体が大幅に変動しているでしょう。

“「緑の壁」プロジェクト”についても少し情報を集めようとしたのですが、ざっと検索しても殆ど情報が得られませんでした。
そのことが、このプロジェクトの現状を表しているのでしょう。
セネガルのワッド大統領は熱心なようですが、隣国の取組みは?
国際支援体制は?

【国連砂漠化対処条約】
砂漠化防止に関しては、“国連砂漠化対処条約”というものがあります。
深刻な干ばつや砂漠化に直面する国や地域で砂漠化対策や国際協力を進め、持続可能な開発の実現を目指すための国際条約で、94年6月に採択され、96年12月に発効。
日本は98年に批准しており、締約国は193カ国にのぼっています。

******砂漠化 Desertification**********
砂漠化が急激に進んでいるのは主にアフリカ、アジア、オーストラリア、南アメリカなどで、国連環境計画(UNEP)の2006年の発表によると、砂漠化の影響を受けているのは、600万~1200万km2である。これは、世界の全陸地面積に対して7%前後にあたり、カナダや中国の面積に匹敵する。また、農地や放牧用地などでは、毎年35万km2以上の面積が生産性を失っているという。砂漠化によって耕作面積が減少すると、食料不足が起き、民族間の争いが生じる。また、砂漠に生きていた動植物が生息できなくなり、砂漠の生態系にも影響が出る。
(中略)
砂漠化対処条約では、砂漠化の影響を受ける国が負う義務として、砂漠化への対処を優先して十分な資源を配分することや、住民の意識を向上などが示された。
また、先進国が負う義務として、途上国による砂漠化対処の努力を支援することや、資金などの支援を提供することが示されている。この条約の発効によって、先進国、発展途上国の別なく砂漠化防止への取り組みが始まった。
日本もこの条約に批准しており、米国に次いで第2位の義務的拠出金の拠出国として、毎年140万ドル以上を条約事務局に拠出している。
また、政府開発援助(ODA)の各種スキーム(開発調査、技術協力プロジェクト、一般無償資金協力、草の根無償資金協力、及び有償資金協力等)を通じた支援を行っている。(後略)【環境goo】
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今年5月に横浜市で開かれたアフリカ開発会議(TICAD4)出席のため来日した国連砂漠化対処条約のルック・ニャカジャ事務局長は「土地の劣化を食い止めなければ、食糧危機など諸問題は解決しない」「土地の劣化は食糧やエネルギーの安全保障に深くかかわる。世界中で8億人が食糧危機に直面し、1日に2万5000人以上が飢餓で亡くなっている。FAO(国連食糧農業機関)によると、2030年までに世界で食糧生産を50%引き上げなければならない。しかし、気候変動や土地の劣化の影響で耕地が減っており、早急な対策が必要だ。」と語っています。
【6月10日 毎日】

砂漠化はまた、上記のように、食糧不足から民族間の争いを生みます。
砂漠化による貧困から人々は“薪”などのような再生産不可能な資源利用に依存し、結果的に砂漠化を更に深刻化させます。

【資金拠出国への批判】
ところで、日本はアメリカに次ぐ資金拠出国ですが、出す側と利用する側で意見の対立があるのは砂漠化防止に限った話でもありません。
昨年9月の会議は揉めたようで、2008,2009年の計画・予算については、最終的に期間中に合意に達せず先送りされました。

****砂漠化対処の国連会議不調に終わる、NGO報告****
マドリッドで3日から開催されていた砂漠化対策に関する国連の会議は15日、今後10年間にわたるアクションプランの予算について合意に至らなかった。会議にオブザーバーとして参加していたNGO、「Ecologists in Action」が伝えた。
同NGOは、会議が失敗に終わった原因は日本や米国にあるとして両国を非難。もっともこの報告について、主催者側の確認は取れていない。【07年9月16日  AFP】
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まあ、日本としても“金のなる木”も“打ち出の小槌”もある訳ではないですから、“何故もっと出さない”と言われても困るところではあります。
もっとも、2兆円も買収資金としてばら撒くなら、もっとメリハリの効いた使用法も・・・と思わないでもありません。
もちろん、この2兆円で日本経済が立ち直り、今後も継続して、今まで以上に国際支援に邁進できる・・・と言うことであれば、それはそれでいいのかも。

【やる気があれば・・・】
政府間のODAだけでなく、環境・エコが人々に意識されるようになると、企業の社会責任、あるいは企業イメージの問題として、環境対策に取り組む企業も増えますので、このような民間企業の取組みをうまくリード・支援する施策も有効でしょう。

砂漠化防止プロジェクトで検索すると、なぜかトヨタの中国での活動「中国河北省豊寧満族自治県での砂漠化防止緑化プロジェクト、日中「21世紀中国首都圏環境緑化モデル拠点」共同事業の第3期活動の調印式が、5月25日、北京にて行われた。」という情報がたくさんヒットします。
さすが“世界のトヨタ”です。

最近はやりの、商品の購入代金の一部が環境対策に寄付されるといった、取組みもいいのでは。
政府に金がなくても、やる気次第、情報提供のあり方次第では人々の関心を集めていくことも可能に思われます。
吸水ポリマーなどの技術面でのノウハウ提供もあるでしょう。
途はいろいろあるのかも。本気になれば。





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