孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  習近平政権は強引な株式市場介入をいつまで続けるのか?続けられるのか? その結果は?

2015-08-03 22:26:18 | 中国

(ここ1年の上海総合指数 http://jp.advfn.com/exchanges/SSI/000001/chart

介入を手控えると下落する市場
当局によるなりふり構わぬ市場介入で暴落を何とか下支えした中国・上海株式市場ですが、再び下落が続き、7月8日の底に近い水準に戻りつつあります。

****上海株、3日続落で4週ぶり安値 一時下げ幅3%超、回復策見えず****
週明け3日の中国・上海株式市場は、3営業日続落した。上海総合指数の終値は、前週末比1.1%下落し、40.83ポイント安の3622.91。終値としては7月8日につけた3507.19以来、ほぼ4週間ぶりの安値水準となった。

終日軟調。午後に下げ幅が一時3.1%安まで拡大し、4営業日ぶりに3600を割り込む場面もあったが、終盤に下げ渋った。

上海総合指数は、中国政府の各種支援策により、7月8日に底を打ってからは、4000台をいったん回復していたが、再び7月8日の終値に接近している。

一時のように5%を超えるような暴落こそなくなったものの、小幅ながら続落基調が続いていることで、逆に回復への突破口が見出せないとの見方もある。【8月3日 産経】
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中国の株式市場は6月上旬まで上昇が続き、新たに参加する個人投資家が急増しました。しかし、過熱感などをきっかけに相場が下落に転じると、多くの人が売りに走り暴落。6月12日をピークに、3週間余りで3割以上下落しました。

ただ、それまで相場は一本調子に上昇していましたので、“3割以上下落”とはいっても、1年前と比較すると75%上昇しているような水準でした。

過熱した相場はいずれ調整局面に入る・・・というのは当然のことのようにも思えますが、新華社や人民日報など政権の息のかかったメディアが「牛市(強気相場)」をあおってきたという事情もあって、市場の動揺が政権批判につながることを恐れる習近平政権は、大量保有株主の株式売却を半年間禁止し、投資ファンドや証券会社を通じて大量の買いを命じ、更には、カラ売りする投資家を公安当局が捜査すると脅したり・・・と、欧米では考えられない手法で介入。

そうしたなりふり構わぬ力づくの介入によって下げ止め、7月8日を底に一時反発した市場ですが、7月下旬、新たな株価下支え策が打ち出されなかったことが「習近平指導部の株価下支え策が終焉に向かった」とする市場の見方につながり、7月27日から再び下落する展開となっています。

当局が新たな介入を控えた背景には、国際通貨基金(IMF)が株式市場への介入をこれ以上行わないよう中国当局に警告したことがあると報じられています。

おそらく習近平政権は、これ以上下げれば再び強力な介入で下支えするのでしょう。

政治日程とも絡む介入姿勢
日本や欧米の常識からは考えられない介入ですが、そもそも中国はルールの異なる社会です。
当局の強引な介入で市場が回復するなら、それはそれで・・・という見方、あるいは、中国当局は危機に際し非常にうまく処理した、やはり西側のシステムより中国のシステムが優れている・・・という見方もできるでしょう。

もちろん、そうした市場介入は習近平政権が望む「人民元の国際化」にとっては大きなマイナスとなります。
また、そもそも論として、介入は市場をゆがめ、健全な経済発展を阻害するとも言えるでしょう。

ただ、こうした市場を強引にねじ伏せるようなやり方がいつまで続けられるのか?・・・・という問題もあります。

習近平政権がどこまで続けるつもりかは、今月の北戴河会議や10月の五中全会といった政治スケジュールとも関連してくるようです。

****習近平が行き詰まる 「株価問題****
権力闘争と連動する「暴落」の謀略

八月、中国政治の舞台は北京から河北省の海浜リゾート、北戴河に移る。特権階級のための別荘に集まった共産党指導部と党、軍の長老たちが、その年の秋の党中央委員会全体会議(今年は「五中全会」)をにらんで政治的利害を内輪で調整する通称「北戴河会議」だ。

党内派閥のボスたちの非公式の会議だけに、激しい権力抗争が演じられてきた。今年は習近平国家主席にとって三度目の「暑い夏」だが、かつてない不安を抱えて迎えることになった。六月末に起きた株価の暴落がその原因だ。

上海、深圳の市場で「ギリシャの国内総生産(GDP)の三つ分が蒸発した」と騒がれた。李克強首相が「暴力式介入」と自称する強引な買い支えで七月後半になって市場は安定を取り戻したが、いつまで続くか保証はない。

もし北戴河会議の最中に再暴落したらどうなるか。習近平の反腐敗運動に恨みを抱く江沢民元国家主席ら党や軍の長老が勢いづいて総攻撃に出ることは間違いない。

嵐のような買い支えの最中に上海の市場関係者がこう漏らした。「上の方が八月十五日まではなんとかしろと言っている」。例年、北戴河会議が終わるのは十四日だ。それまで問題を隠せと習近平、李克強が血相を変えているのだ。(中略)
株価不安が共産党内政局と連動するのは実は、北戴河以後の可能性が高い。

暴力式介入の命令で証券各社が購入した一千二百八十億元(約二兆五千億円)の株式、さらに証券業界が出資した株価安定機構「証金公司」が金融機関から一兆元(十九兆九千億円)の融資枠で購入した株をいつ市場に戻すのか。

政府が介入終了の情報をメディアに流すと株価が下落し、当局が介入終了情報を否定するという繰り返し。それでもこれほど不自然な介入は三カ月が限度とされる。

だとすると再び株式市場に不安が高まるのは十月前後。ちょうど五中全会の会期と重なる。次の暴落では、国有企業株を担保に融資を受けている地方政府の財政破綻が起きると言われる。地方では社会騒乱につながる恐れもある。(後略)【8月号 選択】
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いくらなんでも五中全会(5年ごとに開く中国共産党の最高決定機関「中国共産党全国代表大会(党大会)」の職権を代行する党中央委員会が年1回程度開く会議の5回目)の直近あるいは最中に市場が崩壊するようなことは、どんな手段を使っても避けるでしょう。

暴落で共産党が敗北するか、株式市場をがんじがらめの規制で縛り、事実上、市場を抹殺するか
しかし、買い支えたものは、いずれ売り圧力となって市場にもどってきます。

****株式市場の抹殺か共産党の敗北か****
・・・・中国政府は投資ファンドや証券会社を通じて大量の買いを命じた。

証券二十一社が下落の勢いが増し始めた七月四日に一千二百億元(約二兆四千億円)の株式を購入したことは日本でも報道されたが、それは氷山の一角に過ぎない。政府系の中国証券金融公司が買い支えた株式は総額一兆元(約二十兆円)に達したといわれる。

さらに中央政府直轄の大手国有企業に対し、保有株の売却を禁止し、子会社株の保有拡大も指示した。

国家機関を総動員した株式市場の買い支えだが、その大半は中国工商銀行、中国建設銀行、中国銀行など四大国有商業銀行と国家開発銀行など政策系金融機関が資金を供給した。

これは二重の意味のリスクといえる。第一は、証券金融公司など政府系ファンドと証券会社はキャピタルゲインも配当も期待できない株式を持ち続けることは資本コストの面から不可能ということだ。

自らの経営の健全性を考えれば年内にも部分的な売却が始まると考えられる。来年になれば縄抜けのように購入を迫られた株式を売り出すだろう。「中国株が下落するのは約束されたようなもの」(中国の証券関係者)。

しかも売りに回る市場参加者の大半を相手に立ち向かうのは習政権という喜劇的な構造であることがより鮮明になる。

「市場経済」対「統制経済」であり、その戦いは暴落で共産党が敗北するか、株式市場をがんじがらめの規制で縛り、事実上、抹殺しなければ終わらない。

資金ルートを断たれる中国企業
もうひとつ深刻な問題がある。今回、買い支え資金を供給した銀行の経営だ。

証券会社や投資ファンドが株式で巨額損失を出せば、貸し出しが不良債権化するのは必然。中国の国有銀行は政府の金庫として使われることで、九〇年代に肥大化した国有企業向け融資の焦げ付きによる不良債権問題に揺さぶられたが、今回はそれをはるかに上回る不良債権を抱える。

かつてならば、政府は預金利率と貸出利率の間に大きなスプレッド(利ざや)をつけ、銀行に超過利潤を与えることで不良債権を時間をかけて解消することもできただろう。

だが、中国では金融自由化が進み、銀行金利はすでにあらかた自由化され、激しい貸し出し競争が始まっている。政府が銀行セクターを守ろうとすれば、金融自由化を逆行させ、思うがままに金利や銀行をコントロールするしかない。

習政権の今回の株式市場への介入がいかに中国の金融システムに大きな禍根を残したかがわかるだろう。
これを別の観点から捉えれば、より重大な問題がみえてくる。株式市場の機能を殺し、銀行を不良債権まみれにしたことで、中国の企業は直接金融と間接金融のルートを双方とも断たれることになるからだ。(後略)【8月号 選択】
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習政権は犠牲を伴わず、市場をコントロールすることで大きな方向転換をしようと試みた
習近平政権は、インフラ建設、不動産投資に極端に依存した中国の高成長路線を見直し、安定成長への転換を図ろうとする「新常態」への移行を進めています。

そして、その過程で起きた市場の暴落に対し、国家統制の強化という手法で表面を糊塗しようとしています。

****中国経済「新常態」が異常事態に****
インフラ建設、不動産投資に極端に依存した中国の高成長路線を見直し、安定成長への転換を図ろうとする新常態は正しい政策であり、中国にとって欠かせない改革ではあった。しかし、実態は成果を急ぐあまり反動化し、市場経済の否定、共産党の統制経済に向かいつつある。(中略)

中国の成長メカニズムは国内総生産(GDP)が一気に膨張し、中流層の生活が劇的に向上した二〇〇七年あたりから狂い始めた。

人件費と人民元の上昇で中国経済の競争力は低下。輸出や外資の直接投資で成長するモデルは終わりかけたところで、中国共産党が選択したのは内需の増幅による高成長だった。

政府とりわけ地方政府は土地使用権の売却により濡れ手で粟の巨額資金を獲得、さらに土地担保で国有銀行から資金を借り入れ、各地に使用されるあてもない巨大工業団地やオフィス街、住宅地を開発していった。

それは共産党内の地方幹部が、成長率をもとにした査定に関係したことから出世競争の舞台にもなり、各地で破綻必至の無謀な開発が進んだ。

そのモデルのいかがわしさを見えにくくしたのは〇八年九月のリーマンショック直後に中国政府が打ち出した四兆元(当時のレートで五十七兆円)の財政出動だった。

中国にはバブルのとめどもない膨張にすぎなかったが、需要不足に悩む世界経済には大きな効果を持ち、世界が中国共産党を称賛し、中国指導部の成長モデルに対する認識を狂わせた。

数年後には不動産デベロッパーの破綻や不動産市況の下落が始まり、歪んだ高成長モデルの危機があらわになった。習政権は新常態に大きく方向転換せざるを得なかった。

新常態そのものは正しい判断だが、それは本来、企業倒産や市場の暴落、失業の増大といった大きな痛みを伴う方向転換でなければならなかった。それが市場経済の本質だった。

だが、習政権は犠牲を伴わず、市場をコントロールすることで大きな方向転換をしようと試みた。たとえて言えば、大型客船が針路を変えるのに乗客が揺れで倒れないように試みたわけだ。それには乗客を座席にがんじがらめに縛りつけるしかなかった。(後略)【同上】
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中国経済の崩壊云々は随分昔から常々言われており、いささか「オオカミ少年」のようにもなっています。
また、中国の台頭を恐れ、やっかむ向きも少なくない日本では期待を込めて囁かれることも。

もちろん、中国経済の動向は、低成長から抜け出せない日本経済にも大きなインパクトを与えます。

中国がまがりなりにも「市場経済」を維持するのか、あるいは、「統制経済」に回帰する道を選択するのか・・・。
今回の中国経済の変調が大きな節目になるのか、あるいは、再び持ち直すのか・・・・。
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