孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

中国  拡大するキリスト教 宗教を管理しようとする共産党

2014-04-29 21:41:02 | 中国

(教会を守るために集まった三江教会の信徒たち。しかし結局、教会は取り壊されました。 【4月24日 CHRISTIAN TODAY】)


当局は目立った十字架を掲げている教会をターゲットにしている
先ほど観たTVニュースで実に興味深い話題を取り上げていました。
中国でキリスト教徒が急増しており、その勢力拡大を恐れたのか、当局が完成目前の教会を違法建築として取り壊したというものです。

****完成目前キリスト教会堂、当局が取り壊し 中国温州、影響力増大懸念し圧力か****
キリスト教徒が比較的多いことで知られる中国浙江省温州市で29日、完成目前だった教会堂が「違法建築」を理由に当局により強制的に取り壊された。信者の増加で存在感を高めるキリスト教会に対し、地元政府が圧力を強めているようだ。

取り壊されたのは同市の三江教会堂。28日から重機複数台が作業を始め、29日には建物の原形が見えなくなった。

信者によると、三江教会堂は約2千人の収容が可能で、温州でも有数の規模となるはずだった。
工事が内装を残すだけとなっていた3月、地元当局が突然、建築面積が当局の認可より大幅に増えているとの理由で超過部分の取り壊しを命令。

これに反発した信者が21日ごろから当局による取り壊しを阻止しようと教会堂に泊まり込んだり、周辺で千人規模のデモを行ったりしたという。【4月29日 msn産経】
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中国のキリスト教には政府公認のものと、公認されていない地下教会がありますが、取り壊された三江教会堂は政府公認の教会です。

この三江教会堂の取り壊し前の、当局の対応と信者の抵抗を伝えるのが下記記事です。

****十字架が目立ち過ぎ」 強制撤去命令に中国のキリスト教会が抗議行動****
中国浙江省の三江教会が地元当局から建物の強制撤去を命じられ、多数の信徒たちが教会の前に座り込んで抗議している。米ニューヨーク・タイムズ紙や英テレグラフ紙などが電子版で伝えた。

三江教会は浙江省温州市にある中国政府公認のキリスト教会。温州市とその周辺にキリスト教徒は数千人規模でいると見られ、大きな会堂のある同市を「東のエルサレム」と呼ぶ人もいる。

報道によると、通りかかった同省の政府高官が、教会建物の上に掲げられている十字架を見て「目立ち過ぎ」であるとし、当局は「違法建築」の理由で強制撤去を命じたという。

今月3日、当局は「この教会は安全性に重大な瑕疵がある違法な建築物」と表明し、「15日以内の強制撤去」を発令。多数の信徒たちが教会の前に集まって徹夜で座り込みをして教会を守ろうとしている。

当局と警察は多くの警察官や私服警察官を派遣して、関係者らを「説得」しているという。
5日には祈りの集会が持たれ、牧師の一人は「我々は暴力を求めていない。平和的な座り込みをして神の助けを祈っている」と語った。

信徒の一人は「私たちは老後の貯えを、お年寄りは自分の棺のお金も捧げて、この会堂を建てました。ここは私たちの家なのです」と話す。

中国では、政府に認められていない、いわゆる「地下教会」は取り締まりの対象とされるが、三江教会は当局公認の会堂として建てられた。

地元信徒たちの献金による建築費は3千万元(約5億円)で、温州政府は昨年9月に公式サイトで三江教会の建築を「模範的プロジェクト」として称えていた。

浙江省のほかに、泰順、文城、瑞安にある教会も、強制撤去の通知を受けたと伝えられている。
教会関係者の話によれば、当局は「目立った十字架を掲げている教会をターゲットにしている。教会の強制撤去命令は安全上の問題からではなく、教会の土地を使いほかのプロジェクトを開発して利益を生むためだ」と話している。【4月15日 CHRISTIAN TODAY】
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“昨年9月に公式サイトで三江教会の建築を「模範的プロジェクト」として称えていた”ものを何故急に?
記事にあるように政府高官の不興を買ったのか、地上げ絡みのものなのか、共産党の威信を低下させかねない宗教への恐れがあったのか・・・なにぶん、中国のことですので真相はわかりません。

中国国内のキリスト教徒の数は、今後15年以内に米国やブラジルなどを抜いて世界最多に
中国の宗教的イメージはあまり強くありませんが、強いてあげれば道教か仏教、それも現世利益的な宗教・・・というイメージです。

しかし、現在“精神的な平安を求める”目的で、キリスト教が拡大しており、2030年には世界最大の信者を抱えることになるとの予測があるそうです。

****2030年には中国が世界最大のクリスチャン国に*****
13億の人口を擁する中国が、精神的な平安を求めて急速に変わりつつある。
専門家の分析によると、中国国内のキリスト教徒の数は、今後15年以内に米国やブラジルなどを抜いて世界最多になるとされる。英テレグラフ紙などが電子版で伝えた。

共産主義や無神論の国とみなされやすい中国だが、人々が言葉通りにそれらを信じているかはわからない。
政府公認の教会だけでなく、いわゆる「地下教会」も含めると、教会に通う人たちの数は着実に増え続けており、2030年までには米国よりもクリスチャン人口が多くなるとの予測がある。

米パデュー大学の社会学教授で、『中国の宗教』などの著書がある楊鳳崗(ヤン・フェンガン)氏は、「もうすぐ中国は世界最大のクリスチャンの国になる」と分析し、「この劇的な変化を多くの人が受け入れられないでいる」と話す。

米調査会社のピュー研究所によれば、中国のクリスチャン人口は1949年に100万人だったが、2010年には5800万人まで急増し、4000万人のブラジル、3600万人の南アフリカを超えたとされる。

楊教授は、中国のプロテスタントは2025年までに1億6000万人に達し、米国の1億5000万人を抜いて世界最多のクリスチャンを抱える国になると予測。また、カトリックを含めたすべてのキリスト教徒は2030年には2億4700万人に上るとしている。

中国では政府が認可した教会施設でなければ、礼拝などを行うことが許されない。宗教活動に対する当局の取り締まりは厳しくなっているが、中国最大のキリスト教コミュニティーが育っている浙江省温州では、人口700万人のうちおよそ15%が教会に通っているという。

温州楽清市にある柳市教会は、昨年1月に建堂されたメガチャーチで5000人を収容する。今週のイースター(復活祭)礼拝には数千人が訪れたという。
40歳代の女性信者は「もしすべての中国人がイエスを信じたら警察署はいらなくなる。悪い人はいなくなって犯罪は消える」と話す。

しかし、牧師と信徒は当局から監視の対象とされており、同教会の天井にはカメラが設置されている。「牧師が共産主義的な方向で説教するように、当局が圧力をかけている」と、「家の教会」(地下教会)のリーダーは説明する。
「クリスチャンの数が増えているので、当局は戦いを望んではいない。7000万もの信徒を敵にしたいとは思わないでしょう」

一方、楊教授は「潜在的な脅威」を指摘。当局がキリスト教を抑圧しようとして、今後「より強烈な」闘争に入る可能性を懸念。「教会をコントロールしようとする政府関係者たちがいて、最後の試みをしている」と語る。

同じく浙江省温州にある三江教会は、今月初めに強制撤去の危機に直面した。その際、多くのクリスチャンが教会の前に集まって教会の取り壊しを阻止している。【4月24日 CHRISTIAN TODAY】
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何かと中華思想的、自己中心的、拝金主義的行動が目につく中国ですが、“精神的な平安を求めて”信仰を持つ人が増えれば、そうした行動にも変化が出る・・・・のでしょうか?
それはそれ、これはこれ、まったく別の話でしょうか。

近代市民社会の基盤となる、いわば“個の発見”が始まったのではないか
以前、NHKで中国におけるキリスト教徒の増加の背景を特集していました。

****中国で拡大するキリスト教****
尾「習近平体制発足から1年。これまでのような高い経済成長が難しくなる中、中国は今、“宗教”という新たな課題に向き合わざるをえなくなっています。」
黒木「物質的に豊かになる一方で、激しい競争社会に疲れ、宗教に心のよりどころを求める人々が増えています。最も信者を増やしているのが、キリスト教です。中国には、以前から政府の管理下にある公認の教会がありましたが、今、急増しているのは、政府の公認を受けない“家庭教会”と呼ばれる教会です。 現地で取材しました。」

家庭教会 急増の背景
今、温州では、人口の7分の1がキリスト教徒と言われるほど、信者が膨れ上がっています。中でも急増しているのが、“家庭教会”と呼ばれる無許可の教会です。(中略)

教会の中には、政府公認のものもありますが、共産党の政策の学習や名簿の提出などを求められることもあるため、家庭教会の中には、政府の介入を嫌って、公認を受けようとしないところも多くあります。

ただ、信者や指導者に政府への反発の意思はなく、純粋に信仰と向き合いたいと考える人がほとんどです。(中略)
政府が本来行うべき、セーフティネットの役割を担っていることもあって、家庭教会の信者の数は増え続けています。

宗教への対応 迫害から支援へ
建国以来、無神論を唱えてきた共産党。 文化大革命の時代には、宗教を徹底して迫害しました。改革開放で宗教の自由を保障しましたが、その後も警戒の対象にしてきました。

しかし、宗教に心のよりどころを求める人が急増する中で、姿勢を大きく変化。政府の管理を受け入れるかぎり、支援していく方針を示しました。

胡錦涛総書記(当時):「宗教界の人々にも、経済や社会を発展させる役割を果たしてもらう。」

この夏、地元政府の支援で、真新しい巨大な教会が完成しました。現代風の設計で、5,000人を収容できます。建設費は、日本円で15億円。
3分の1の5億円を政府が負担したほか、敷地となっている時価70億円分の土地も、政府が提供しました。

最近では、経済発展の陰で、厳しい競争に疲れた都市部の若い世代も多く通うようになりました。(中略)

家庭教会への取締りも
しかし、政府の公認を受けない家庭教会に対しては、厳しい取締りを行う場合もあります。北京では一昨年(2011年)、政府の管理を拒否し、屋外で礼拝を開こうとした家庭教会が摘発を受けました。「社会の秩序を乱す」として、その指導者は今も軟禁状態で、24時間、当局の監視下に置かれています。(中略)

キリスト教 なぜ人々をひきつけるか
尾「ここからは、取材にあたった、上海支局の奥谷支局長に聞きます。中国の宗教というと、われわれはまず仏教とか、儒教ということを思い浮かべるんですけれども、今、なぜ、キリスト教に人々はひきつけられているのでしょうか?」

奥谷支局長「中国では、仏教や儒教も急速に広まっていまして、仏教の信者は、2億人とも言われています。ただ、取材した若者は、中国の仏教のお寺などでは、お金儲けや無病息災など、現実的なものを求めて参拝するイメージがあるのに対して、キリスト教は自分の内面と向き合うことになり、教会の雰囲気も厳かな感じがすると話していました。

小さいころから、映画や音楽などで、欧米文化に触れて影響を受けているほか、海外旅行や留学でキリスト教に触れる、という事情もあると見られます。

キリスト教の中でも、プロテスタントは増え方が急で、公認教会の信者数だけで見ましても、カトリックが30年前の2倍なのに対して、プロテスタントは8倍の2,300万人、さらに、これに加えて、非公認の家庭教会は、これは公式統計がありませんが、7,000万人を超えると言われるほどにもなっています。

カトリックがローマ法王と中国政府の対立を抱えているのに対して、プロテスタントは中国に入りやすく、またカトリックに比べて、聖書さえあれば、小規模な礼拝ができてしまうという事情もあると見られています。」

宗教支援の背景は
黒木「中国政府は、宗教を支援するよう方針を転換していますが、その背景には何があるのでしょうか?」

奥谷支局長「中国共産党は、これまで宗教の広がりには、ずっと警戒感を持ってきました。中国の長い歴史の中で、王朝が倒れる前には、必ずと言っていいほど、宗教を掲げた集団が内乱を起こした歴史があるためです。

また中国共産党は、党員に宗教を信じることを禁じていますが、これは共産主義の前提にある無神論と相反するほか、党員が宗教的な権威を認めてしまえば、党の求心力を保てなくなることを警戒しているためと見られます。

しかし、2007年の共産党大会を境に、共産党は、宗教を取り込もうという政策にかじを切りました。

これについて専門家は、宗教を信じる人があまりにも多くなり、宗教を軽視した政策は非現実的だと認識し始めたこと、さらに宗教によって人々の心が安定するのであれば、それが社会の安定にもつながる、と考えていることが背景にあると見られる、と話しています。

中国政府には、公認の宗教を支援することで、宗教を管理下に置こうという狙いがあるようと見られます。」

“信仰のコントロール”可能か
尾「社会主義と宗教ということは、ずっと永遠の課題と言いますか、難しい歴史的な背景もあるわけですけれども、中国政府には、公認の宗教を支援することで、宗教を管理下に置こうという狙いがあるように透けて感じるんですけれども、人の信仰をコントロールするということは、中国でも難しい側面があるのではないしょうか?」

奥谷支局長「そのとおりです。中国政府は、政府の管理を受け入れる教会や宗教団体のみを公認して、それ以外に対しては、今でも大規模な集会を開くことを取締りの対象としています。

政府が各地で巨大教会の建設を支援するというのは、私たちの感覚で考えますと、不思議なことなんですけれども、これは信仰を持つようになった人々を、管理の手の届かない非公認の教会ではなくて、公認の教会に招き入れたいという思惑もあると見られます。

しかし、こういう思惑どおり、公認教会に今後、多くの人が集まるのか、家庭教会がさらに広がっていくのかは分かりません。

ただ、確かに言えることは、多くの人々が政府に指示によってではなく、自分の意思で内面に向き合いたいと考えているということです。

官僚の汚職や環境汚染などの社会問題に対する不満、競争社会のストレスや不安感など、さまざまな問題に中国が直面する中で、中国には、もっと宗教が必要だという人さえ増えています。

専門家の1人は、人々が豊かになるにつれて、安心して暮らしたいという権利意識に目覚めるとともに、個人として自由に物事を判断したいという、近代市民社会の基盤となる、いわば“個の発見”が始まったのではないかとも話しています。

中国共産党が宗教を取り込んでいくのか、宗教がその思惑を超えて広がっていくのか、中国の今後を占う大きな曲がり角に来ていると言えます。」【2013年10月21日 NHKonline】
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共産党にとっては潜在的脅威
三国時代のさきがけになる黄巾の乱、元朝の衰退と共に江南地方で勃発した白蓮教徒の乱、清朝末期の太平天国の乱・・・・といった過去の歴史、そして経済格差の拡大、官僚の腐敗・汚職、軽視される人権、悪化する環境・・・といった現状を考えれば、宗教が拡大するのも当然のように思えますし、中国共産党が宗教の拡大に脅威を感じるのも当然のように思えます。

中国の宗教弾圧と言えば「法輪功」があります。
法輪功は道教・仏教の影響を受けた気功で、内面の向上を重視した新興宗教です。

1999年以前は「健康の為に良いから」という理由で、中国政府側も法輪功を推奨していた時期があったそうですが、1999年4月に「1万人を超える法輪功学習者が、中国政府に抗議するため、組織的に集結して中南海を包囲し、座り込みなどの示威運動をおこなった」とされる“中南海事件”をきっかけとして、江沢民が信者の拘束・拷問といった激しい弾圧を加えることになります。【ウィキペディアなどより】

中国共産党の迫害により死亡した人数が、3397人に達したとする調査結果もあるようです。

キリスト教が第2の法輪功にならないことを願います。
しかし、中国社会のゆがみ・矛盾がこのまま拡大すれば、心のよりどころを宗教に求める人々は更に増え、“個の発見”が広がれば、いつかは中国共産党・政府と衝突することも想像されます。
コメント (1)
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