孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ミャンマー  「制裁解除後」にらんで、大型開発と海外からの企業進出

2012-02-27 21:19:02 | ミャンマー

(ダウェーの魚市場 こういう光景が開発で消えていくのは旅行者としては寂しいものがありますが・・・ “flickr”より By florian_grupp http://www.flickr.com/photos/12906273@N05/2210544886/

アジアの一大物流拠点に
ミャンマーは民主化の進展で国際的な孤立を脱し、新たな経済進出先として注目を集めるています。
中でも南部ダウェーに計画中の「ダウェー深海港開発計画」は、東南アジア最大規模の工業団地構想であり、問題の多いマラッカ海峡をパスする形で、東南アジアとインド、欧州の間のモノの流れを一変させる可能性を秘めた巨大事業です。
ミャンマー側としては、ここを経済特区として、経済発展の起爆剤としたい考えです。

一方で、環境破壊の懸念や移転を強いられる地元住民の不安も根強く、初めて本格的な経済開発に乗り出すテイン・セイン政権は「調和のとれた開発」という難題にも直面しています。
また、莫大な資金を要するため、請け負っているタイ企業の資金難から計画はまだ進展していません。

ダウェー深海港開発計画
“タイ最大手の建設企業「イタリアン・タイ開発」(ITD)社が旧軍事政権との間で開発契約を締結。日本の鹿島臨海工業地帯のように砂浜を掘り込んで大型船舶が接岸できる港を建設し、その周囲に発電所、石油精製施設、工業団地などを配置する。同社によると総面積は東京・山手線の内側の約4倍、250平方キロに上る。タイ国境から160キロという近さを生かし、山間部に道路を建設してタイ側と直結。タイ、ベトナムなどインドシナ半島からインド洋方面へ向けた輸出拠点や、安い人件費を生かした加工基地としての役割を狙う。” 【2月3日 毎日】

****ダウェイ港開発、前途多難な船出 ミャンマー初の特区****
ミャンマー南部の地方都市ダウェイ周辺を、アジアの一大物流拠点に――。こんな計画が動き出した。東南アジアとインド、欧州の間のモノの流れを一変させる可能性を秘めた巨大事業だ。だが、開発を担うタイ企業の資金難や環境団体の抗議運動などで、事業が進まない可能性もある。

■アジアの拠点狙う
林や荒れ地の間を抜けて赤土の道路を進むと、真っ白な砂浜とアンダマン海が目に飛び込んでくる。
計画では2015年、この砂浜に大型コンテナ船が入れる水深20メートルほどの港ができる。道の両側には石油化学プラントや製鉄所が並ぶ工業団地も整備される。20年までの総投資額は580億ドル(約4兆6千億円)を見込む。

ただ、250平方キロの開発予定地に今あるのは、事業内容をパネル展示や模型で説明する施設や作業員の宿舎くらいだ。
農漁業を営む人が中心のダウェイは乗合馬車や放し飼いのヤギものんびり行き交う田舎町だが、ベトナムからカンボジア、タイを経てインド洋に至る物流ルート「南部回廊」のインド洋への出口にあたる要衝でもある。回廊の整備は東南アジア諸国連合(ASEAN)各国などが計画中のインフラ事業の目玉。野田佳彦首相も昨年11月に協力を表明した。

東南アジアとインドや中東、欧州の間の貨物輸送は現在、マラッカ海峡ルートに頼る。ダウェイ港を整備してタイやベトナムと道路で結べば、例えばバンコク近郊の工業団地から貨物を陸送してダウェイで船積みでき、インドや欧州への輸送時間は3日も短縮できる。マラッカ海峡での混雑や相次ぐ海賊被害も避けられる。
東南アジアでは日本などの自動車、電機メーカーが国境を越えた部品供給網を整え、ものづくりの分業体制を作り上げている。巨大市場のインドを組み込み、中東や欧州への輸送コストも減らせれば利点は大きい。

ミャンマー政府は昨年1月、開発予定地を国内初の経済特区とする法律を制定し、進出企業に税減免といった優遇措置を用意した。昨年の「民政移管」を機に米欧との関係改善が進み、経済制裁解除に向けた動きも出てきた。政府のティンマウンスウェ現地事務所長は「中国は1980年、広東省深セン(センは土へんに川)に経済特区を設けて外国の資金や技術を吸収し、ここまで発展した。ミャンマーにもそうした地域が必要だ」と期待する。

開発事業は安全保障面でも注目を集めている。中国はミャンマーやスリランカ、バングラデシュなどアジア各地で港湾建設を進めており、軍事利用が念頭にあるとの見方も目立つ。米欧の制裁下で中国に頼り切りだったミャンマーは、多方面外交をベースに経済発展を目指す路線に軸足を移しつつあり、ダウェイ港はタイ企業に整備を任せた。米国も戦略上の要地であるダウェイ開発の行方に関心を寄せている。

■民間任せ 資金難も
開発予定地の基盤整備を請け負ったのは、バンコクの新国際空港も手がけたイタリアンタイ・ディベロップメント社。タイの建設業最大手だが、港や発電施設、タイと結ぶ高速道路の建設に必要な80億ドル(約6400億円)に及ぶ資金集めは簡単ではない。出資者を募るため東京で昨年6月に事業説明会を開いたのに続き、今年は中国と韓国でも開く。(中略)

開発事業はミャンマーとタイの両国が08年に交わした合意に基づくが、今のところ両政府の資金支援はない。日本企業は「民間だけでできる規模ではない。公的な資金支援が欠かせない」(大手商社)と、軒並み様子見の構えだ。
日本の経済官庁幹部は「ミャンマー政府はイタリアンタイに任せた以上、今は日本に直接の支援は求めにくい。契約を白紙にするか、タイ政府にテコ入れしてもらうか見極めているところではないか」と見る。

ミャンマーやタイの環境団体による抗議運動も起きている。これを受け、ミャンマー政府は1月上旬、イタリアンタイなどが計画していた石炭火力発電所の建設中止を発表。環境への影響を抑える方策を検討するという。今の政権は、米欧との関係改善のため市民の声を重視する場面が目立つ。

開発予定地に住む1899世帯の移転も課題だ。住民による目立った抗議活動はまだないが、補償条件の交渉は決着していない。カシューナッツ農園を営むカンミンさん(49)は「先祖代々の土地から移りたくはない。でも近くに働き口ができれば、タイの工場へ出稼ぎに行っている2人の息子や村の若者たちも戻ってくるだろう」と複雑な胸の内を明かす。【2月27日 朝日】
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地元住民との立ち退き交渉が始まっていますが、賛否両論あるようです。
“住民は「移転賛成」と「反対」に割れている。開発会社は移転住民に近代的な住宅を提供し、集団移転先にはこれまで現地になかった病院や市場も建設するという。「失うもののない貧しい人々は移転に賛成する一方、土地を所有しゴム園などを営む比較的豊かな農民層は反対だ」。現地の環境保護活動家、ハインさんは指摘する”【2月3日 毎日】

政府側も強引に進めて、国内の反対世論の高まりからテインセイン大統領が昨年建設中断を発表した中国企業による巨大ダム事業の二の舞いとなることは避けたいところで、慎重に対応しています。
“1月下旬にダウェーを訪れたティンアウンミン副大統領は「移転補償は住民の意向に沿うものでなければならない」と住民側に立つ一方で、「開発が実現すれば多くの雇用が生まれ、これまで仕事がなく外国へ働きに出ていた住民が帰ってくることができる」と、開発が住民の利益になることを強調した”【同上】

【「彼らはミャンマーに殺到している。われわれは門戸を開放するだけだ」】
海外から投資を呼び込む施策として、ミャンマー政府は、外国資本に対する8年間の免税措置を計画していることを明らかにしています。

****門戸開放」するミャンマー、外資に8年間免税を導入へ*****
かつて国際的に孤立していたミャンマーと関係を築こうと欧米企業が「殺到」する中、ミャンマー政府は28日、外国資本に対する8年間の免税措置を計画していると述べた。

ミャンマーのソー・テイン第2工業相は記者団に、スイス・ダボスの世界経済フォーラムで出会った財界リーダーたちからミャンマーに対する多大な関心を寄せられたことを明かした。
「彼らはミャンマーに殺到している。われわれは門戸を開放するだけだ」とソー・テイン工業相は述べ、ミャンマーの来年度の成長率は6%を見込んでおり、外国資本にとって魅力的な場所になるはずだと語った。

またミャンマーのルイン・タウン鉄道副大臣は、投資家を引きつけるために政府が抜本的な法案を検討していることを明かし、「(法案は)最長8年の免税措置を与えるもので、ミャンマーにとって有益な企業であれば措置の延長も行う。すでに草案はまとめられており、2月末には法が制定されるだろう」と語った。

■国際社会に復帰しつつあるミャンマー
米国はミャンマーが改革を進めればそれに報いる用意があると約束しているが、ベルギー・ブリュッセルの外交官らによると、欧州連合も早ければ2月にもミャンマーに対する制裁措置を解除することを検討しているという。

孤立状態にあったミャンマーだが、名目上の民政に移行し、同国の民主化運動指導者アウン・サン・スー・チーさんとの対話も始めている。ヒラリー・クリントン米国務長官は昨年12月、画期的なミャンマー訪問を行い、その後米国は外交関係の全面再開に動いた。さらに同国の閣僚が世界経済フォーラムに招待されたことは、ミャンマーが国際社会に受け入れられつつあることを示している。

■観光投資に期待よせる政府
ミャンマー政府が外国投資を最も期待しているのは観光業だ。ソー・テイン工業相は、ホテル業がすでに需要に追いつけなくなっていると述べる。
「観光業が急成長している。ヤンゴンでは部屋がとれない。ヤンゴンだけでなく、マンダレーやインレー湖でもとれない」と、ソー・テイン工業相はミャンマーの2大都市と最大の観光地の名前を挙げた。【2月1日 AFP】
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日本企業から見たミャンマーの魅力と問題点は下記記事にもありますが、上記記事ラストの“観光”については、東南アジア屈指の観光資源を有していることは間違いありません。
特に、バガンの仏教遺跡は、日本での知名度は高くありませんが、アンコールワットに匹敵するようなインパクトがある世界的遺跡です。その他、ヤンゴン、マンダレー、インレー湖周辺にも、面白いところがゴロゴロしている・・・そんな国です。国民性が穏やかで、のんびりできることも魅力のひとつです。

【「アジア最安」とされる人件費 中国の5分の1
****狙えミャンマー進出 日本企業「制裁解除後」にらむ****
日本企業がミャンマーに熱い視線を注ぎ始めた。米欧による経済制裁の解除が現実味を帯びてきたため、多くの企業が進出を検討している。格安の人件費、隣国タイ並みの人口規模、豊富な天然資源など魅力は多い。ただ、深刻な電力不足といった問題もある。

■人件費「アジア最安」
いち早く現地に進出した企業の現場を見た。
ミシンの音だけが響く工場で、若い女性たちが黙々とカジュアルパンツを縫い上げる。最大の都市ヤンゴンの中心部から車で40分。ミャンマーに2002年に進出したマツオカコーポレーション(広島県福山市)が、04年に設けた2番目の工場だ。日本国内の紳士服量販店や百貨店向けの衣料品をつくっている。

1年で最も過ごしやすいこの時期でも最高気温は30度を超えるが、作業場に冷房はなく、換気装置でしのぐ。従業員1千人の工場に常駐するただ一人の日本人、現地子会社の崎谷俊一社長は首にタオルを巻き、「節約のため、私の部屋も冷房なしです」。平均的な工員の月給は5万5千チャット(実勢で約5500円)。中国のグループ工場では5倍の額を払っているという。

マツオカは99年に国内工場を閉じた。活路を求めて進出した中国でも賃金水準がどんどん上昇。このため、10年夏以降、中国でつくっていたカジュアル衣料品の一部をミャンマーでの生産に切り替えつつある。縫製業のような、大量生産に人手がいる企業にとって、「アジア最安」とされる人件費は大きな魅力だ。  日本貿易振興機構の昨年の調査によると、ミャンマーの日系企業の工員の月給は平均68ドル(約5200円)。中国の5分の1、ベトナムの半額だ。

「格安」なのは単純労働者だけではない。システム開発の第一コンピュータリソース(名古屋市)は08年、ヤンゴンに開発拠点を開いた。
ミャンマーは国立大学でIT(情報技術)人材育成に力を入れるが、地元企業の新卒採用はきわめて少ない。現地法人の赤畑俊一社長は「今は非常に優秀な人材がいくらでも採れる」と明かす。入社前から研修を施し、180人のミャンマー人従業員は基本的に本社や顧客との電話やメールのやりとりを日本語でこなす。

消費市場としての潜在力も注目される。1人あたりの名目国内総生産(GDP)ではラオスやカンボジアにも及ばない東南アジアの最貧国。だが6200万の人口を抱え、大都市に限ればショッピングモールや高級スーパーが急増中だ。大手商社のヤンゴン駐在員は「外資の参入で製造業が発展し、人々の所得水準が上がっていけば可能性は大きい」とみる。

インフラビジネスにも期待が集まる。現地には日本企業が70年代ごろまでに建てた水力発電所や製油所、セメント工場が多く残る。日本の経済産業省幹部は「ミャンマーの人は日本のインフラの性能の高さを知っている」。経産省が音頭を取り、古くなったインフラを点検する技術者集団を近く派遣して商機を探る。

ミャンマーはアジア有数の親日国だ。進出が目立つ中国やタイの企業に比べて、高い技術やブランド力を持つ日本企業への期待は大きい。ミャンマー商工会議所連合会は視察や問い合わせの急増にともない、日本企業専用の相談窓口を設ける方針を決めた。フラマウンシュエ副会頭は「多くの日本企業がミャンマーに進出して、国内の雇用を増やしてほしい」と訴える。

■インフラの不備、深刻
ただ、マツオカのように自社工場を建てた日本企業で、今も操業しているのは縫製業を中心にわずか数社にとどまる。直接投資するリスクを避け、ミャンマー企業に技術指導して製品をつくってもらう「委託加工」をしている企業も20社ほどにすぎない。

昨年まで続いた軍事政権に対する米欧の経済制裁が強まるなか、00年代に日本企業の撤退が相次ぎ、新規投資もほぼ途絶えた。だが、日本企業がミャンマー進出に消極的だった理由は経済制裁だけではない。
電力や道路、通信といったインフラの不備は深刻だ。数時間単位の停電は日常茶飯事で、コストがかさむ自家発電設備は不可欠。「運営費の3分の1を電気代が占める工場もある」(現地の日本企業経営者)。複数のレートが併存する複雑な為替制度や、不透明で時間がかかる許認可手続きも不評だ。

ミャンマーには天然ガスやレアアースといった豊富な天然資源が眠るが、「開発には縫製工場などとはケタ違いの投資が必要。民主化が定着するかどうかも含め、まだリスクが大きすぎる」(別の大手商社駐在員)という声が目立つ。

一方、中国やタイは資源開発や港湾建設といった大規模事業に次々と参入。製造業では韓国勢の進出も目立つ。89~10年度のミャンマーへの国別の直接投資額の累計で、日本は中国・香港の1%強に過ぎず、出遅れている。
外資系企業の工場の大半が集まるヤンゴン周辺では、とくに縫製業で働き手の争奪戦が激しく、早くも人集めが難しくなってきているという。【2月6日 朝日】
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凍結していた円借款の再開
アメリカ国務省は6日、ミャンマー政府の改革を評価し、これまで米国内法に基づき反対してきた国際金融機関による対ミャンマー経済支援を部分的に認める制裁緩和措置を決定しています。
欧州連合(EU)欧州委員会のピエバルグス委員(開発担当)は12日からミャンマーのテインセイン大統領らを訪問し、今後2年間で1億5千万ユーロ(約155億円)の経済支援を表明すると報じられていました。
日本も、凍結していた円借款の再開に向けて動いています。

****対ミャンマー円借款再開を表明へ 4月に日本で首脳会談****
野田佳彦首相は4月下旬にミャンマーのテインセイン大統領を日本に招いて会談する。ミャンマー政府が進める民主化と国づくりを支援するため、凍結していた円借款の再開を表明する方向で調整している。

大統領は4月21日に東京で開かれる「日メコン首脳会議」に出席する。昨年3月の民政移行後、ミャンマー元首の来日は初めて。日本政府は経済支援を強め、日系企業の進出などを後押しする考えだ。

日本政府は1988年の民主化運動弾圧以降、途上国援助(ODA)を人道支援に限定し、大型インフラ整備などのための円借款を凍結した。それ以前の供与分の延滞債務が5千億円近くに膨らんでおり、支援再開の前提として対外債務の返済方法を決めるため、両国間で協議している。4月1日の国会補選が適正に行われるかも見極める。【2月23日 朝日】
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