孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

フィリピン  5月10日大統領選挙 下院出馬で権力維持を狙う?アロヨ大統領

2010-03-26 20:16:16 | 世相

(フィリピンのアロヨ大統領(左女性) 小柄で愛嬌のある外見からは、そんなに権力欲が強いようにも見えませんが・・・・ 腕を取るのは今回選挙にも立候補しているエストラダ元大統領 こちらは汚職で有罪になったのち、アロヨ大統領との政治的取引もあって恩赦で自由の身になった人物です。再選禁止規定にも関わらず「任期途中の2年半しか職を務めておらず、立候補の資格はある」と主張しています。選挙管理委員会は立候補を認めましたが、最高裁判断はまだ出ていないと思います。
昨年8月頃の写真のようですが、エストラダ元大統領は死去したアキノ元大統領とともに、アロヨ批判の先頭に立っていたはずですが・・・  “flickr”より By themanilamail
http://www.flickr.com/photos/manilamaildc/3831829752/)

【本人のほか、親族・側近も】
フィリピンでは、5月10日に大統領選と上下院選挙が同時に行われます。
現職アロヨ大統領は再選が禁じられているため大統領選挙には出馬できませんが、アロヨ大統領自身のほか、長男や夫の兄妹など4人、側近の官房長官ら前閣僚6人が下院選に立候補します。
この動きは、汚職疑惑の絶えない大統領が刑事訴追を避けるため、退任後の権力維持を狙っているとの見方が多く、野党勢力は反発を強めているようです。

以前は、“アロヨ大統領は改憲で議院内閣制を導入し、首相として権力を維持しようとしている・・・”とも批判されていました。さすがに、そこまではやりませんでしたが、今回の親族・側近らの大量立候補をみると、やはりどうしても権力から離れる訳にはいかない事情があるようにも邪推されます。

【大統領選挙無効になれば・・・】
今回の選挙では初めて電子投票システムが導入されますが、これがどうも不調のようです。
それに絡めたアロヨ大統領の狙いについて、“下院議長となって、もし大統領選挙が無効になれば下院議長が大統領代行になる”という、非常に面白いうがった見方もあります。

****フィリピン大統領:権力維持狙う…親族とともに下院選出馬*****
フィリピンで5月の大統領選と同時に行われる下院選の選挙運動が26日に始まる。下院選には、任期切れで退任するアロヨ大統領やその親族らが多数出馬し、アロヨ派は下院を制することで権力維持を画策しているとの見方が強い。これに対し、反アロヨ陣営は反発を強め、大規模な抗議行動も辞さない構えを見せている。
 ◇議長就任の観測
287議席を争う下院選には、任期(1期6年)満了で退任するアロヨ大統領のほか、長男や夫の兄妹など4人、側近の官房長官ら前閣僚6人が立候補する。現下院は269議席中、アロヨ氏の与党が過半数の144議席を占める。アロヨ派は選挙で勢力をさらに拡大させたい考えで、アロヨ氏が下院議長のポストに就くのでは、との観測もある。
今回の選挙では、初めて電子投票システムが導入されるが、テストのたびにトラブルに見舞われており、多くの地域で選挙が不成立となる懸念がある。一部地域で選挙が無効となった場合、正副大統領や同時に選挙が行われる上院議員が選出されない可能性がある。憲法では、正副大統領、上院議長が不在の場合、下院議長が大統領代行に就任すると規定されており、アロヨ氏が大統領代行に就任する可能性もある。

また、アロヨ氏の権力維持の布石と指摘されているのが、軍や司法機関への腹心の起用だ。アロヨ氏は今月、国軍の参謀総長に腹心で元大統領警護隊長を、国軍士官学校の卒業年次の序列を無視して抜てき。国軍の主要ポストにも次々と腹心を送り込んでいる。大統領府の副報道官は19日、「選挙が不成立の場合は暫定軍事政権も考えられる」とコメントし、不測の事態が現実味を帯びてきている。

一方、反アロヨを掲げて大統領選に出馬しているアキノ元大統領の長男、アキノ上院議員は遊説先で、「(選挙の不成立による)権力の空白は許されない」と話し、マルコス独裁政権を倒した、ピープルパワーによる民衆の抗議活動の可能性に言及。国民に影響力を持つカトリック司教協議会幹部も、ピープルパワーを示唆する発言をしている。
アキノ候補を支援する非政府組織(NGO)幹部は「アロヨ氏の思惑通りになっても、民衆が許さない。一部地域で選挙が不成立となっても、次点に大きな差をつければ、選挙は成立する」と話している。【3月25日 毎日】
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そうそう“ピープルパワー”では、フィリピンの民主主義の信頼が揺らぎます。

【電波障害を起こす機器???】
問題の電子投票システムについては、電波障害を起こす機器が大量に輸入され、選挙妨害用ではないかとの憶測も報じられていました。
****フィリピン:大統領選 電子投票システム導入も不具合多発******
フィリピンは5月10日に行われる正副大統領と上下両院の選挙で初めて電子投票システムを導入する。不正防止と開票作業のスピードアップが狙いだが、テストでトラブルが相次ぎ、実施まで3カ月を切った選挙の不安材料となっている。
フィリピンでは過去の選挙で投票箱の略奪や不正集計などがたびたび問題となっていた。選挙管理委員会は「電子投票により不正行為を防げる」と強調。また04年の前回選挙で約40日かかった当選者の公式発表までの期間を、36時間以内に短縮できるとしている。
電子投票はマークシート式で、投票所で機械に用紙を読み込ませる。システムはベネズエラの国民投票などで実績があるオランダ企業と比企業の連合体が約140億円で受注した。データは投票終了後、各投票所から無線LANなどインターネットや衛星電話で中央に送信される。
しかし、予行演習では、ネット回線が不安定で送信できないトラブルが多発。1枚の投票用紙には大統領候補10人、上院議員候補61人ら多数の名前が印刷され、長さが約64センチに達する。このため、データがうまく読み込めないとの見方もある。

先月には電波障害を起こす機器約5000台が輸入されたことが判明。だれが、何の目的で輸入したのかは不明だが、投票結果のデータ送信の妨害を狙った可能性も指摘されている。
マルコス独裁政権崩壊で大きな役割を果たし、独自の開票作業を行う民間団体「自由選挙のための国民運動(ナムフレル)」のエリック事務局長は「電子投票の信頼性と透明性が保証されておらず、さまざまな問題がある。失敗すれば、国際社会の信用を失いかねない」と懸念する。【2月13日 毎日】
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ただでさえ多くの国で選挙後、不正が行われたとして混乱が生じていますが、フィリピンの場合もなかなかすんなりいかない可能性もあるようです。
しかし、大統領選挙が無効だから下院議長に就任したアロヨ氏が大統領代行に・・・というのは、いくらなんでも・・・というところです。


【アキノ氏を追い上げるビリヤール氏】
その大統領選挙の情勢は、母親の“コリー”ことアキノ元大統領の死去によって、一躍大統領選挙本命に躍り出たベニグノ・アキノ上院議員でしたが、最近では野党国民党のビリヤール上院議員の追い上げが報じられています。
やや古い記事になりますが、2月10日時点では下記のように報じられていました。

****比大統領選 5月投票へ選挙戦スタート アキノ氏を3氏追撃*****
フィリピンのアロヨ大統領の任期満了に伴う大統領選は9日、各候補による選挙運動が解禁され、5月10日の投票日に向け3カ月間の選挙戦がスタートした。直近の各種世論調査では、故アキノ元大統領の長男、ベニグノ・アキノ上院議員(50)が依然トップ。ただ、野党国民党のビリヤール上院議員(60)が追い上げ、エストラダ前大統領(72)、与党候補のチョドロ前国防相(45)も支持を伸ばしている。

世論調査会社のストラトポール社が1月下旬に行った調査では、アキノ氏が36%と昨年9月の調査と同じ支持率だったのに対し、ビリヤール氏が26%と前回より6ポイント増。また、エストラダ氏15%(同4ポイント増)、チョドロ氏11%(同6ポイント増)と追い上げている。チョドロ氏は当初、アロヨ大統領の不人気もあって苦戦したが、ここに来て大きく支持を伸ばしているのが目立つ。
ストラトポール社の調査では、大統領を選ぶ基準として、「信念を持った人物であるべき」とする答えが62%と最も多く、「国民に人気がある人」とした20%を上回った。「元大統領の後継者」と答えた人は4%に過ぎなかった。アキノ氏については、国民の人気は高いが、政治家としての実績が乏しいとの批判が多い。今後の選挙戦でどこまでリードを保てるか注目される。【2月10日 産経】
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“(アキノ氏の)世襲に対する批判も強まっている。これに対し、国内有数の資産家で知られるビリヤール氏は、既にアキノ氏の10倍近い広告費を投じたとされ、「貧困層の味方」を演出する戦略が奏功している。”【2月9日 読売】とも。
5月10日の投票日までまだ1月半ありますので、まだまだ事態は動きそうです。

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