孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

ジンバブエ  大連立後の状況

2009-09-14 21:19:36 | 国際情勢

(ジンバブエの刑務所は、食糧不足、不衛生な環境、病気の蔓延で非人道的な状況にあるようです。
http://www.sokwanele.com/thisiszimbabwe/archives/3882(英語記事)
国家自体が破綻状態ですから、刑務所の中は・・・。
いわゆる犯罪者だけでなく、政治的理由で拘束される者もいます。
“flickr”より By Sokwanele - Zimbabwe
http://www.flickr.com/photos/sokwanele/3400144476/)

【欧米は直接支援に慎重な姿勢】
戦後最悪とも言われるハイパー・インフレーションによる経済崩壊、昨年のムガベ大統領と野党「民主変革運動」(MDC)のツァンギライ議長が争った大統領選挙をめぐる政治的混乱で、殆ど国家破綻状態だったアフリカ・ジンバブエですが、とにもかくにも2月にムガベ大統領とツァンギライ首相という“大連立”がなんとか成立しました。

その後、インフレの状況がどうなったのか。政治的混乱はおさまったのか・・・あまりメディアに載るニュースがありませんでしたが、久しぶりにジンバブエの記事を目にしました。
ムガベ大統領が7年ぶりにEU代表団と会談したというものです。

****EU代表団、ジンバブエ首脳と会談*****
ジンバブエを訪問中の欧州連合(EU)の代表団は12日、前年の大統領選後の混乱を経て2月に連立内閣を樹立したロバート・ムガベ大統領、モーガン・ツァンギライ首相と個別に相次いで会談した。EUがムガベ大統領と会談したのは7年ぶり。
前日の11日に「血に濡れた白人」がジンバブエの内政に介入していると強烈に非難したムガベ大統領は、首都ハラレで、笑顔で代表団を迎え、自分は旧宗主国である英国を非難したのであって、西側諸国一般を非難したのではないと語った。
ムガベ大統領は、ジンバブエに科された制裁が多くの国民を苦しめていることに失望感を示しつつ、会談後に「会談はうまくいった。彼らは連立協定がうまくいっていないと考えて色々と質問してきた。しかし連立協定の実施事項は適時実施されている。(EU側と)良い関係を築くことができた。友好的な会談だった」と述べた。

EUと米国は不正があったとされる2002年の大統領選挙後の混乱を受け、ムガベ氏とその側近に制裁を科している。加盟国の経済的統合と地域の安全保障強化を目的とする南部アフリカ開発共同体(SADC)も制裁の解除を求めているが、EUはジンバブエが直面する問題の原因は制裁ではなく、統治と人権侵害にあるとしている。
EU代表団はムガベ大統領との会談では制裁について話さなかったが、ムガベ大統領との会談後、同国第2の都市ブラワヨで行われたツァンギライ首相との会談ではこの問題が話し合われた。ツァンギライ首相は、制裁の問題は最近始まったEUとの協議でも取り扱われるだろうが、ジンバブエには憲法改正、報道の規制など改革すべき点が多数残されていると発言した。
スウェーデンのグニッラ・カールソン国際開発協力担当相は、会談では主に政治的自由と報道の自由を保証するなどとした連立協定の確実な実施について話し合われたことを明かした。

ジンバブエとの関係正常化をめざすEUはムガベ大統領が確実に改革を進める確証を求めている。連立内閣樹立後も、主要ポストをめぐる争いやツァンギライ氏の支持者への迫害が起きていることから、西側各国は直接支援に慎重な姿勢を崩していない。【9月13日 AFP】
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現段階では、EU代表団は会談を評価したものの、人権侵害などに対する改革が十分ではないとして、制裁解除は先送りしたということのようです。

【「どちらもまだ実現されていない」】
ムガベ大統領は4月18日に行われた独立記念日の式典で、「尊厳と良識を持ち、政治や宗教、人種や民族など互いを受け入れる環境をつくる必要がある」と国民和解を訴えていますが、ムガベ大統領のこれまでの、そして大連立後も続くツァンギライ首相支持者への迫害などを考えると、あまり楽観的希望は持ちにくいところです。

なかなか進まない国内状況改善に、亡命ジンバブエ人の苛立ちも募っているようで、6月20日にイギリス・ロンドンを訪れたツァンギライ首相の演説には厳しい反応がありました。

“ツァンギライ首相が、帰国してジンバブエの再建を手助けしてほしいと呼びかけると、聴衆からロバート・ムガベ大統領の退陣が先だという声が次々にあがり、「口をつぐめ」という怒鳴り声も上がった。
8年前にジンバブエを後にしたという会場にいた男性(42)は、「ツァンギライはムガベの政治手法に染まってしまったようだ。われわれ英国在住のジンバブエ人は暴力のトラウマに苦しんでいる。ムガベがいるうちに帰国することなどあり得ない」と語った。
また、ツァンギライ首相がムガベ大統領との連立政権が国内の平和と安定を実現したと述べるとさらに激しい怒りの声が上がり、聴衆の大半が「どちらもまだ実現されていない」と叫んだ。”【6月21日 AFP】

大連立という現実的枠組みのなかで事態の改善を図っていくしかないツァンギライ首相としては、なかなか苦しいところです。

【北朝鮮や中国との関係も】
対外的関係としては、欧米からの経済制裁が課されているなかで、北朝鮮や中国との関係も報じられています。

****ジンバブエと協力合意=北朝鮮*****
朝鮮中央通信によると、北朝鮮の朱霜成人民保安相とジンバブエのモハジ内相は14日、平壌で人民保安省と内務省の協力に関する合意書に署名した。具体的な内容は明らかでないが、警察分野の連携強化とみられる。
また、同通信は、楊亨燮最高人民会議常任副委員長がモハジ氏らと会談したと伝えた。【5月14日 時事】
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****ジンバブエ、中国から融資9.5億ドル*****
ジンバブエのモーガン・ツァンギライ首相は29日、中国から総額9億5000万ドル(約910億円)の融資を確保したと発表した。
3週間の欧米歴訪から帰国したツァンギライ首相は、記者会見で、「わたしの不在中に、政府がテンダイ・ビティ財務相を通して、中国から総額9億5000万ドルの融資を確保した」と述べた。【6月30日 AFP】
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EU・アメリカとしても、単に経済制裁を漫然と続けるだけでは、ジンバブエを別の方向に追いやってしまうこともありえます。
人権への配慮、政治的自由、報道の自由などについて、改善へ向けた取組みの呼び水になるような対応が求められます。

【改善を導く方向での援助・支援】
経済状況を伝えるニュースはあまりありませんが、下記の記事などを見ると、苦しい状況に変わりはないようです。

****ジンバブエで憲法起草委員らがスト、給与不払いに抗議****
ジンバブエの新憲法起草委員会の委員が、給与の不払いに抗議してストライキに突入した。複数の現地メディアが伝えた。
ジンバブエでは2月、ロバート・ムガベ大統領の・ジンバブエ・アフリカ民族同盟愛国戦線(ZANU-PF)とモーガン・ツァンギライ首相率いる民主変革運動(MDC)の連立政権が発足。25人の委員から構成される新憲法起草委員会が立ち上げられた。

しかし、6日付の国営紙サンデー・メールが伝えた同委員会のポール・マングワナ共同議長の話によると、4月以降委員らには1ドルも支払われていない。これまでは各委員が自腹で作業を支えてきたが、もはや委員会の運営に支障を来す事態になったという。
国連開発計画(UNDP)が改憲作業のために200万ドル(約1億9000万円)を提供しているが、同共同議長によると予算が不足しているうえ、ジンバブエ政府はこれまでに起草委員会の費用を一切支出していないという。【9月7日 AFP】
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国家の将来を方向付ける新憲法起草委員会が報酬未払いで機能停止というのでは、明るい将来図も描きにくい状況です。
海外からの援助なしでは今後のビジョンも難しいと思われますので、先にも述べたように、改善を導く方向での援助・支援の可能性を検討すべきではないでしょうか。

コメント
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