孤帆の遠影碧空に尽き

年に3回ほどアジアの国を中心に旅行、それが時間の流れに刻む印となっています。そんな私の思うこといろいろ。

コンゴ  「反政府軍は強くて怖い。酔った政府軍はもっと恐ろしい。国連は何もしてくれない」

2008-11-13 18:38:56 | 国際情勢

(昨年07年9月、ゴマ近郊で撮影された難民家族 隣村が襲撃されたため逃げてきたそうです。現在の状況は更に逼迫しているように想像されます。“flickr”より By Julien Harneis
http://www.flickr.com/photos/julien_harneis/1318903794/)

【コンゴで続く混乱】
政府軍と反政府勢力との戦闘が激化し大勢の難民が発生しているアフリカ中部コンゴ(旧ザイール)東部(ルワンダが近い北キブ州)の状況については、10月31日ブログ「コンゴ 進攻する反政府軍と国連PKOが対峙 多数の難民 ルワンダは?」で取り上げましたが(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20081031),このとき心配した反政府軍(ヌクンダ将軍率いる「人民防衛国民会議(CNDP)」)と国連が展開している最大のPKOである国連コンゴ監視団(MONUC)が直接に衝突するという最悪の事態は、今のところは避けられているようです。
ただ、危機的な状況が続いていることにはかわりありません。

なお、コンゴではヌクンダ将軍の反政府軍に隠れてあまり記事にはなっていませんが、スーダン国境が近い北部ドゥング方面では、ウガンダの反政府軍“神の抵抗軍(LRA)”による攻撃が9月以降激しくなっており、ドゥングでは全市民5万7千人が避難する事態となっています。

少年兵や少女の性的虐待といった問題で悪名高い“神の抵抗軍(LRA)”については、リーダーであるジョセフ・コニーに対する国際刑事裁判所(ICC)の人道の罪に関する告訴が足枷になる形で交渉がストップしていますが、そのあたりの経緯は7月13日ブログ「国際刑事裁判所の逮捕状 スーダン、ウガンダそしてアメリカ」に紹介しています。(http://blog.goo.ne.jp/azianokaze/d/20080713

話をヌクンダ将軍のCNDPに戻すと、7日にはケニアのナイロビで、関係国や国連による緊急首脳会合が開催され、参加した首脳らは人道支援のための通行路設置と即時停戦を呼びかけています。
この会合で、反政府勢力に対しは、すでに合意している武装解除を実行するよう要求。
更に、平和維持能力をより発揮できるよう、国連平和維持部隊の権限の強化を要請しています。

しかし、戦闘は収まっておらず、9日朝にも反政府勢力と政府支持派武装勢力“マイマイ”の間で約6時間にわたる戦闘が発生したことが報じられています。
この戦闘は国連コンゴ監視団(MONUC)の調停によって6時間ほどで終わったようです。

【難民キャンプではコレラ発生】
難民の生活環境は悪化しており、医療援助団体「国境なき医師団」によると、少なくとも100件のコレラの発生が報告されているそうです。

***コレラ流行・親とはぐれ子多数…コンゴ東部戦闘激化*****
反政府組織と政府軍の戦闘が激化するコンゴ東部の避難民キャンプは、人々であふれかえっていた。一度止まっていた戦闘も9日になって再開。逃げまどう人を乗せたトラックが、キャンプに向かう道で列をなす。雨期で衛生状態が悪く、キャンプではコレラの流行が始まっていた。

9日午後4時ごろ、東部の中心都市ゴマの北約5キロにある検問所に人と荷物を満載した大型トラックが4台到着した。ゴマの北80キロの村キワンジャから集団で避難してきた約100人の住民だった。
キワンジャでは5日から6日にかけて、コンゴ政府軍の元将軍ヌクンダ氏が率いる反政府組織「人民防衛国民会議(CNDP)」と、政府軍の支援を受けているとされる民兵組織「マイマイ」の激しい戦闘があり、少なくとも20人が死亡したという。
家族10人でやってきたジョスリンさん(19)は「戦闘は自宅の周りで起きた。CNDP兵に銃を突きつけられ、殺されると思った。20人どころか、200人は死んだと思う。近所の住民と一緒にトラックを借りた。どこに行ったらいいのか」と語った。
ゴマ周辺に1万7千人が駐留する国連平和維持部隊(MONUC)によると、キワンジャ近郊の町ルチュルなどでは9日にも、政府軍とCNDPの戦闘が起きた。 (中略)

一方、キャンプを警護する政府軍の規律の乱れが目立ち、避難民は安心し切れない。9日午後4時20分過ぎ、キャンプ内で銃声が響き、避難民が一斉に逃げ出した。約5分間の銃声がやんでみると、発砲したのは泥酔した政府軍兵士たちだったと判明した。被害はなかった。
ルチュルから来た避難民ベルナールさん(50)が「CNDPは強くて怖い。政府軍は酔って何をするか分からないから、もっと恐ろしい。国連は何もしてくれない」とまくし立てた。周りの避難民たちが一様にうなずいていた。 【11月11日 朝日 古谷祐伸】
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【誰が住民を守るのか・・・】
「CNDPは強くて怖い。政府軍は酔って何をするか分からないから、もっと恐ろしい。国連は何もしてくれない」という言葉が実態を表現しています。
国連は、政府軍が民間人に対し略奪や性的暴行をはたらいているとし、コンゴ東部で「人道的ブラックホールが口を開いている」と警告しています。
地図を見ると、日本の6倍以上ある広大なコンゴですが、首都キンシャサは西の果てに位置し、紛争地北キブ州とはジャングル等で隔てられています。
政府のコントロールがきかない事情もわかるように思えます。

一方、反政府勢力CNDPの方も民間人殺害が問題になっています。

*****敵とみなされ襲われた村 内戦激化のコンゴ東部*****
反政府勢力と政府軍の戦闘が激化しているコンゴ東部で、一般住民が敵対勢力と決めつけられ、多数殺された可能性が出ている。国連は「戦争犯罪」として追及することも視野に調査中だが、住民らはすっかり、おびえきっている。
東部の中心都市ゴマから北へ80キロ。キワンジャ村のマブンゴ地区では、11日にも新たな遺体が見つかった。大勢の住民が5日、反政府組織、人民防衛国民会議(CNDP)の兵士らに殺された現場だ。

夫を殺されたトウィゼレさん(30)は自宅の片隅を指さして、泣いた。「隣人にも助けてもらって夫をここへ埋めた。離れた墓地まで、怖くて運べなかったの」
夫のヌタムハンガさん(35)は妻と3人の子をかばいながら、狭い自宅に隠れていた。正午過ぎ、木のドアをけって兵士3人が入ってきた。
「金をくれと言うので、夫は食費のために3日前に鉄板を売って手にした10ドル紙幣をポケットから出して渡した。それで大丈夫だと思った瞬間、夫は胸を撃たれ、部屋の隅まで吹き飛ばされた」

(中略)地区長ムビリンデさんは「最初は住民を巻き込むことはなかったが、5日朝になって、若い男性をマイマイ兵と決めつけて殺し始めた」と話す。
約5キロ離れた町ルチュルの丘の上に、CNDPは拠点を構えている。ナンバー2を名乗るヌゲベ氏が取材に応じ、「我々は私服で活動するマイマイ兵を見つけて殺しはしたが、民間人は殺していない」と答えた。
国連は犠牲者数を26人としているが、ムビリンデさんは「遺体を埋めていた赤十字のスタッフは、250人は死んだと言っていた」と言う。赤十字は取材に応じなかった。 【11月12日 朝日 古谷祐伸】
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犠牲をいとわず力で押し進む反政府軍、規律が乱れ略奪・暴行に走る政府軍、傍観するしかない国連・・・コンゴ住民の悲劇はしばらく続きそうです。
国連のPKO活動のあり方については、一般的な物言いは難しいですが、こうした具体的な現場の状況からすれば、難民保護という立場にたったもっと積極的な行為が求められるように思えます。
場合によっては、現地政府や反政府勢力と対立・衝突することがあっても。

カガメ・ルワンダ大統領の「(ルワンダでの国連PKO)UNAMIRは武装してここにいた。装甲車や戦車やありとあらゆる武器があった。その目の前で、人が殺されていた。私だったら、絶対にそんなことは許さない。そうした状況下では、わたしはどちらの側につくかを決める。たとえ、国連の指揮下にあったとしてもだ。わたしは人を守る側につく。」という言葉が重く感じられます。

蛇足ながら、コンゴのPKO活動は地元住民に対する暴行がかつて問題になったことがあります。
04年の虐待では、難民の10代の少女に対し、PKO兵士が卵や牛乳などと引き換えに売春を強要したり、ビデオ撮影などをしたと言われています。
今年8月にもMONUCのインドからの派遣団の一部(100人規模)が、地元の女性に対する性的虐待に関与している疑いが報じられ潘基文(バンギムン)国連事務総長を悩ませていました。




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