細いパン

2017年01月09日 13時04分25秒 | マーロックの日記

                                 ピィ

                                             ォォォォォ   ・・・・・・

                    カタ

荷台の中は、音がよく響く・・・

「・・・・」

もう乾いてる。

靴の土踏まずにある通気孔を、液体ゴムで埋めた。

色は同じ。

外側から、少しだけ使って埋めてある。

地面で跳ねた雨粒がそこから入ってこなければいいので、これで十分。

持ってきた3足のつい2つがそうなっていたから、どちらも埋めた。

                               ミャ~

積み上げた木箱の上に、光る目が2つ。

しまネコだ。

私は、自分の木箱ベッドにいる。

木箱で作った通路はジグザグにしてあるけど、ネコ達は関係なくその上を行く。

トラックの牽引車で倒木を2本出して、一番大きな奴は少しずらした。

森の中にポッカリ空間ができたので、そこにトラックとミニバスを入れた。

今夜はここに泊まる。

もうシャワーを借りて、さっぱりしている。

       

外に出よう。

雨は弱まったり激しく降ったりを繰り返している。

チャンスがあれば、ドローンにトランシーバーの中継器を付けて飛ばす。

グリに渡した無線機とつながるかもしれない。

         トコ

                   ――   ミュ~

オッドネコやトラネコは遊びたがるので、荷台で遊ばせている。

                        ピィ

メジロもいる。

                                              ォォォォォ  ・・・・・

                         トコ

地球の生命が40億年前頃に誕生してから30億年の間、地球にはずっと単細胞生物しかいなかった――ストロマトライトのような生物由来の堆積物もあったけど、基本的に人の目には見えないほど小さな生物ばかりだった。

全地球凍結が終わった6億年前頃、酸素濃度が急激に上昇して大型の多細胞生物が現れる――コラーゲンの生産が可能になったと思われる。

多細胞生物の細胞は、基本的に同じDNAのコピーを持っている。

だけどそれを次の世代に残す可能性を持っているのは限られた生殖細胞だけで、他の細胞はそのために使い捨てにされる――生殖細胞系列のみ不老不死で、遺伝情報を繋いでいく。

生殖細胞を助けるために特殊化…分化した体細胞は、事故や捕食者に襲われなかったとしてもやがて老化して死ぬ。

老化の原因は、まだ分かっていない。

細胞はある条件では、自ら死ぬ。

アポトーシスなどで、プログラム細胞死…PCDと呼ばれる――複雑な過程によって分解される。

真核生物が現れる前に、この仕組みは進化していたと思われる。

おそらく、細菌がウイルスとの戦いから獲得した防御能力で、真核生物はそれを受け継いで利用している。

ウイルスは細胞を持たず、核酸分子とその保護コートで構成されている――ウイルスは毒という意味。

代謝系は持たず、宿主細胞に寄生してそこにある酵素を使って自己複製する。

複雑さはいろいろで、1059文字のRNAがたった1つのタンパク質をコードするだけのものから、100万文字以上のDNAで911の遺伝子を持つ複雑なウイルスまで発見されている――細菌には、複雑なウイルスよりもずっと単純な遺伝情報しかもたないものもいる。

ウイルスは、人の病原体として発見された――天然痘のような深刻なものから風邪の原因となるものまで様々ある。

現在では他の動物や植物、細菌に感染するウイルスが知られている。

ウイルスは細胞表面のタンパク質を見極めて、その生物の一部であるかのようにふるまう――宿主のDNA内で何年もひっそりしている事もあるけど、すぐに細胞をのっとる場合もある。

寄生した細胞で自分のコピーを大量に作らせ、それを脂質とタンパク質で包んで細胞の外に出す――そして別の細胞で複製を繰り返す。

それぞれのウイルスは、寄生できる宿主細胞が狭い範囲で限られていて、少数の近縁生物種の細胞でしか増殖できない。

ウイルスは私たちの命を奪うこともあるし、ひと晩で数百kmもの範囲で海洋プランクトンを消し去ることもある。

代謝活動が生命に必須の条件だとされる場合が多いので、ウイルスは生物に分類されない事が多い。

ウイルスは自分の置かれた環境が複製に適していれば…細胞内であれば、コピーをつくる。

私たちも似たようなもので、自身が適応している地球の表面のような環境であれば、次代に遺伝情報を残すための活動ができる――食べものや酸素がないと死ぬ。

植物も、動物などが呼吸で二酸化炭素を出さないとやがて生きていけなくなる。

細菌は自分の置かれた環境が危険な状態になると、芽胞を形成することがある。

芽胞は代謝をおこなわず、永久凍土で数千年も耐えて蘇生する場合もある――宇宙空間でも耐える場合がある。

種子やクマムシのような動物も、一時的に代謝をとめることで宇宙空間でも耐える――致死量の1000倍以上の放射線や、海底の圧力にも耐える。

芽胞などは代謝は行わないので生きているとは言いにくいけど、適切な環境に戻ると蘇生できるので死んでいるとも言えない。

ウイルスも適切な環境であれば自己複製が可能で、このため自然選択も働く。

50年前、サル・スピーゲルマンは、自然選択による進化が可能な最小単位をつくろうとした。

彼は、4500文字の遺伝情報を持つだけのウイルスを使った。

このウイルスが持つ遺伝子が指定するタンパク質は、感染した細胞の機構を誤らせて自身のコピーをつくらせる。

スピ―ゲルマンは、試験官に複製に必要な酵素や原材料をたっぷり入れてウイルスに与えた。

しばらくウイルスは、細胞内にいるのと同じようにして自身をコピーしていた。

やがて突然変異を起こして、いくつかの遺伝子を失った――細胞内では必要な遺伝子だけど、試験管内では不要だった。

無駄な遺伝子を失って短くなったウイルスは、複製が速くなる――もとのウイルスよりも数が多くなって、圧倒するようになる。

それが繰り返され、最終的には220文字しか持たないウイルスになった――試験管の外では何もできないけど。

数の増えやすい特徴のものは、増える。

現在の海水1Lには、平均数億のウイルスがいる――濃度が1000倍以上の海域もあり、そういう場所では細菌の数よりも多い。

原核生物に次ぐバイオマス成分で、あらゆる海洋生物に感染して生物圏に大きな影響を与えている。

太古の海にも、ほぼ同じ程度のウイルスがいただろう。

細菌に感染するウイルスはファージと呼ばれ、多くは毒素と抗毒素の遺伝子を持っている。

この遺伝子がつくる毒素は長く持つけど、抗毒素は短時間しか持たない。

このため感染した細菌は生き延びるけど、感染していない細菌やウイルスを排除しようとした細菌は毒素で死ぬ――ウイルスのコピーに協力する細菌だけ、生かすのである。

細菌が自らを守るには、ウイルスから抗毒素の遺伝子を奪う必要がある。

ウイルスと細菌の争いが、おそらくメタカスパーゼという酵素を進化させた――植物も持っており、シアノバクテリアが最初に得たのかもしれない。

私たちが持っている酵素はカスパーゼで、メタカスパーゼから進化している――機能も似ている。

人の場合11種のカスパーゼがあり、6種はアポトーシスのみに関与する――残りは、感染と炎症の制御に関わる。

ほぼすべての場合で、ミトコンドリアが最初のシグナルを出す。

シグナルは連鎖増幅され、カスパーゼを活性化させる――小さな最初のシグナルが次の酵素を何倍も活性化させ、それがさらに次のシグナルを何倍にも活性化させるような連鎖で、カスケードという。

どのカスパーゼにもシグナルを止める阻害物質があり、かつての抗毒素に由来するのだろう。

           トコ

シャープネコもいる。

ネコたちが跳ねているのを、少しみる。

                                     ォォォォォ   ・・・・・・

シアノバクテリアが大量に増殖すると、海の色を変える――水の華と呼ばれ、細菌が大きなかたまりになって浮かんでいる。

この水の華は、川から流れ込んできたり海底から上昇流で水面付近にきたミネラルによって急成長する――数週間続く。

その後海水に溶けるように、ひと晩でいきなり消滅する。

この時、細菌の大群は自ら死んでいる――カスパーゼの連鎖反応が、内部から細胞を分解する。

個々の細胞が独立している細菌が自殺するとは思われていなかったので、この発見は遅かった――30億年前から、このような仕組みはあったと思われる。

水の華を構成する細菌は、まったく同じではないけど遺伝子のよくにた細胞でできている。

大量の細胞が集まっているので、他の細胞からの化学的刺激や得られる太陽光の量、利用できる栄養などに差が出る――ファージの感染もあるだろう。

こうした環境の変化は、分化のもとになる――同じ遺伝子でも、違った外観になる。

細胞死を引き起こすシグナルに強い細胞なら、生き延びて次の水の華のもとになる。

脆弱な他の細胞は、プログラム細胞死によって分解される。

私たち多細胞生物の体細胞は基本的にすべて同じ遺伝子を持っているけど、周囲の環境や刺激によって様々に分化している――細胞に間で、複製ミスによる差は出る。

複数の細胞が集まれば、外側と内側で環境は同じにはならない。

少しでも数を増やすのに有利な変化であれば、自然選択は累積して進化は進む――移動するための機能は外側にあった方が便利だろうし、生殖細胞は内部で守られた方がいいだろう。

発生したばかりの多細胞生物も、単純な分業から得られるメリットによって進化したのだと思われる。

ボルボックスのような藻類はたくさん集まって生活することで利益を得るけど、必要があれば集団から抜け出して単独でも生きる。

だけど神経細胞…ニューロンの用に特殊化した細胞は、もう単独では生きられないだろう。

細胞が独立生活を捨てて、生殖細胞のために働くように分化したことで多細胞生物は上手く機能する――特殊化した細胞が勝手に増殖を始めれば、がんのように全体を脅かす存在になる。

そのために、分化した体細胞はやがて死ぬ――生殖細胞のみが死なずに世代を超えていく。

真核細胞は古細菌の中に細菌が内部共生したことで誕生した――細菌が、のちにミトコンドリアになる。

カスパーゼは、このとき細菌からそのまま宿主に渡されたと思われる。

必要があれば体細胞を分解することが可能で、これは多細胞生物を進化させる助けになっただろう――勝手に増殖しようとすれば、分解できる。

私たちが指でものを掴んだり、脳に送られたシグナルがゴチャゴチャに混ざりあわないのも、一部の細胞が自ら死ぬことで構造をつくるためである。

免疫系でも、自分自身を敵とみなしたり上手く形成されないT細胞はその99.9%をアポトーシスで分解する――自己免疫疾患は、この過程が上手くいってない。

ウイルスに感染した時も、一部の細胞をアポトーシスで分解してウイルスの複製を防ぐ。

DNAの損傷でがんになる可能性のある細胞も、アポトーシスで除去される――P53という遺伝子が働く。

がん細胞の特徴のひとつは、アポトーシスを回避する能力を持つことである。

本来あるべき位置から移動した細胞も、自殺する。

私たち後生動物の細胞は、基本的にアポトーシスで制御されている――継続的にホルモンや神経シグナルでそれを抑制されていないと、細胞は自殺する。

―――ただ、すべての体細胞が死ぬ必要はない。

ひょろ長い腔腸動物のヒドラなどは、基本的に死なない――個々の細胞は死ぬけど、別の細胞に置き換わって全体としては老化しない。

私たちも毎日数十億個の細胞をアポトーシスで失うけど、これは有糸分裂で新しくつくられる細胞数に一致しており同じような状態を長期間維持できる――1年で失う細胞の質量は、全身の質量に近い。

成人の器官が一定のサイズを保つのは、細胞の増殖とアポトーシスの平衡による。

老化によってこのバランスは崩れると、変性疾患やがんのリスクが高くなる。

ある個体が生活していると、捕食者にたべられてしまうリスクがある程度あるだろう――台風や土砂崩れに巻き込まれたり、落雷や火災にあう可能性もある。

平均して20年ほどで何かの理由で死んでしまう可能性が高い環境であれば、それまでに子孫を残せる個体が増えやすくなる。

死んだ後の事には選択圧はかからない――平均寿命が20歳の生き物なら、50歳で変性疾患を引き起こすようなリスク遺伝子は、自然選択では排除できないことになる。

細胞分裂のときDNAの複製ミスが起こるので、高い代謝率を維持しているとがんのリスクが高まるのかもしれない――P16という遺伝子を働かなくしたマウスは若さを保つかわりにがんになりやすくなるけど、致死性の糖尿病は自力で治す。

利用できる資源は限られており、古い個体がいつまでも生き続けると新しい個体の成長を妨げるだろう――自然選択による変化の累積…進化も妨げられ、環境の変化に弱くなるだろう。

進化のために個体は死ぬ必要があったとして、老化する必要は特にないように思える――鳥類やコウモリは、大半の哺乳類に共通する加齢による疾患にはほとんど罹らない。

西ヨーロッパの人の約20%が、ApoE4遺伝子の変異型を持っている。

この遺伝子を持つ人は、心疾患や脳卒中、アルツハイマー病になるリスクが高くなる――持っていても、継続的に運動することで予防効果がある。

なぜ、この遺伝子がこれほど多く残っているのか分からない。

アルツハイマー病などの変性疾患は、高齢になると発症リスクが高まる――平均寿命が延びたのは最近で、例えば70歳になってからそのリスクを高めるような遺伝子は排除されなかったのかもしれない。

西ヨーロッパではありふれた遺伝子なので、若い頃に何か利益が得られるのかもしれない。

こうした例は数百とある――高血圧や高コレステロールなど、さまざま。

ただこうした遺伝子の統計的リスクが、すべて合わせても50%を超えることはふつうない。

老化が、最大のリスクとなっているのである――リスク遺伝子を持っていても、若い時に発症する人はごく少数である。

たけど100歳を超えてもこうした病気にならない人もいて、だけどそうした人もやがて加齢によって亡くなる――人の場合、120歳くらいが限界のようである。

人の寿命は長い方で、進化によって寿命が変わるのなら人の寿命をさらに延ばすことも可能なのだろう。

カワマスをつめたい貧栄養湖に持ち込むと、性成熟が遅くなり寿命が6年から24年以上に延びる。

島で数千年間捕食者から守られていたオポッサムは、そうでない場合に比べて老化のペースが遅く寿命が倍以上になっている。

29年前、デイヴィッド・フリードマンとトム・ジョンソンが線虫の寿命を変える遺伝子を発見した――age-1と名付けられ、この遺伝子に変異が起こると寿命が22日から46日に延びる。

その後数年間で、様々な生物で同様の発見がされた。

どの遺伝子も寿命を延ばすうえに、健康である期間も延ばす――加齢による疾患を遅らせる。

老化は生きた時間の長さではなく、生化学的な年齢によるのである。

なので、老年性疾患は老化を治すことで根本的に治療でき、老化は治せる様なのである――動物実験では、若返らせる物質がいくつか見つかっている。

これまでに発見された長寿遺伝子と呼ばれるこれらの遺伝子は、どれも変異を起こすと寿命が延びる――縮めない。

どの遺伝子も、もともとが寿命を短くする様に設定されているのである。

長寿遺伝子が制御するのは性成熟で、多くの資源とエネルギーが得られる状態であれば速く成熟して子孫を残す方が数が増えやすい。

自分の置かれた環境を知らせる化学シグナルは、インスリンとそれによって長期間作用するインスリン様成長因子…IGFなどのホルモン群――線虫でも関連するホルモンは39ある。

豊富に食べ物があると、インスリンが働き性行為に備える。

食料が少ないと性成熟は遅れ、別の経路が活性化される――再び食料が豊富になるまで生き延び、子孫を残す可能性を高める。

ある種の長寿遺伝子が変異すると、食料が乏しい時と同じ効果が出る。

人の場合、このインスリン抵抗性は糖尿病をもたらす。

豊富な食料があるのにこの経路が活性化されると、肥満や糖尿病に死のリスクが高まる――食糧難の時は、インスリン抵抗性の人が生き延びる可能性が高くなるのである。

そして同じホルモン変動が、不妊症ももたらす。

長生きするためには、空腹でいる時間を長くしなければいけない。

100年ほど前から、様々な生き物でカロリー制限が寿命を延ばすことは知られていた。

人は寿命が長いのであまり詳しく研究されていないけど、効果はありそうである――ただ、骨粗鬆症などのリスクも伴う。

空腹には耐えれたとしても、生殖と長寿を両立させるのが難しくなる。

カロリー制限をせずにその恩恵だけ得る可能性として、SIRTとTORという遺伝子の研究もされている。

これらの遺伝子は酵母から哺乳類まで様々な生物に普遍的に存在していて、寿命に影響を与えている――マウスがSIRT-1を余分に持っていると、健康ではあるけどガンになりやすくなって長生きはしない。

性成熟を抑制する長寿遺伝子もあるけど、そうでないものもある。

いくつかの変異は、寿命や健康な期間を延ばしながら性行動はやや先送りされるだけだった――若い個体では性的な発育を妨げるけど、成熟した個体ではほぼ影響を与えないような変異もあった。

解糖によってミトコンドリアがいなくても生きられる細胞は、がん化する可能性がある。

幹細胞はミトコンドリアにあまり依存しないので、がん化のリスクが高い――ミトコンドリアだけに依存する細胞は、基本的にがんにならない。

年齢と共に、ミトコンドリアからのフリーラジカル発生率があがる。

フリーラジカルは、様々な分子を攻撃する――細胞死のシグナルになるため、抗酸化物質を大量に摂取するのは逆に早死にのリスクがある。

ミトコンドリアの膜が丈夫だと、フリーラジカルの漏洩が少なくなる――カロリー制限すると、ミトコンドリアの膜が強くなってフリーラジカルの漏出が少なくなる。

鳥類とコウモリは、ミトコンドリアのフリーラジカル漏出が少ない。

田中雅嗣は、私の祖国の人のミトコンドリアDNAを調べた。

100歳を超える人の62%が、Mt5178Aという変異遺伝子を持っていた――37人が調べられた。

通常はMt5178Cで、塩基のひとつがCからAに置換されている――これによって、コードするタンパク質のアミノ酸をひとつ置換する。

私の祖国の人であれば、40~45%の人がこの変異型を持っている――他の地域で詳しく調べたものは少ないようだけど、ある研究では147人中6人しか持っておらず、5人はアジア人だった。

この遺伝子変異が、ミトコンドリアの電子伝達系の複合体I のアミノ酸をひとつ変える。

複合体I は最大のフリーラジカル発生源で、Mt5178A遺伝子はごく僅かにフリーラジカルの漏出を抑える。

50歳くらいまで、変異した人とそうでない人の差はあまり出ない。

ただ80歳になる頃には、老年性疾患のリスクが半分になる――通常タイプの人は、変異タイプの人に比べて何らかの疾患で病院を訪ねる可能性が2倍になる。

私の祖国では半数近くの人が変異型を持っており、健康で長生きできる可能性が高いのである――そうでなかったとしても、定期的な運動がその可能性を高めてくれるだろう。

長距離を走るアスリートが多く持つミトコンドリアDNAの変異もある――私の祖国の人の場合、平均して6%ほどがその変異を持っている。

老化のメカニズムの解明には、多くの予算と労力がつぎ込まれている。

寿命を延ばすよりも、健康である期間を長くする方が簡単なのではないかと思われる。

若返ることで老年性疾患を回復させてしまう方法の発見は、もう、そう遠くないと思う。

簡単ではないかもしれないけど、いずれ人は寿命を克服するかもしれない―――

           トコ

                         ガチャ

荷台の入り口の枠台車に、傘やレインコートを引っ掛けてある。

ゲイターも。

今はいらない。

                                             ァァァァァァ   ・・・・・

               カタン

    

トラックと中型のミニバスをL字にとめてある。

ガードさんが上手に後進させてトラックを中に入れた。

家部分と荷台は、やや角度がある。

トラックの屋根を使って、巨大タープを張った。

30m×15mのもので、反対側は倒れた巨木の枝とか立っている木の幹を利用した。

だからつくったスペースの大半は、雨を防げる。

十字の通路テントも張っていて、中で食事したりできる。

荷台とミニバスとトラックの家部分は、グランドシートをつなげて通路をつくった。

さらにマットも用意して、それぞれが土などで汚れるのをなるべく防ぐ。

枠付きグランドシートも真ん中あたりに広げていて、そこにテーブルやイスを置いてる。

     

「マロックさん、パンたべますか?」

ノロマさんが、トレイを持って出て来た。

「・・・うん」

お腹すいている。

夜ごはんの前に、パンを焼いてくれたみたい。

「ひとり1枚ですよ」

「うん」

        ――

もらう。

「いただきます」

「はい」

細長くて薄めのパン。

上に、フワフワのタマゴとこんがりベーコンがのってる。

             パク

かじる。

                         モグ  モグ

トマトソースで、おいしい。

「どうですか?」

ノロマさんがみてる。

「・・・おいしいよ」

「♪」

ノロマさんが笑ってる。

「チーズ入ってるんですよ」

え・・・

そう言われれば、そんな味もする。

チーズは好きじゃないけど、ピザは好き。

「ピザみたいだからね・・・」

「大丈夫だと思ってました」

おいしい。

        

枠シートに向かう。

                     ―――

          ・・・

カールさんが、レースドローンに小さなパーツを付けている。

3Dプリンターで作ったもので、あれに中継器を固定する。

大型ドローンは、荷物の運搬に使う。

予備バッテリーで2回飛行できるけど、重い箱を持たせると飛行時間は限られる。

「焼けたよ」

「ありがとう」

カールさんとマリオットさんも、パンをとる。

               モグ  モグ

                         

ノロマさんは去った。

パンを配っているみたい。

       モグ

私もたべる。

「・・・これチーズ入ってるよ」

「うん」

「平気なの?」

「うん」

「本当にチーズ嫌いなの?」

「うん」

        

私は去る。

りんごジュースを持ってくる。

シート通路の上を歩く。

マッチョさんとノッポさんとレトリバーは、周囲の様子を見に行ってる。

熊やピューマがいるかもしれない。

だから今夜も、交代で見張りはする。

天然橋の向こうは、もう湖のようになっていた。

水が引くまで、ここに泊まることになるかもしれない。

「・・・」

黒猫がいる。

リフも一緒で、もうパンはたべた様。

トマトソースがほほについてる。

タープには雨があたる。

端っこからは、集まったのがボタボタ落ちてる。

いい音だと思う・・・・

                  ――   ・・・・

                                     ザァァァァァァ   ・・・・・

                                ポ  ポォ

                                                   ゥゥゥゥ  ―――


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