森を出る

2017年08月20日 13時12分48秒 | マーロックの日記

                            チチ

                                               ザヮヮヮヮ   ・・・・・

          ソョョ

「もう近い・・・」

「うん」

タブレットに、水の引いた荒野を走ってくる車。

「・・・きっと保安官ですよ」

ピックアップトラックの上に、ライトバーがついてる。

「様子を見に来てくれたんだ」

「あのまま小屋に行けば、危ないな」

「はい」

「先に合流しよう」

「うん」

           ジャリ

まだ湿った地面を歩いて行く。

6輪駆動車で、狩猟小屋の下の辺りまで来た。

このままここを通過して、もっと先まで行ってから荒野に出れればそれが安全だった。

ただ、道をふさがれている。

倒木や土嚢を積んで、車が進めないようにされている。

雨で荒野が湖になっている間に、小屋の連中はこれをつくっていたらしい。

私たちが知らないうちに通過するのを防ぐためだろう。

見張りはいない。

時間をかければ、どけて進める。

ただ、保安官事務所の車がこっちに向かって来ている。

       

「ドローンは見つかってない?」

「たぶん」

カールさんが飛ばしていたレースドローンが戻って来た。

森の中だから、ただ上に飛ばしていただけ。

「行こう」

「うん」

ノッポさんが空中で取って、カールさんに渡した。

小さくて軽いドローン。

そして速い。

       ジャリ

小屋のある方、斜面を上る。

保安官との合流を目指す。

大タープの方を攻撃している連中は、まだこっちには戻ってきてはいない。

何度か、ドローンで確認した。

たぶん、私たちがこっちに来ているのは気付いてないと思う。

私たちがドローンで撮影した以外にいなければ、狩猟小屋には多くて7人いるはずである。

保安官たちは、この状況を知らない。

あの車だと、数人できているだけだろう。

急がないと、彼らが危ないかもしれない。

              ガササ

    ジャリ

大きな溝がある。

小屋の連中がつくった土嚢は、ここの土をつかった様。

斜面の上の方まで続いてる。

     

私たちは、その横を歩いて行く。

ノッポさんはショットガンを持ってきた。

ライフルは持って来ていない。

「・・・・」

この溝を斜面の上から通過すれば、小屋の方に出ずに先に行けるかもしれない。

ある程度車で上って来たから、戻って車で行く選択もある。

ただ小屋の連中が警戒していたら、バレやすいだろう。

一気に走り抜けれるかもしれないけど、撃たれて危険もあるかもしれない。

舗装された道ではないし、そんなに勢いよく走ることもできない。

私たちが大タープの裏でやったように、木の陰に隠れている可能性もある。

「・・・・」

            ソョョ

                             ピチュチュ ♪

周囲を十分に警戒しながら、急ぐ。

保安官の車は、もう小屋に迫っている。

ポールさんと私が、先頭を歩く。

もし誰か潜んでいたら、まず私たち2人が狙われる可能性が高い。

そうなっても、後ろにいるノッポさんが反撃できる。

ポールさんはボディアーマーを着ている様だけど、私は普通の服。

銃口がみえたら、とにかく跳ねよう。

カールさんを真ん中に、後ろには拳銃を構えたプルームさん。

彼女もボディアーマーを着ているけど、軽量でライフルの弾は防げない様。

   ジャリ

空は良く晴れていて、森の中も十分に明るい。

                                              ザヮヮヮヮヮ   ・・・・・

風はつめたい。

のんびり樹冠を見上げない。

                 チチチ

小鳥もジッとみない。

耳は澄ませる。

                                            ロロロ   ・・・・

エンジン音。

保安官たちの車だろう。

「小屋だ」

「はい」

木の向こう、狩猟小屋が見える。

最初に私たちが来た時と、変わらない。

トラックが1台に、バイクも2台見える。

フェルトたちも戻っていると思うけど、バギーは見えない。

「・・・小屋だ」

「うん」

斜面を上り切った。

「2人いる・・・」

ポールさんが、手で隠れるように促した。

カールさんが、私と同じ木の陰に来た。

トラックの陰、2人いる。

ライフルを持ってる。

「・・・・」

もう一人いた。

ピックアップトラックはもう動いていない。

                               チュン

保安官だ。

カウボーイハットを被っているから、すぐ分かった。

もう一人いる。

プルームさんと同じで、助手だろう。

「・・・・」

あの3人、保安官たちを狙ってるらしい。

「こっちに注意を引く、隠れてろ」

「はい」

      ジャリ

拳銃を持ったポールさんが、私たちから離れた。

他にもいるかもしれないから、辺りを見る。

フェルトはいない。

                                      パァン

――ポールさんが発砲した。

                      

                      

3人がこっち見た。

                         タッ

「!」

プルームさんが森の中を走る。

「保安官、気を付けて――」

大声で叫んだ。

                  

                                     パァン

                              パァン

                                                  パァン

銃声・・・

              ―――

「?」

ライフルを持った3人が、それを落として腕を押さえてる。

「・・・撃たれてるの?」

助手がライフルを向けながら、3人が落としたライフルを蹴飛ばしてる。

「保安官」

プルームさんが呼んだ。

ポールさんが駆けていく。

「ここに残って」

「分かった」

ノッポさんに頼む。

まだ他にいるかもしれない。

ノッポさんに警戒してもらう。

私もあの3人を捕まえに行く。

「どうやったの?」

戻って来たプルームさんに、カールさんが聞いた。

「保安官は、凄腕のガンマンなんです」

「・・・・」

銃声の時、保安官の腕は腰の辺りで拳銃を構えていた。

もう片方の手は、撃鉄の辺り。

すばやく引いて、連続で撃ったらしい。

あの構えで、陰からライフルを持って出て来た連中の腕を正確に撃ったらしい。

「すごい・・・」

「はい」

あのカウボーイハットは、伊達じゃなかったらしい。

       タッ

                     

私たちが森から出ると、保安官も気付いた。

こっちに手を振った・・・・

            

                                              ヮヮヮヮヮ   ・・・・・・

                         ピピ


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