イケメン王宮のイベント、「Love Holic」
ジル編の第1話です
以下ネタバレ
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やわらかな陽の光が窓から差し込む朝…―。
(すごく素敵なドレス……)
仕立て上がったばかりのドレスを当てて鏡の前に立っていると、扉の開く音がする。
ジル「とてもよくお似合いですよ、プリンセス」
「ジル」
振りむいた私の目に、優しい微笑みを浮かべたジルの姿が映り、
私は嬉しさに頬を綻ばせる。
「こんな時間にどうしたのですか?」
瞳を覗き込んで尋ねると、ジルは私の腰にそっと手を回した。
ジル「メイドの体調が悪いようでしたので、代わりに身支度のお手伝いに参りました」
ジル「コルセットを締めて差し上げましょう」
ジルの長い指がまだ緩んだままのコルセットのリボンを探りはじめ、
私は慌ててその指を握る。
「いえ、そんな…自分でできますから」
(ジルに準備をしてもらうなんて、申し訳ない……)
そんな私の手をたしなめるように握り返すと、ジルは微かに目を細めた。
ジル「感心しませんね。プリンセスがドレスの着脱を自分で行うなど」
ジル「それに、急がなければ、ガーデンパーティーが始まってしまいますよ」
(何だかすごく恥ずかしい)
ジルの言葉に押し切られて身支度を手伝ってもらうことになると、
恥ずかしさから視線を上げることが出来ず、私はじっと靴のつま先を見つめる。
ジル「あとはリボンを結ぶだけですが……」
俯いたままの私の後ろから、ジルの声が聞こえる。
ジル「貴女はなぜずっと俯いているのですか?」
その吐息が私の耳に触れるほど近づき、やがて私のうなじにジルの唇がそっと触れた。
「……っ」
驚きに肩を小さく震わせ、私はとっさに後ろを振り向く。
「それは、ジルが……」
ジルの瞳を覗き込んでしまい、振り向きざまに言いかけた言葉が途切れる。
(ジルが、そんなことをするから…)
自分でもそうと分かるほどに頬が染まり、私は慌てて瞳を伏せた。
ジル「そのように恥ずかしそうな顔を見せるのは、私の前だけにしてくださいね」
優しく微笑むジルに胸が甘く高鳴り、私はその言葉に応える事が出来ない。
沈黙の中ドレスのリボンを結び終えると、ジルは私の顎をそっと持ち上げた。
ジル「本日のガーデンパーティーでは、皆、美しい貴女に目を奪われるでしょう」
ジル「その支度をしたのが私だというのは、大変誇らしい気持ちです」
その言葉に再び頬を染めると、ジルが私の首元をそっと指で辿る。
「……っ」
ジル「それに、こうして困るカレンもなかなか可愛いですよ」
恥じらいに何度も瞳を瞬かせる私に、ジルはにっこりと微笑みかけた。
「もうっ……ジル!」
ジル「冗談ですよ」
ジル「それでは参りましょうか」
何事もなかったかのように扉を開けると、ジルは私に左腕を差し出した。
ジルのエスコートでガーデンパーティーの会場へと足を踏み入れると、
暖かな日差しの下、たくさんの人々が談笑している。
(はじめて会う人も多いみたい)
視線をいっせいに受けて、私はそっとジルの顔を見上げる。
ジル「来賓の方々には私はご挨拶をして参りましょう。こちらで少々お待ちください」
そんな私を気遣い、ジルが優しく微笑みかける。
離れていくジルの後ろ姿を見送りながら、私は暖かな春の風を感じていた。
???「こんにちは、プリンセス」
そんなとき、突然見憶えのない男性に声を掛けられる。
(この方はどなただろう…?)
不思議に思いながらも、ジルに教えられた通りに礼儀正しく微笑むと、
男性は私の手をとってうやうやしく口付けをした。
???「噂通り可愛らしいプリンセスだ」
にっこり笑う男性の顔は何故だかとても嬉しそうで、私は瞳を瞬かせる。
???「カレン様、とお呼びしても?」
「えっと……」
(手を離してくれない…)
ジル「プリンセス」
戻ってきたジルの声に私はほっと息をつき、
すがるようにジルの瞳を見つめた。
ジル「これはレノックス侯爵、ご無沙汰しております」
「レノックス……侯爵?」
レノックス「失礼、ご挨拶がまだでしたね。ヴィンセント=レノックスです」
レノックス「プリンセスのあまりの美しさに、礼儀を忘れてしまっていたようです」
そう言って私の瞳を覗き込む侯爵の視線は熱を帯びていて、
私は戸惑い、頬を染めた。
「そんな……」
ジル「……プリンセス、あちらでハワード公爵が」
ジル「失礼、侯爵。お手をお離し頂けますでしょうか」
礼儀正しく礼をするジルの声はどこか怒っているように聞こえ、
侯爵に手を離してもらった私は、そっとジルの顔を覗き込んだ。
「ルイが来てるって……」
誰もいないバルコニーに来ると、私はルイの姿を探して辺りを見回す。
「ジル……?」
ゆっくりと壁際に追い詰められて首を傾げると、
ジルが私の頭の横に手をついた。
ジル「ハワード卿が呼んでいるとは、嘘ですよ」
ジル「お教えした事を、貴女は何故忘れてしまわれるのですか?」
ジル「名乗った後ならばまだしも、見知らぬ男に、手に口づけを許すなど……」
ジル「パーティーの前に念を押したことも無駄だったのでしょうか?」
ジルの言葉に、ドレスを着替えさせてくれた時の事が思い出された。
―ジル「そのように恥ずかしそうな顔を見せるのは、私の前だけにしてくださいね」
(あ……)
「ごめんなさい、すごく自然な動作だったので、つい……」
ジル「お忘れないように。貴女は、プリンセスなのです……私の大切な」
私の瞳を覗き込むジルの顔が近付き、やがて、優しく唇を奪われた。
ジル「それにしても今日の貴女は、いつにも増して視線を集めすぎる」
愛おしげに私を見つめるジルに、私の胸が甘く締め付けられる。
「私は……ジルに見て頂けたらそれで……」
ジル「でしたら……もういっそ脱がしてしまいましょうか」
私の言葉に満足そうに微笑むと、
ジルはドレスの肩ひもをずらし、そっとキスを落とした。
「……っ」
(もしかして、ヤキモチを焼いてくれたのかな……?)
ジルの腕の中に抱きすくめられ、私は甘い想像に胸を高鳴らせた…―。
パーティーが終わった後、自室に戻ろうとするジルのもとに官僚がやってくる。
官僚1「侯爵は、プリンセスに大変興味をもたれたようです」
官僚2「レノックス侯爵家は、我が国屈指の伝統を誇る家。侯爵は次期国王に相応しい」
ジル「……しかし、プリンセスはご興味がないようでしたが」
官僚1「興味を持っていただくようにするのも貴殿の役目であろう」
官僚2「事は国事。個人の感情に流されて良いものではない」
言い捨て去っていく官僚の後ろ姿を見つめ、ジルは微かに目を細めた。
(今日のパーティー、素敵だったな……それに……)
部屋で一息つくと、ジルの言葉が頭をよぎる。
―ジル「皆、美しい貴女に目を奪われるでしょう」
(褒めてもらえて、すごくうれしかった……)
一人頬を染めていると、扉が叩かれた。
ジル「失礼致します、プリンセス」
「ジル」
嬉しさに顔を綻ばせ、私はジルのもとへと走り寄る。
「ちょうど紅茶が入ったところです。よかったらジルも……」
私の言葉を遮って、ジルが口を開く。
ジル「明日の予定を変更致しました。レノックス侯爵と、城下へお出ましいただきます」
「え……」
ジル「こちらが、侯爵のプロフィールです。侯爵のお好きなオペラの資料はこちらに」
ジル「明日までにすべて覚えておいてください」
「ジル……?」
ジル「それから、明日のお衣裳はこちらに。貴女の肌に良く映えるでしょう」
(どうして、そんな事言うの……?)
ジル「侯爵は……とても誠実な方だそうですよ」
言い終えると、ジルは辛そうに瞳を閉じた。
(何か訳があって言っているのかもしれない……)
(ジルを、困らせたくない)
瞳に力を込めると、私は明るく聞こえるように注意して声を出す。
「分かりました」
「久しぶりに子供たちにも会えるかもしれないですし、行ってきますね」
にっこりと微笑むと、私はジルに背を向けた…―。
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つづきます
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