とても前なのでタイトルとか覚えていないやつ、
アルバート編の2話目です
-----------------------
公務を終えた夜…―。
私は廊下を歩いていると、バルコニーに人影を見つけた。
(あれは……)
そのままバルコニーまで来ると、そこには思い描いた人の姿があった。
「アルバー…」
声をかけようとして、私はアルバートの表情に思わず息をのむ。
アルバート「………」
(とてもじゃないけど…声なんて掛けられない……)
月を見つめるアルバートの顔がどこか苦しそうで、胸が軋んだ。
すると、気配に気がついたのかアルバートが振り返る。
アルバート「なんですか、こんな時間に」
「いえ…たまたま見かけたので」
アルバート「そうですか。では、私はこれで失礼致します」
(アルバートの表情…どこか苦しそうだった)
私は先ほどのことを思い返すと、思い切って声をかける。
「あの……」
アルバート「なんでしょうか」
「何か悩み事があるのでしたら言ってください」
「私、聞くことだけは得意なんです」
にっこりと笑顔を見せると、アルバートは息をつく。
アルバート「まったく…プリンセスとは思えない発言ですね」
アルバート「こんな時間に出歩くのは、あまりよくないですよ。では」
軽くお辞儀をして、アルバートはそのまま行ってしまう。
(アルバート、苦しそうに見えたけど……気のせいなのかな…)
すれ違うアルバートの背中を見送りながら、私は小さく息をついた。
部屋に戻ってきたアルバートは扉を閉めると、眉を寄せた。
アルバート「……おかしい」
プリンセスの笑顔が過り、鼓動が痛いほど騒いでいる。
アルバート「…プリンセスを見ると、胸が苦しくなる」
息をつき、気持ちを切り替えるようにメガネをはずした…。
次の日…―。
勉強のための本を探しに書斎に行くと、そこにアルバートがいた。
「アルバートさん…?」
私の声に、アルバートが本から私へと視線を移す。
アルバート「ああ、あなたですか」
それだけ言い、また本を読み始めるアルバートに私は口をつぐんだ。
(あまり話しかけない方がいいのかな…?)
すると、アルバートが息をつきながらちらりと私を見る。
アルバート「…座ったらどうですか?本を読みに来たんでしょうから」
「ありがとうございます…」
私は椅子に腰かけると、アルバートの読んでいた本に目を瞬かせた。
「ウィスタリアの歴史について…調べているのですか?」
アルバート「こうして公務を休んでいる間でも、何か出来ることはあるはずですからね」
アルバート「ウィスタリアとの今後の交流にも役に立つ」
「努力家なんですね」
(そういうところは前から変わらないな…)
微笑むと、アルバートはメガネを指で押し上げる。
アルバート「…褒めてもプリンセスとは認めませんよ」
「わかってます」
(恋人になる前も、こんなやりとりしていたっけ)
そんなことを思っていると、ふと思いつく。
(そうだ……)
「あの…」
アルバート「なんですか」
「もしよろしければ、次の休日にウィスタリアを案内させてください」
「本を読むより、城下のことがわかると思いますし…」
アルバート「………」
何も答えないアルバートに私は慌てて言う。
(もしかして、困らせてしまった…?)
「…迷惑…でしたよね」
「もしもの話だったので気にしないでください」
小さく笑って、書棚に向かおうとすると…。
アルバート「待ってください」
私はアルバートに呼び止められて振り返る。
アルバートは咳払いをすると、口を開いた。
アルバート「…今後のために、案内してください」
(うそ……)
アルバートはそれだけ言い残し、本を脇に抱えて立ち去っていく。
アルバート「では、また後ほど」
「わかりました」
嬉しくて、少しはしゃいだ声で答えると、
私は心がふっと軽くなるのを感じた。
(恋人同士になる前も、ウィスタリアの案内をしたりしていたし)
(もしかして記憶を取り戻すキッカケになるかもしれない)
私は小さな期待を胸に潜ませながら、閉まる扉を見つめた…―。
そうして、迎えた休日…―。
私とアルバートは待ち合わせをして、城下に向かうことになった。
アルバート「……」
約束の時間前に着いたのに、すでにアルバートは門の前に立っている。
胸の中で鼓動が跳ねて、わずかに頬が熱くなる。
「お待たせしました」
アルバートは私に気がつくと、咳払いをした。
アルバート「さっさと案内してください」
「はい…では、行きましょう」
(なんだか、初めてのデートみたいだな)
素っ気ない態度のアルバートに、くすっと微笑んで私は歩き出した。
市場に着くと、私は屋台で買ったフレッシュジュースを渡す。
「こちらが市場ですが、果実のジュースがおいしいんですよ」
アルバート「…なるほど」
アルバートは興味深そうに頷き、ジュースを飲んでいる。
すると……
アルバート「あなたも飲んでみてはいかがですか」
一口飲んで目を細めたアルバートは、そのジュースを私に差し出した。
「えっ……」
(これじゃあ…間接キスなんじゃ……)
思いがけない行動に、頬が火照ってしまう。
すると、そんな私に気付いたアルバートが気まずそうに目を逸らした。
アルバート「こ、これは決してそういう意味では……」
アルバートは口をつぐみ、気を取り直すように咳払いをする。
アルバート「次に案内してください」
「は、はい…」
私は答えながらも、跳ねる鼓動に眉を寄せる。
(どうしよう…なんだか変な空気になってきちゃった)
次に私は、町の景色が良く見える高台にアルバートを案内した。
「ここから、ウィスタリアが見えます」
風になびく髪を押さえながら、広がる風景に目を細める。
アルバート「これは…素晴らしいですね」
アルバートの声に、ふと私は視線を向けた。
(…アルバート)
短い髪を風に揺らし、目を細めるアルバートの姿に、私は目が離せなくなる。
(前にもアルバートとこの景色を見たことがあったっけ。確か、あの時は……)
―あれは、恋人同士になってから城下に出かけた日のこと…
アルバート「綺麗だ…」
「私もそう思います。本当に綺麗な景色…」
町が一望できる高台で微笑むと、ぎこちない咳払いが聞こえた。
アルバート「…違います」
「え?」
アルバート「今、褒めたのはこれです」
アルバートの手が伸びて、髪に触れる。
アルバート「あなたによく似合っている」
(景色じゃなくて…髪飾りを褒めてくれるなんて)―
(あの時、嬉しかったな)
小さく思い出し笑いをしてしまうと……。
アルバート「プリンセス」
アルバートはメガネを押し上げると、真っすぐに私を見つめた。
アルバート「その…よく似合っています。ピアス」
アルバートの言葉に、私ははっと瞳を揺らす。
(あの時は髪飾りだったけど…同じ状況…)
思わず耳元に触れると、蝶のピアスが揺れる。
そんな私の様子に気がついたのか、アルバートが尋ねてきた。
アルバート「…何か?」
「いえ、ありがとうございます」
(どうしてだろう…嬉しいはずなのに…)
恋人同士だった時の思い出と重なって、胸に切なさが込み上げる。
(アルバートの記憶に私がいないことが、つらい…)
瞼が熱くなって、涙が滲みそうになったその時…。
「あ……」
頭上から、ざあっと雨が降ってくる。
見上げていると、アルバートが私に声をかけた。
アルバート「そこで雨宿りをしましょう」
「濡れてしまいましたね」
アルバート「ええ。大丈夫ですか?」
アルバートが気にするようにそばに近づいた瞬間、耳に刺さるような雷の音が鳴った。
「……!」
思わず、目の前にいたアルバートに抱きついてしまう。
そのままの勢いで、私たちは床に倒れ込んだ。
アルバート「……なっ!」
アルバートに覆いかぶさってしまった私は、慌てて謝る。
「す、すみません…」
そうして身体を離そうとした、その時…
(え…?)
アルバートが優しく私の頭を自分の胸元に引き寄せた。
私の鼓動が、加速していく。
アルバート「このままでいますから」
アルバート「あなたは怖がらなくていい」
----------------------
つづく
無課金派の私も利用しているアバターが買えたり、
ガチャメダルを増やせたり、アフターストーリーが読める裏技!
↓↓↓
イケメン王宮★裏ワザ1
↑現在登録するだけで150ポイント(150円)もらえます!
イケメン王宮★裏ワザ2
イケメン王宮★裏ワザ3
↑毎日ポイントがもらえて貯めやすいです!