イケメン王宮のイベント、「Love Holic」
アルバート編の第3話です
以下ネタバレ
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部屋のベッドには、なぜかアルバートが腰掛けている。
私はドアを開けたまま、しばらく呆気にとられてしまった。
「……あ、あれ?」
ふと我に返って、驚いてきょろきょろ部屋の中を見回す。
(まさか、私…)
アルバート「部屋を間違えるとは…呆れましたね」
アルバートが、目を細めて私を見つめながらそう言った。
(やっぱり……!)
「ご、ごめんなさい!」
私は顔を伏せて、慌てて部屋を出て行こうとした。
アルバート「…待ってください」
しかし、身を翻した私を不意にアルバートが呼び止める。
(え…?)
振り返ると、アルバートは困ったような顔をして、頭をかいていた。
アルバート「…あの、せっかくなので、少し話をしていきませんか」
アルバート「さっきは俺がすぐに部屋へ下がってしまったので…」
アルバートは少し照れたような様子でそう言った。
アルバート「あまり顔を合わせる機会もないことですし…」
(アルバート…)
私は嬉しくなって、思わず笑顔で頷いた。
部屋の中へ招かれて、ソファに腰掛けると、
アルバートは少し落ち着かない様子でそわそわしている。
アルバート「そうだ、酔い覚ましに紅茶でも…」
アルバートは、不意にそう言って立ち上がりかけたけれど、
少しふらついて、身体がよろめいてしまった。
「あっ……」
私は咄嗟に、アルバートを支える。
「大丈夫ですか…?」
アルバート「…すみません」
アルバートは体勢を整えると、私からぱっと離れた。
「いえ…」
アルバート「大丈夫、酔ってほんの少し頭痛がするだけです」
アルバートは、軽くこめかみを抑えている。
(アルバート、心配だな…)
(私そういえば…、薬を持っていたはず…)
「ちょっと待っててください」
アルバート「……?」
私はそう行って、傍らの自分のかばんを引き寄せた。
「私、頭痛に効く薬を持っているんです」
「それを飲めば、たぶん…」
私はかばんの中からポーチを取りだした。
アルバート「いえ、俺のことなど気遣う必要は…」
アルバートはそう言って、眉をひそめている。
「いいから、アルバートは座っていてください」
アルバートは少し困った顔をしていたけれど、
私が手を引くと、言われるままにソファに腰を下ろした。
アルバート「…お節介なプリンセスがいたものですね」
そう言いつつ、アルバートの目尻は少し緩んでいる。
「たしか、この中に…」
私は入っている化粧道具をいくつかとり出して選り分けると、
ポーチの底に薬を見つけた。
「…ありました、どうぞ」
私はアルバートに薬を手渡した。
アルバート「すみません」
アルバートは素直に薬を受け取ると、
ふと、私がテーブルに並べたメイクブラシを見つめた。
「…どうしました?」
アルバートの視線が気になって、私は尋ねた。
アルバート「いや…その筆のようなものは何に使うのかと…」
アルバートの視線の先には、私のメイクブラシがあった。
「…ああ、これはこうやって使うんです」
私は立ち上がると、メイクブラシを片手に持って、
アルバートの頬をささっと払った。
アルバート「……?」
アルバートは何が起こったか分からないようで、
されるままに、きょとんとしている。
「お化粧道具です」
アルバート「なるほど…」
アルバートは妙に感心したように頷いている。
その頬がうっすらピンク色に染まっているのをみて、
私はついくすっと笑ってしまった。
(ちょっと可愛いかも……)
そして、アルバートは立ち上がると、
水差しから水をグラスに注いで、私があげた薬を飲んだ…―。
しばらくして……。
カーテンの隙間から差し込むまぶしい光に、
アルバートはふと目を覚ました。
アルバート「……朝?」
ぼんやりとして少し頭が重いが、頭痛はしないようだった。
アルバート「いったい、昨夜は……」
昨晩の記憶が曖昧で、思わず頭を振る。
アルバートはふと顔に手をやると、眼鏡をしていなかった。
アルバート「……」
傍らを見ると、枕元に眼鏡がきちんと置いてある。
そして、部屋を見渡すと……。
アルバート「………!?」
部屋のソファには、プリンセスが丸くなって眠っていた。
アルバート「……な」
アルバート「なぜプリンセスが……?」
―ジル「パーティーで酔って、間違えてプリンセスに…」
―ジル「なんてことはやめてくださいよ」
アルバート「まさか……!?」
思わず、アルバートはベッドで頭を抱えた。
アルバート「昨夜、俺は……確か……」
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ここで分岐です