黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

政略結婚と近親婚

2007-08-06 22:17:04 | 歴史
 先日、知人に紹介されたとんでもない悪女に引っかかりそうになりました。もっとも、幸いにも頭の悪い「悪女」だったので金銭的な被害はほとんど受けずに済みましたが、この数日間かなりの精神的ショックが続きました。たぶん、黒猫はしばらく人間不信に陥ると思います。
 知人・友人に異性を紹介するときは、みなさん十分に注意しましょうね。変な人を紹介してしまうと、下手をすればそれまでの知人・友人関係まで台無しにしてしまうこともありますから。

 司法関係の記事ばかり書いていると憂鬱なブログになっていく一方なので、今回は大河ドラマ関係の話にします。
 前回の『風林火山』では、武田晴信が信濃守護・小笠原長時を逐って南信濃を手に入れる一方、駿府の今川義元に嫁いだ晴信の姉(定恵院)が病死したため、今川氏に対する代わりの人質をどうするかという話になっていました。
 史実の結論を先取りしてしまうと、晴信の娘が今川家に嫁ぐことはなく、代わりに今川義元の娘が晴信の嫡男・義信に嫁ぎ、晴信の長女が北条氏康の嫡男・氏政に嫁ぎ、北条氏康の娘が今川義元の嫡男・氏真に嫁ぐことで、史上名高い甲相駿三国同盟(善徳寺の会盟)が成立するわけですが、今川義元の娘は武田晴信の姉が産んだ娘ですから、その娘と武田義信とはいとこ同士の関係にあります。
 これは戦国時代に限った話ではないでしょうが、政略結婚はどうしても近親婚が多くなる傾向にあるようで、戦国大名の中には、近親婚を繰り返している例が結構見られます。

 ドラマには登場していないようですが、武田親族衆の穴山信友には、武田信虎の娘・南松院が嫁いでおり、その間に生まれた穴山信君(梅雪。武田氏の滅亡直前に徳川方へ寝返ったことで有名)には、武田晴信の次女・見松院が嫁いでいます。これもいとこ同士の結婚ですね。
 関東の北条家はもっと近親婚が多くて、北条氏綱の娘を娶り北条一門となった地黄八幡・北条綱成の子である北条氏繁には、北条氏康の娘が嫁いでおり、古河公方足利晴氏と北条氏綱との間に生まれた足利義氏にも、氏康の娘が嫁いでいます。
 また、岩付城主・太田氏資には北条氏康の娘が嫁いでおり、その間に生まれた娘・小少将は北条氏房(北条氏政の三男で、太田氏を継いだ)に嫁いでいますから、これらもよく見るといとこ同士の結婚です。
 もっとすごいのは、北条氏康の四男・氏規に北条氏綱の娘が嫁いでいること。これって、叔母と甥との結婚ですよ。なお、二人の間に生まれた北条氏盛は初代河内狭山藩主になっていますが、数え年32歳の若さで亡くなっています。
 戦国時代における3親等での結婚例は、これ以外には長宗我部信親の娘と信親の弟・盛親の結婚くらいしか見当たりませんが、いとこ同士の結婚は枚挙に暇がないほど多いので、少なくともこの時代には、いとこ同士の結婚までは可という規範が既に日本人の間には根付いていたのでしょうね。
 なお、江戸時代になると、大名が家格を高めるため公家の娘などを正室とする例はよく見られますが、実際には正室との間には子ができず、家督は側室の子が継いでいるという例が多いために、かえっていとこ同士での結婚例は探しにくいです。

 では、いとこ同士の結婚の結末がどうなっているかを見ると、まず穴山信君は本能寺の変の混乱のさなか、42歳で土民の手によって殺されると、残された嫡男・勝千代はその後16歳で病死し、穴山家は断絶しています。
 武田義信は、妻との夫婦仲は良かったようですが、その後父・信玄の駿河侵攻に反対して謀反を企て、30歳で自刃させられています(病死説もあります)。子はいなかったようなので、遺伝的に問題があったかどうかは検証できません。
 北条氏繁の長男・氏舜は早くに亡くなったようですが、その跡を継いだ次男・氏勝は北条家滅亡後も徳川家康に仕え、53歳で亡くなっているので、当時としてはましな方でしょう。
 足利義氏には男子がおらず、その娘は御弓公方の末裔・足利頼氏を婿に迎えて喜連川家を興し、47歳で亡くなっています。
 北条(太田)氏房は、北条家滅亡後肥前・唐津の寺沢家に預けられ、どうやら28歳で亡くなったようであり、子がいるかどうかは分かりません。
 他家の例も補充すると、前田利家とまつはいとこ同士の結婚ですが(まつの母が利家の母の姉にあたります)、その子・前田利長には男子がなく、結局前田家は利家の側室の子である前田利常が継いでいます。浅井長政の次女・初は、いとこの京極高次に嫁いでいますが、その嫡子・忠高は、どうやら初の子ではないようです。
 いとこ同士の結婚で成功した例としては、長尾政景と上杉謙信の姉・仙桃院との結婚でしょうか。2人の間には、後に上杉謙信の跡継ぎとなる上杉景勝が生まれています。
 もっとも、長尾政景の属する上田長尾家の系譜については、政景と上杉謙信やその姉をいとこ同士とするものもあれば、遠縁の一族に過ぎないとするものもあり、前者は後に上杉謙信の養子となった上杉景勝が、御館の乱と言われる内乱を経て上杉家の家督を継いだ関係で、自分の家督相続の正統性を誇示するために家系図をいじったという可能性もなくはないため、100%いとこ同士の結婚と断定できるわけではありませんが。

 現代のわが国では、政略でのいとこ同士の結婚はあまり多くないかもしれませんが、いとこ同士の結婚の可否については、戦国武将たちの例はあまり明確な答えを出してくれそうにありません。いとこに意中の人がいる場合、いとこ同士の結婚でうまくいった例を挙げるなら、やはり聖徳太子が一番でしょうか。 

15 コメント

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Unknown (58期です。)
2007-08-07 19:27:22
不謹慎ながら微笑してしまいました。

私の同期の連中が最近結婚ラッシュでして、その傾向をみると、①司法試験受験期からお付き合いしていた方との結婚、②修習中に同期内で出会った方との結婚、のいずれかです。

黒猫先生のようなパターンは、この職業の性質上、難しいようですね。外でいい出会いを期待するのが難しい、という意味です。

また、私の事務所の先輩の場合、同事務所内の秘書さんとの結婚、というパターンが多いです。

黒猫先生に良き出会いがあることをお祈り申し上げます。
Unknown (現在修習中(旧))
2007-08-08 21:04:23
やはりこの職業は良き女性とめぐり合う可能性の低い職業なようですね。
今修習中なので、コンパをする機会が多いですが相手ははっきり言って修習生だとわかってコンパに来るような女性ですし、内面的に魅力的な女性が来る確率は低いといわざるをえません。
知り合いの弁護士の先生方には必ずといっていいほど「修習中に見つけないと見つからないよ。」と言われますし、勉強も頑張りつつ女性も探すようにしてるんですが、なかなか・・w

何も知らない人は、「まだ若いし、弁護士になるんだから何の心配もないでしょう。」っていいますがねww
渉外弁護士になる予定なので正直修習中に見つからなかったら生涯独身でもいいやと思いつつあります。実務に入ったら忙しすぎて女性どころではないでしょうね・・。

黒猫先生にはなんとか幸せになってほしいものですw
Unknown (黒猫)
2007-08-10 03:55:24
 黒猫の同期では、修習期間中に結婚した人が多いですが、弁護士になってからの結婚した人は、ほとんど相手は事務員さんだったような気がします。
 あと、独身率も結構高いでしょうね。委員会の先輩には、40代後半になってもまだ独身という先生もいましたし。
Unknown (みなこ)
2007-08-12 13:25:20
現在渉外弁護士の彼と付き合ってるのですが、
留学したらみんな彼についていくのでしょうか?
また秘書との結婚が多いというのは彼女がいても、会う時間がなく秘書といる時間の方が長いから自然とそうなってしまうんでしょうか?
Unknown (現在修習中(旧))
2007-08-12 18:02:08
>みなこさん
渉外弁護士が秘書と結婚するのが多いっていうのは本当かどうかわかりませんが、外で彼女を作る時間が無さ過ぎて、自然にというよりも、仕方なくそうなっているだけなのでは?
もっとも現実には、奥さんがありながら秘書と浮気する人もいるようですが。
留学時代は渉外弁護士にとって束の間の休息期間となるようですので、彼氏にはついていったほうがいいと思いますよ。皆口をそろえて、「留学時代は時間があって楽しかった。」といいます。
Unknown (みなこ)
2007-08-12 22:31:21
お返事ありがとうございます。
彼はとても真面目な人なので『忙しくて連絡取れないからといって浮気されてるとか思われるのは嫌だ』と言ってました。
やはり入社した同期にもよりますが、コンパもそれなりにありますよね。笑
そこは仕方ないのかもしれませんが、秘書と浮気されたらたまりませんね…
Unknown (58期です。)
2007-08-13 22:29:46
黒猫先生もコメントされているように、就職後の結婚のパターンで多いのは、いわゆる『職場結婚』です。

しかし、これを奇異と観るのは少々おかしいかもしれませんね。
拘束時間が長ければ長いほどその傾向は強いように思います。
私の稚拙な経験則ですが、どんな業種でも職場結婚のパターンは多いようですし、同期の任官任検組の結婚は同業種間結婚がほとんどだからです。

また、弁護士、特に渉外弁護士の離婚率は凄まじいものがあります。
家庭を顧みない弁護士が多いのか、弁護士という業種を理解しない配偶者が多いのか、受験時代の禁欲生活の箍が外れてしまうのか、等原因、理由もいろいろでしょうが(笑)。
Unknown (町弁)
2007-08-13 23:28:44
弁護士でも恋人をステイタスで選ぶ人もいますからね。
渉外弁護士も、女優さんやモデルさんとお付き合いされてるケースをよく聞きます。
華やかな業界だけに入社してもコンパがあるし、結婚相手もすぐ見つかる気もしますが…
現実は上手くいかないもんなんですかね。
Unknown (みなこ)
2007-08-13 23:39:57
同業者同士が1番上手くいくのかもしれませんね。
忙しすぎて、浮気してるのではないかと、心配する奥様もいらっしゃるようです。
私は修習時代からお付き合いを経て、彼が弁護士になってからも結婚の話はまだありません。
結婚相手は、秘書が適していたのかもしれないですね
Unknown (みなこ)
2007-08-13 23:53:21
同業者同士が1番上手くいくのかもしれませんね。
帰宅時間も遅く、家にいる時間も少ないので浮気してるのではないかと心配される奥様もいるみたいです。

私は修習時代からのお付き合いを経て、今に至りますがまだ結婚の話はありません。一度、仕事にどっぷり浸かってしまうと、そうなってしまうものなんでしょう。
参考までに私は一般の会社員なのですが、どんな女性となら結婚したいと思いますか?