黒猫のつぶやき

法科大学院問題やその他の法律問題,資格,時事問題などについて日々つぶやいています。かなりの辛口ブログです。

もはや無いことが実証された法科大学院の「効用」

2013-05-23 21:26:41 | 法科大学院関係
 5月22日,このブログのアクセス数(PV)が12,591を記録しました。
 以前から,PVが1万を超えたら「ブログ炎上」と判断しているのですが,今年に入ってからは初の「炎上」です。
 もっとも,何年か前にPVが1万を超えたときは,普段のPVがせいぜい1,000~2,000前後だったのが急に1万を超えたというもので,それ以来PV数が1万を超えると,何か失言をやらかして批判が殺到しているという悪いイメージがあったのですが,最近は1万には達しなくてもPV数7千台,8千台,多いときには9千台という数字も珍しくなくなっており,しかも例の「浜辺騒動」に巻き込まれた時点で炎上は予期していましたので,今回の炎上は比較的冷静に受け止めることができました。
 例の『THIRD TIER REALITY(三流の現実)』というアメリカのブログを読んで,実際には高度な知性の持ち主と思われるナンド氏が敢えて「四流糞ロースクール」などと過激な冒涜的表現を多用して人気を集めているのを目の当たりにした結果,より多くの人に法科大学院の問題を認識してもらえるのであれば,もはや黒猫自身はどう思われても構わないと腹を括るようになりました。それ以来,以前にも増して過激な冒涜的表現を並べ立てるようになりましたので,ブログが炎上するのはある意味当然の結果でしょう。

 ところで,ブログ炎上の原因を作ってくれた浜辺陽一郎教授は,5月22日付けでこんな発言をしていました。

「FBには、「今どんな気持ち?」という所感を書こう、というので、主として「友達」に向けて述べるスタイル。ブログではありません。言論の場は、学会とか、書籍とか、雑誌とか、いろいろな場がありますから、そうしたところで大いにやればよいわけで。ただ、知らない人たちからも、FBで何やら居丈高に、不躾な質問が浴びせられます。既に書籍で公に主張・説明・解説していることを、何度も繰り返し説明させようという作戦なんでしょうか?」

 前日までFB(フェイスブック)でムキになって反論していたのは何だったのかと言いたくなりますが,本人に議論する気がなくなったのであれば,まあ仕方ありません。
 なお,浜辺氏の経歴を調べてみたところ,1961年生まれで慶應義塾大学法学部を卒業し,1984年に司法試験合格(司法修習は39期),1987年に弁護士登録して渉外弁護士として経験を積んだまではよいのですが,早稲田大学法科大学院の客員教授を務めた後,現在の青山学院大学法科大学院に移籍したようです(正確な移籍の時期までは分かりません)。
 今年52歳で定年退職するような年齢でもないのに,浜辺氏はなぜ早稲田ローを離れて,法科大学院としては明らかに格下の青山学院ローに移籍したのか? 一番合理的に考えられる可能性は,たぶん教員としての評判があまりに悪く早稲田ローを追い出されたのでしょう。浜辺教授の職歴の中に「弁護士法人早稲田大学リーガル・クリニック 弁護士」という記述もありましたが,よく考えてみたらこういうのって,使えない実務家教員の追放先に最適ですし。
 浜辺教授が,実は法科大学院業界の中でも高く評価されていない,早稲田を追放されたっぽい三流「実務家」教員でしかないのであれば,そんな人をこれ以上相手にするのは時間の無駄遣いです。
 「黒猫のつぶやき」以外にも,浜辺氏の発言を批判した法曹関係者等のブログは数え切れないほどありますが,その中の一つで紹介されていた記事の一つに,水澄アリシア氏のブログ『ロースクール就活生の思うこと』2012年11月11日付け「予備試験が法科大学院制度の「抜け穴」であることを証明する気はあるか」というものがありました。ちょっと古い記事ですが,浜辺氏の発言よりはよほど説得力のあることが書かれていますので,今回はこの記事を紹介することにします(例によって太字が引用部分です)。

 ロースクールを経験したアリシア自身の感覚ですが,ロースクールを「司法試験に合格するためだけの大学院」とか,「各法科大学院の合格率で比較する」とか,そういう偏った風潮はどうかと思うのです。
 確かに合格者の多いローは優秀だと思います。先生方も,輩出した人材も,みなさん社会で活躍されている/するはずです。

 ですが,知識偏重の旧司法試験から脱するために建てられたロースクールで,試験対策としての教育も制度上禁止されている現状。アリシア自身も,授業で答案の書き方とかを具体的に教わったことは,ほぼありません。
 むしろ,「実務に最も近いところで法曹になるための実践的な教育を受ける」の実践として,例えば模擬裁判,契約書・示談書作成,起案,エクスターンシップ,市民との法律相談などなど,学部では経験できない数多くの授業を用意しています。企業法務に関する授業もありましたし,それを受けてアリシアは今一般企業で新卒で働いているのです。

 ・・・あまりうまくまとめられてないですが,要するに。
 予備試験で知識だけ身につけて司法試験を受験し,合格したとしても,そのあとの法曹人生において活躍できるかまでは保証されていない,ということです。ロースクール卒業生は,上記のような様々な体験を経て,法曹になります。単に実定法学を学んだだけの予備試験組とは,バックグラウンドが大きく違うのです。
 この差が現れるかどうかをきちんと検証することが必要だろうとアリシアは強く思うのです。

 それで,この検証として,報道機関マスコミはきちんと追いかけてもらいたいなーと思うのです。それに,ロー卒なのに新卒で企業に入社している私のような存在もいるわけですし。

 きちんと,ロースクールを卒業してから法曹になった人の活動と,予備試験を経由して法曹になった人の活動を比較するのです。それで,予備試験組の方が活躍できているとか,バックグラウンドがあろうとなかろうと実務では大した差はないとか,そういった結論が出てから初めて「予備試験は抜け穴である」「ロースクールとは何だったのか・・・」といった結論を出すべきです。


 このアリシアさんという方は,法科大学院在学中から就職活動を始め,卒業しても一度も司法試験を受けないまま一般企業に新卒で就職されたそうですが,法科大学院擁護派(?)の意見としては,まだ聴くに値するものを持っています。たしかに,予備試験合格者の社会的実績は未だ不明であり,予備試験合格者といえども社会で活躍できることが保障されているわけではないという点は,まったくそのとおりだからです。
 しかしながら,アリシアさんのいう「バックグラウンドがあろうとなかろうと実務では大した差はない」という部分は,現実社会では既に実証されてしまっています。「法科大学院を卒業していない」法曹には,既に旧司法試験の合格者が相当数いるわけですが,旧司法試験と新司法試験が併行実施された60期前後には,旧試験組と新試験組(法科大学院卒業者組)のどちらが優秀か,という議論が法曹実務界でも盛んになされました。
 黒猫もいろんな人の評価を見たり聞いたりしており,もちろん様々な意見がありましたが,全体的な印象としては大体こんな感じでした。

<法科大学院に肯定的な人の意見>
・旧試験組と新試験組の両方を採用したことがあるが,両者に有意な差はみられない。
・旧試験組に比べ,判例や文献の検索には慣れている感じがある。
<法科大学院に否定的な人の意見>
・驚くほど基本的な法的知識を欠く人が多い(特に民法)。
・弁護士業務に不可欠な文書はろくに書けないのに,プライドだけは高く口答えばかりする。うざいのですぐクビにした。


 否定的な評価をする弁護士には糞味噌に言われていた一方,法科大学院に肯定的な弁護士からも,法科大学院卒業生を採用した実感として「旧試験合格者より明らかに優れている」という評価を聞くことはついに出来ませんでした。アリシアさんによれば,法科大学院では模擬裁判,契約書や示談書の作成,起案,エクスターンシップ,市民との法律相談,企業法務などの「実践的な」授業が数多く用意されていたそうですが,法科大学院でそれらの授業を受けたはずの新司法試験合格者の評価は,「良く言って旧試験合格者とさほど変わらない」ものでしかなかったのです。
 予備試験は,特に論文試験における法律科目の内容が旧司法試験のそれに類似しており,実質的には旧試験組の継承者とみなされています(実際にも,平成24年の予備試験では旧試験の受験経験者が,受験者・合格者ともに全体の過半数を占めています)。しかも,現在の予備試験は合格者数が非常に制限されており,制度末期の旧司法試験(合格者数1,500人時代)よりはよほど厳格な選抜が行われています。そして,法科大学院卒業者や新試験合格者の学力は,法科大学院バブルといわれた新60期・新61期あたりが絶頂期であり,その後は法科大学院人気の低迷によりじりじりと低下しています。
 以上を考えれば,少なくとも質の低下が顕著となっている現在の法科大学院卒業者と比較するなら,それはもう絶対的に予備試験合格者の方が信頼できるだろう,少なくともロー卒よりはましだという評価が予備試験組の実績を見る前に定着してしまったとしても,それはやむを得ないことなのです。

 そして,アリシアさんが言う「法曹になるための実践的な教育」の多くは,旧試験組も司法修習で同様の教育を受けており,司法修習の期間は1年半ないし2年と現在より長く内容も充実していたことから,法科大学院で「実践的な教育」を受けたことが,旧試験組と比べ法科大学院卒業者のアドバンテージになるはずがありません。
 法科大学院卒業者の司法修習は1年間に短縮され,内容も非常に薄いものになってしまったほか,各法科大学院における実務教育も内容に大きなばらつきがあり,法科大学院制度への移行に伴い廃止された前期修習を代替し得るほどの成果が挙がっているとは,当の法科大学院関係者でさえも評価していません。
 そもそも,法的知識に裏付けられていない内容証明はただの「手紙」に過ぎませんし,法的知識がない人の行う模擬裁判はただの「裁判ごっこ」に過ぎず,作成者が法的効果をよく理解していない契約書は「危険なお遊び」に過ぎません。
 辛い司法試験の受験勉強と異なり,そのような授業では法曹実務を疑似体験できたという満足感は得られるかも知れませんが,十分な法的知識がない段階で行われる「法曹実務教育」は,単なるお遊び以上のものにはなり得ません。そのような「バックグラウンド」があったところで,現実の法曹実務に役立つはずもなく,現実社会で高く評価されるはずもありません。
 厳しい言い方になりますが,「法科大学院で3年間高度な理論教育や実践的な実務教育を受けて来ました」というのは,「ソーシャルゲームに3年間のめり込みバーチャル世界を体験してきました」というのと,実はあまり変わらないのです。法務博士の中でもその現実に向き合うことの出来た人は,運と実力によってはアリシアさんのように何とか一般の職にありつくことができたかも知れませんが,その現実を認められない人には社会不適合者,すなわち廃人になるしか道は残されていません。
 法科大学院を卒業しても結局法曹実務に就かなかったアリシアさんを含め,法科大学院出身者は旧試験時代の法曹界を実体験で知らないので,旧試験世代と新試験世代の違いを客観的に評価することはできないでしょう。予備試験組との違いについては今後評価されていくことになりますが,法科大学院を出たという余計なプライドが客観的な評価を妨げるため,おそらく旧試験世代の弁護士と同じ評価を共有することは難しいでしょう。
 予備試験合格者については,司法修習は法科大学院卒業者と同様1年間に短縮されているのが唯一の気がかりであり,制度としても改善が必要ですが,良い就職先にさえ恵まれれば,司法修習の穴は就職後のOJTで埋めることが出来ます。そして,法曹界で良い就職先に恵まれることに関しては,予備試験合格者が法科大学院卒業者よりかなり有利であることは,もはや言うまでもありません。
 なお,法科大学院擁護派に属する人たちも,ほとんどはその現実を知っています。

 結局,法科大学院擁護派が正論で勝負しようとしても,このように敢えなく玉砕してしまうことは分かり切っているため,法科大学院擁護派が批判派に対し正面から論戦を挑むことはせず,見苦しいその場限りのごまかしや根拠のないレッテル貼り,さらには擁護派だけのシンポジウムで「法科大学院教育の成果」を喜んでみるといった自己満足に終始するしかないのでしょう。
 しかし,社会一般からはむしろ可哀想な目で見られるしかない愚かな行為に走る前に,自分はなぜ法科大学院を擁護するのか(あるいは擁護しなければならないのか),擁護派の人たちには一度自分の胸に手を当ててゆっくりと考えてもらいたいです。

30 コメント

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Unknown (Unknown)
2013-05-23 21:58:16
浜辺陽一郎の自宅に電凸した伊藤真塾長は男の中の男だわ!
マジでガチでしびれたぜ!
伊藤真ばんざい!!
伊藤塾ばんざい!!!
http://blog.goo.ne.jp/9605-sak/e/0b5046c5dd5073f3c22ae53ae53bac3f?guid=ON
Unknown (Unknown)
2013-05-23 22:26:06
なんだかんだ言っても法科大学院制度が廃止になることはないと見た!
ちょっぴり馬鹿でも法曹界への道が開けることをありがたいと思う人がいる限り入学者は0にはならない。

エリート組→予備経由
準エリート→上位ロー経由
金に物言わせる組→私大下位ロー経由

ロー卒 1500人
予備 300人

合格率 50%
合格者 1200人

これで落ち着くかな。
Unknown (Unknown)
2013-05-23 22:30:33
司法制度改革の検証での楽しみ方はいろいろありますね。

・法科大学院擁護派VS廃止派の論戦
・制度設計に関わった多くの人の思惑の推測
・今後の展望の予想

こんなに楽しめるテーマなかなかないよね。
Unknown (Unknown)
2013-05-23 22:39:49
>ちょっぴり馬鹿でも法曹界への道が開けることをありがたいと思う人がいる限り入学者は0にはならない。
合格率 50%
合格者 1200人
これで落ち着くかな。

ってことは,法曹増員政策の行き着くところは,結局,合格者数は50期代後半くらいと変わらないままだけど,その中にはちょっとおバカさんでも金さえ払えば入らせてもらえることになったという違いを生んだだけになりますね。こんなことするために税金をがっぽり使い込んだうえ,受かっても借金苦にあえぐ弁護士と受からなければそれに加えて三振博士という烙印から一生逃れられない人を大量に生んだわけですね,ナムアミダブツ。
Unknown (ひとこと)
2013-05-23 23:04:14
>例えば模擬裁判,契約書・示談書作成,起案,エクスターンシップ,市民との法律相談などなど,学部では経験できない数多くの授業

市民との法律相談以外は、全て学部でも十分開講できる内容だと思いますが?
この際、下位ローは(上位ローでもいいけど)法科大学院を思い切って廃止して、設備・教員・授業内容を学部に移し、「学部で法科大学院と同じ教育が受けられる!」ということを売り物にすればいいのではないかな。

原理的に、(法律に関する予備知識が必要でない)未修コースのカリキュラムは、学部生に対しても開講することが可能なはずです。なぜそれをやる大学がないんだろう?

学部生は人数が多すぎて少人数授業ができないというのなら、学部1年のときに選抜試験をして、成績優秀者だけ飛び級で未修コースに入学させればいい。どうせ法科大学院は大幅定員割れしているのだから。そうすれば22歳で法務博士になれる。

Unknown (Unknown)
2013-05-23 23:05:21
法科大学院の成果と言われているものも修習や実務に半年も就けば得られてしまうものなんですよね。

悲しいことに。


この現実を認めないと。
Unknown (ひとこと)
2013-05-23 23:24:05
>「四流糞ロースクール」などと過激な冒涜的表現

まあ言語で表現しているうちはいいのですが、大●の写真を掲載するのはいかがなものかと・・・ あ、大●というのは、「法科【大】学院を卒業した【弁】護士」の略ではありませんよ。

ところで、googleで「久留米大学 法科大学院」を検索してみてください。
Unknown (Unknown)
2013-05-23 23:54:19
浜辺センセエ、尻尾を巻いて逃げるんですかあ?
ひとこと謝ればいいのに。
青学のロー生にはなんて説明すんだろ?
ロー生の就職先がないことは、どう説明するんだろ?
オマエらがバカだから、行き先がねえんだよっていうのかな。
あ、『心が貧困』な教授センセイは永遠に反省なんてしないのかも。
Unknown (Unknown)
2013-05-24 00:29:02
当然のことながら、法曹への入口の「主戦場」は司法試験だと思います。同じ資格でありながらルートによって評価も実力も異なってくるというのは、それはそれであまり望ましい状況とは思えません。
早急に法科大学院の終了を司法試験の受験資格から外して(必然的に予備試験の存在理由も消滅)、誰でも司法試験を受験できるようにし、司法試験のみで人材を選抜するシステムに移行する(戻す)ことが望ましいと考えます。

法科大学院制度に翻弄される受験生は本当に気の毒だと思いますが、実務家の養成に大学が主となって関わるとろくなことにならない、という歴史的な教訓を得られたことは、今後無駄にしてはならないと思います。
Unknown (Unknown)
2013-05-24 01:10:00
LS卒と予備組の進路とその後、両者を比較検証すると、LSの無価値性が明確になっちゃうから、絶対にしないでしょう。

LSがすんばらしい授業をしてるとか言ってますが、LSの2年より、修習半年のほうが全然ためになるし、LSで2年も3年もノタノタ勉強してても、事務員経験2年経た人ほども役立たないのが実情。破産申し立てのための書類集めもできんだろうし民事執行もできないだろうし。
訴状のひな形くらいは書けるだろうが、それだったら事務員レベルでできる。問題は中身を要件事実上不足なく、かつ戦略的に書けるか、だ。
答案練習すらLSはさせていないのだから、起案などまともにできるような教育などされていないとみるべきだろう。あるとしても「ごっこ」レベルにすぎない。おままごとだ。

おままごとのために税金ぶち込んだわけだw
なんて愚かなやつらだ法曹界ってのは。