四谷三丁目すし処のがみ・毎日のおしながき

冬から春が旬である貝がそろそろ終盤、初鰹・鰈・鱸・鯵など夏の魚が出てきました。

4月17日(水)

2024-04-17 17:35:14 | 4/1~4/30


野上啓三インスタグラムsushi43nogami2←こちらに変更しました。
すべての魚・貝、天然ものです。
◇営業時間について◇火曜~土曜17:30~21:55※ラストオーダー(酒類・酒類以外全て)21:25まで
日曜お子さんデーは11:30~17:30です。※日曜はお子様の日です
店には月曜(+第一日曜日)以外10:30~営業終了+aおりますのでお気軽にご連絡ください!03-3356-0170
※レストラン予約代行サービス『オートリザーブ』でのご予約は日付・時間帯にかかわらず受け付けておりません。
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おかみノート
主人の実家はお寿司屋さん。私はなんにも知らないドシロウト。
今まで見たり聞いたり体験した 寿司屋のいろんなことを書いておきたいと思います。

『 トライ 』
三月の福島はまだ寒いと主人から電話があった。
金融機関Bに行った翌日「しばらく実家に帰る」と言って主人は新幹線に乗って帰省してしまった。
入院している義父のお見舞いと出店準備の進行状況を説明しに行ったのだ。こういうタイミングを見つけないと職業柄なかなかゆっくり実家に帰ることができない。
Bからの返事は【預金額と同額までは即融資可】だった。ただし他の金融機関からの借り入れが無い状態で、というものだった。
預金額と同額では足りない。主人の決断はAから全額借りられなければ出店しない、だった。
私はなんとかして店を出したかった。
主人の父は息子の独立話を喜び一時退院に向けて日々の苦しい食事療法に励んでいるとのことだった。
「いつまでも雇われてねぇでテメェでやっちまえ」と義父はいつも言い続けていた。
やる気になった気持ちの波を逃すと今度はいつ店を立ち上げる話になるのか。お互いが別々に勤め始めたら数年先になるのはわかっていた。だったら無理をしてでも店を出してダメだったらその時また考えて・・と思っていた。
主人の実家の辺りでも “啓三が店を出すそうだ” と話題になっていたし私も職場で聞かれれば “辞めるのは主人の店を手伝うため”と答えていた。今までは言葉に出して自分を追い込んでいくことをなんとも思っていなかった。しかしだんだん話が拡がっていき自分が考えてもみないところから期待の声がかかるようになってくると “やっぱりダメでした”とは言い出しにくくなってくる。
途中まで力添えをしてきてくれた沢山の人に迷惑がかかると思うとどんどん落ち込んで、悪い方に悪い方に考えがいってしまう。
Aからの返事に全てをかけたやり方が果たしてあっているのかそれすら不安になってきていた。

金曜日の朝、総務課の人に声を掛けられた。
今度の月曜日に朝礼でする退社の挨拶を考えておいてくれと言われた。四月一日付の転勤者と一緒にやるから全員が揃う三月最後の月曜に、ということだった。私はまだ辞める理由が“寿司店をやるから辞める”なのか“一身上の都合で辞める”なのか決まっていなかった。
その日の夜は本社から出張に来ていた人を交えて数人で食事をした。
ホテルに泊まる本社の人と帰り道が同じ方向だったので市ヶ谷で降りて麹町に向かって歩きながら出店準備の状況を話した。今日の夜がAの融資OKか否かの返事のタイムリミットだということ、この時間で福島から自宅に戻ってきているであろう主人から何の連絡もないということはやっぱりダメで、四月から新しく様々なバイトを探す生活になるかもしれないということ。酔っていたのも手伝ってものすごく饒舌になっていた。
「・・ちょっと、野上さん、野上さん!なんか鳴ってますよ」 
一緒に歩いていた後輩の男性が言った。
興奮してカバンの中のPHSが鳴っていたことに気が付いていなかった。急いで見ると “Pメールガトドキマシタ” とある。主人からだ。そして “A ハ ユウシOK!!” と画面に出た。
「・・・ギャーッ!やったぁぁぁぁぁっ」
その男性との挨拶もそこそこに大妻通りから一本裏の急な坂道を一気に駆け下りて行った。
帰ると玄関に主人が立っていた。
「全額?ほんと?ほんとにOK?」
主人はうんうんと頷いた。
「会議が長引いて返事が今になっちゃったんだって」
「やったね!やったね!!私たち、・・ほんとにやったね」
飛び跳ねながらPメールのメッセージはずっと消去しないでおこうと思った。

火曜日の午前中半日有休をもらってBの相談窓口に行った。
二週間ほど前、名刺を貰った担当の人は私たちを見るなり爽やかな笑顔で迎えてくれた。非常に気まずかった。電話でお断りの返事をしようかとも考えた。でも自分たちがもし逆の立場だったら・・。借りるお願いの時だけ直接来てしかも返事を保留にしておいて、他の金融機関が貸してくれると決まったから電話でお手軽にキャンセル・・というのはあまり気分のいいものではない。もしイヤミのひとつでも言われたとしてもそれは自分たちのした結果なのだからちゃんと受けようと思った。
「先日の件ですよね。すぐにでもお話を詰めましょうか、さっ、こちらにどうぞ」
私たちより四~五歳若そうな紺のスーツに白いワイシャツが似合う担当の人はしっかりと向き合い、万全の準備ですといった感じになった。主人が言った。
「あの、実はAさんで融資が決まりまして、今日はお断りのご挨拶に来ました。申し訳ありません!」
二人で深々と頭を下げた。 すると担当の人は少し驚いたようで、でもすぐに
「あー・・そうですかー・・・。あ、でもそれはよかったなぁ。いや実はですね、あのあともう一度書類をじっくり見させて頂きましたらね、預金額まではすぐ出るんですけど、そのあとお店だといろいろ修繕だとかリフォームだとかで途中でまたお借り入れ・・ってことになる場合があるんですね。そうなると私どもですとなかなか対応出来ないんで、もし野上さんがAさんでお借りになることが可能だったら、その方がいいんじゃないのかなぁー・・と思っとったところなんですよ。いや正直ホッと致しました」
と言ってくれた。そして
「そんな、Aさんに決まったんならお電話でもよかったのに、そんなわざわざ来て頂いて・・」
と私たちの目をじっと見ながら話してくれた。腹を割って話して本当によかったと思った。今回はご縁がなかったけれどまたいつか助けてもらうかもしれない。すっきりした気持ちでBをあとにした。
一月から動き始めて約三ヶ月。
不動産屋さん、金融関係の方・・・一体どのくらいたくさんの方々と出逢ってこの話を聞いてもらってきたのだろう。
でもまだスタートラインに立てたばかり。これからもっと知らない人と知り合い、新しい世界が拡がるのだ。 もう後戻りは出来ない。
前へ進むのだ――――――!!!!!!

『 五ツ切り 』
かんぴょう巻きを五ツ切りにしてみようかと主人が言った。
「は?“かんぴょう巻きは四ツ切り”って決まってるもんなんでしょ」
「よく知ってるね」
「だって『将太の寿司』に書いてあったもん」
「あ、そうなの」
「五ツ切りなんていうのがあるの?」
「いやないよ。オレが考えた。かんぴょう巻きの四ツ切りってひとくちで食べると大きくない?昔やってみたことがあるんだよ。一本の細巻きを切らないで何口で食べ終えるのかって」
「うん」
「そうしたらね、五回だった。だから五等分に切ってみよう、と」
「ほー・・」
主人は手早くかんぴょう巻きを巻くと、細巻きの腹の真ん中あたりに柳刃包丁の切っ先を何度も何度もあて始めた。
「・・・・・」
眉間にシワが寄っている。
「・・切らないの」
「どうやって切っていいのかわかんない」
「はぁっ?」
「いやね、細巻きはまず真ん中で切るでしょ。で、その二等分したものを揃えて、六ツ切りならそれを三等分、四ツ切りならもう一回真ん中を切るっていう動きを目ぇつむってもさ、ピチーッと同じ長さに切り揃えられるまで繰り返し繰り返し叩き込むわけ。大げさに言うと、五等分にしようとすると、どうしても四ツ切りか六ツ切りかのいつも切る位置に手が自然に戻っていっちゃう、みたいな」
「ひぇー・・」
「・・五等分となると、一本を三対ニになるようにして、それぞれを切り分けたほうがいいのか、端っこの一切れをまず五等分のサイズに切って、残りを四等分にしたらいいのか」
そう言いながら主人は既に巻いてあった一本は前者の切り方で、そしてもう一本すぐに巻き、後者のやり方で五つに切った。
「あれ!やっぱ、ずれちゃうなー」
バラバラの長さのかんぴょう巻きが十切れ、まな板に並んだ。
主人にとってはかなりショックな出来だったようだ。
リベンジでもう一本巻こうとしている。
私はレジ横に置いてある定規を持ってきて言った。
「測ってみたら?細巻きの長さが・・・19.5cmでしょ。えーとえーと、割る5で・・・ひと切れあたり3.9cm」
端っこのひと切れを定規で測って3.9cmに切り、あとを四等分にしたら、きれいな五ツ切りになった。
「おー、できたけど、これまたやれって言われるとオレ、無理かもしんない」
「まな板のどこかにさ、四ツ切りとか六ツ切りの目盛りを付けとく人とかいないの?そういう感じでこっそり五切れ用の印を付けておくとか」
「あっはっは、板前はそんなことするわけないでしょ。たとえばね、全然知らない板場に行ったとして“目盛りがないから切れません”なんてあり得ないでしょう」
たしかにそんなことをするわけがない。
自分の姑息な部分を見られたようで恥ずかしかった。
少しの間黙っていると
「ちゃんと切れたやつ、食べてみようよ」
と促された。
同時に五ツ切りのかんぴょう巻きを口に入れた。
「・・・・・」
「・・・・・」
先に呑み込んで終わった主人が言った。
「あんまりうまくねぇな」
私はまだ口に入ったままだ。
「大きさは口にジャストサイズだけどな」
「・・うん。やっぱり口に余る四ツ切りのほうがおいしく感じるね」
「この長さになったことには理由があるんだな。やっぱり」
「そうなんだね」
お茶をすすりながら残ったふぞろいのかんぴょう巻きを黙々と食べた。

明日は『かめの手』『春子にみりん』です
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◎赤貝の仕込み 動画アップしました(5分03秒)
◎シャリ酢あわせ 動画アップしました(1分50秒)
◎かんぴょうを煮る動画アップしました(7分30秒)
◎玉子焼き動画アップしました(6分53秒)
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1dayアーカイブ2023年~2001年4月17日のおしながき
[2023年] 野上啓三が見ている豊洲市場の風景 寿司屋の七十二候
[清明・第十四候・鴻雁北こうがんかえる]4/10~4/14 

・鹿児島 串木野 イサキ 今、店
木の芽を摘んでいるところ(お通しのホタルイカに)【動画】
・北海道 白老(しらおい) コバシラ 今、店
富山射水 スチームホタルイカ【動画】
・秋田男鹿半島北浦 本サクラマス 今、店
・兵庫明石 オコゼ 今、店[2022年][2021年][2020年]引き続き4/13(月)~4/19(日)まで休業させて頂きました[2019年]

太刀魚、肉厚です。塩焼きで。[2018年]
[2017年]野上啓三が見ている築地の風景 寿司屋の七十二候〔清明・第十三候・玄鳥至つばめきたる〕4/4~4/8〔清明・第十四候・鴻雁北こうがんかえる〕4/9~4/14・函館 ホッケ 今、築地 ・ヨコ井醸造酢 工場見学 今、新木場・すし処のがみ テ 今、店・淡路 真鯛の春子 今、築地・船橋 サルボウ 今、築地・大船渡 本サクラマス 今、築地
[2016年][2015年]


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[2014年]いがウニ新規入荷です。3/18新発売[アサヒスーパードライ・プレミアム樽生]=写真左手前、一ヶ月が経ち、すごい勢いで出ております。[アサヒ熟撰(じゅくせん)樽生]=写真右奥と生ビール二本立て、グラスは【松徳硝子】の『うすはりグラス』でお愉しみいただけます。4月17日築地風景002003_2

 

[2013年]いが海栗・活宝彩海老・生とり貝・活けじめのあじ、新規入荷です。生とり貝、見た目は小さいですが身はむっちりと詰まっています。お皿にのった茹でとり貝の肉厚さと似た感じです。カワハギ、肝はあっさりとしていながらたっぷりとあります。平政は6kgの1/8ハラカミ部分を仕入れました。

 

Nogami0906_011[2012年]宮崎 炙り〆カマス’12 4/9→4/19 リニューアル工事でした。

 

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[2011年]

 

写真右上の本まぐろ中落ち、まだあります。つまみでも鉄火巻でもどうぞ‥

長崎のあじ(左)750g、千葉・勝山のあじ(右)150gです。

しまあじは1.8kgです。天然もののしまあじ自体もレアですが、2kg近い大きさというのも滅多に入らないらしく、かなり珍しいそうです。

通年出回るこのこですが、フレッシュな“このこ”を味わえるのはこの季節ならではということで、おかげさまで好評です。

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[2010年]

宮崎・川南(かわなみ)のテンパ=本マグロの赤身が入りました。本タラバガニの内子(うちこ)は初入荷です。

 

002デザートがあります。主人謹製・はっさくゼリーです。和歌山の紅八朔“さつき”を丸ごとつかっています。

 

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[2009年]サワラの小さいもの、サゴチが入りました。1.2kgくらいです。塩と酢で軽く〆てあります。

西京焼きもあります。

 

 

 

 

 

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