四谷三丁目すし処のがみ・毎日のおしながき

冬から春が旬である貝がそろそろ終盤、初鰹・鰈・鱸・鯵など夏の魚が出てきました。

4月6日(土)

2024-04-06 16:14:20 | 4/1~4/30


野上啓三インスタグラムsushi43nogami2←こちらに変更しました。
すべての魚・貝、天然ものです。
◇営業時間について◇火曜~土曜17:30~21:55※ラストオーダー(酒類・酒類以外全て)21:25まで
日曜お子さんデーは11:30~17:30です。※日曜はお子様の日です
店には月曜(+第一日曜日)以外10:30~営業終了+aおりますのでお気軽にご連絡ください!03-3356-0170
※レストラン予約代行サービス『オートリザーブ』でのご予約は日付・時間帯にかかわらず受け付けておりません。
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おかみノート
主人の実家はお寿司屋さん
。私はなんにも知らないドシロウト。
今まで見たり聞いたり体験した 寿司屋のいろんなことを書いておきたいと思います。

おかみノート 『シンクの前で』
居酒屋さんを改装してスタートしたのでいわゆる完全な寿司屋仕様の内装になってはいない。
ただ、業者さんが出来る限り動きやすいようにと作ってくれたので夫婦で切り盛りするには適した感じになったと思う。
内装工事が残すところ二日か三日になったある日業者さんが言った。
「奥さーん、奥さん!ちょっとこっち来てもらえるー?」
備え付けてあるエアコンの掃除をいったん中断し椅子から降りて厨房に向かった。
「ここ、立ってもらえるかな。きもーち前屈みで、そうそう」
ちょうどシンクを取り付けるところだった。私が食器を洗い易いようにとの配慮だった。
「んー、読み通りだね。オッケー、あ、まだそのままーそこに居てー。もいっこ訊きたいことあるからねー」
業者さんは厨房を出て今度はお客さん側のカウンターにまわり、私の真正面に立った。
「このままだと水撥ねちゃうからさ、奥さんの立ち位置んとこだけステンレスのパネル取り付けちゃうね。どのくらいの高さがいい?好きな感じで言って。そこに合わせるから」
「ステンレス!?」
「そう」
「オールステンレスですか?」
私は訊き直した。
「そう。だってステンの方がいいでしょーよ、水だよ?」
「それは分かりますけど・・お客さんから見てなんだか風合いが・・。スッキリした感じだとは思いますけどなんだか殺伐としませんか?」
「うーん。ま、だとしたら奥さん側はステンにして、お客さんの側は前に木のホレ、板かなんかを貼っちゃうとかね。でも水だからなー、できればなんもしないほうがいい。後々の手入れなんかのことを考えると、オレはそう思う」
木の風合いが加わるのならまだ大丈夫か、と考えた。
水の撥ねない程度の高さはこのくらいだろうか・・と手でここらへんと指し示した。
「ダメ低い。意味無い。やるならここまで!ドーン」
業者さんの提示はお客様のお顔がほとんど隠れる位置だった。
「それじゃ、すごーく首伸ばさないとお客さんと話ができないじゃないですか!!」
「だね。でもね、よく聞いて。手もとが見えないほうが奥さんラク。それ、よーく考えたほうがいい」
うっと怯んだ。が、持ちなおして言った。
「え、じゃあずーっと地続きでカウンターがこう低くずらずらずら~っときて、私の前だけドーンと壁!?お客さんはずっと壁と向き
 合いながらってことですよね!?ここの席だけが黙々と食べて帰るみたいな定食屋さんってことですよね?」
「ここに座った人はしょうがないんじゃないの。それにさ、そういう場所が好きな人もいるよ?」
それはわかる。それはわかるが、ここだけステンレスの高い壁、いやもし板を貼ったとしてもそれは店全体の雰囲気を壊すことに
繋がると思った。
お皿やグラスを洗うところをお客様から見られないで済むのはたしかにラクだ。でもはっきりわからないが、何かから逃げているような気がしてならなかった。
「あ゛――っ。うまく言えないけど、違うような気がするー!」
叫びに近い大声に気付き、主人が電球の付け替え作業を中断して声を掛けてきた。
「なに、どうした?」
「わ゛がんな゛い――!」
「何が」
「壁」
「カベ?」
「付けるべきか付けないべきか」
「・・・あ、シンクの前?」
「そう」
「うーん。あったほうがラクだとは思うけどね」
「やっぱそう思うんだ」
「洗い易いんじゃない?最初付けておいて慣れてきたら外すとか」
いい案だとは思ったが、これも何だか正解ではないと思った。
「でもさー、付けたらヘンだもんッ!絶対ヘンだもん!!」
ブンむくれていると業者さんが言った。
「・・まぁ、まったく違和感がないってことはないけどね。前のお店はほら、居酒屋さん?シンクが後ろにしかなかったでしょう。それだといいんだけど、お寿司屋さんだと、もいっこシンクあったほうが便利でしょう。もともとシンクが無い場所に作るわけだからそれは多少無理がくるよね。・・はい、あとは奥さんが決めて」
決定権のパスを受けた。グズグズはしていられない。もう決めるしかない。
「要りません」
「付けないでいいの?」
業者さんは確認してきた。
「はい」
「ほんとにいいの」
「はい」
「大丈夫なのね?」
「ええ」
「撥ねるよ?」
「撥ねさせなきゃいいんですよね」
「そりゃそうだけど」
「ディズニーランドです」
「・・・?」
「ポイってゴミを捨てた時にサッて掃除にくる人がいるじゃないですか。あれを目指します」
「・・・・」 
「洗い物自体がパフォーマンスになればいいんですよね?最初からは無理かもしれないけど、たしかにビールグラスとか洗うところじーっと見られたら恥ずかしいですけど、やるしかないんです私は」
飲食業界で修行していない人間がこういった動作を人前に晒すというのはどういうことか。見てる側からは想像もつかないぐらい恥ずかしい。でもやるしかない。ステンレスの壁を途中で外すとしてもその時にどっちにしろ晒すんだから最初から恥ずかしいほうが
まだラクだと思った。
それに二~三年もすればすっかり景色に溶け込み洗っていようがいまいがそんなことはどうでもよくなる時期が来るだろうと予想していた。
果たしてこれがパフォーマンスに成り得るだろうか?
いや、もしなっていなかったら意地でもなっていてやると心の端っこで思っていた。

おかみノート 『祐兄ちゃんの青梅』
のんちゃん寿司の厨房で休憩をしていると祐兄ちゃんは青梅に爪楊枝を刺したものを私に差し出した。
「梅酒の梅だと思ってんだろ。あれと全然ちがうから食ってみろ」
促されるまま口に入れると、薄い梅の皮を破って冷えたやわらかい果肉が甘さとすっぱさを含みながら口の中で一気に拡がり鼻で息を吸うと梅のさわやかな香りで息が出来なくなるくらいだった。
目を白黒させながら「お、おいひぃでふ」と、やっと一言だけ喋れた。
主人は三男なので兄が二人いる。
長兄で割烹の板前の祐一兄さんのことは祐兄ちゃんと呼ばせてもらっていた。
「これ、どうやって煮るんですか」
ティッシュに種を出しながら私が訊くと
「梅をな一コずつ、細い針で二~三ミリ間隔で穴開けていくんだ。同じところに二回針刺すと梅が割れる原因になるから集中してな。
塩水に一晩漬けて、そのあと糸水っていう細く水を流しっぱなしにする作業で一晩。火を入れてながら梅が上下しないように気をつけてまた糸水で一晩。極弱火で炊きながら今度は梅の青い色を鮮やかにするための銅を入れて煮てまた糸水。銅は硫酸銅を耳かき一杯くらいか、銅鍋か、清潔な十円玉か、でな。蜜を作って梅を漬けて更に濃い蜜で慎重に甘さを足していく。これ、ウマイだろ? 手間がかかってる割にはペロッとひとくちで食えちゃうから、なかなか価値が分かってもらえねぇんだ」
銅鍋に浸された青梅たちを見下ろしながらいつもの口調で言った。
長身で恰幅のいいその板前姿で作り出す祐兄ちゃんの料理はどれもおいしかった。
店の開店を手伝ってくれた数日あと祐兄ちゃんは心臓の病気で突然この世を去ってしまった。
あまりの出来事に主人は「実感が湧かない」と二年くらい言い続けた。
毎年梅雨も終わりに近づく頃、主人は極上の青梅に針を入れ始める。
作業台には古いノート。
『梅の甘露煮』のページが開いている。

明日は『オカアチャン前編』です
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◎シャリ酢あわせ 動画アップしました(1分50秒)

◎かんぴょうを煮る動画アップしました(7分30秒)

◎玉子焼き動画アップしました(6分53秒)
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1dayアーカイブ2023年~2001年4月6日のおしながき[2023年][2022年]休みました
[2021年]のがみのにぎりの話 【3月】 アオヤギ20111202nogami_009
ネタケースに並ぶものの中で「これ、何?」と訊かれる確率ダントツ一位の貝です。貝殻に入ったまま置いてある店がほとんど無いからだそうです。主人曰く板前さんでも貝殻の模様を知らない人がいるのだとか。ご注文をいただいてから剥き、捌き、握ります。アオヤギの香りをこれでもかというくらい堪能できます。【4月】 生トリ貝004
二月から五月くらいまで登場する貝です。貝の中から解き放たれたトリ貝がガラスのまな板の上で捌かれます。即座に握られたトリ貝はまだ新鮮な香りを纏ったままお客様のもとへ。【5月】 スミイカ20120427nogami_05
成魚のスミイカの厚み、甘み、シャリをあわせた時のにぎりとしての完成度の高さなどを感じて頂けると嬉しいです。そして七月に出る小さいスミイカ=新イカ(子イカ)との食べ比べも面白いかと。どちらも魅力があります。
【6月】 新子005_2「もうシンコ食った?」という問い掛けがこの時期、どのくらいされるのでしょうか。早ければ六月中旬~六月下旬に登場し、九月上旬くらいまでシンコと呼べそうなものを主人は頑張って仕入れてきます。【7月】 新イカスミイカの子ども、新(しん)イカです。スミイカ一パイで一貫分しか握れないという小ささのおかげで七月~八月の板前の仕込みはシンコの季節と重なってものすごくハードです。小さいスミイカの身の淡さを愛でるとでもいいましょうか。シンコと並ぶこの季節の風物詩です。また、この新イカのゲソは身の小ささからは想像できないほど味が濃く、秘かな人気です。【8月】 アワビの酒蒸し多くの貝が初春から春に旬があるのに対しアワビは夏が旬です。にぎりにするには断然酒蒸しが向いていると主人は言います。そぎ切りにしたアワビのにぎり。上には蒸した肝が少しそして穴子の煮詰めを垂らします。するとアワビの香りが立ち昇ります。ここは煮詰めじゃないといけません。醤油ではまったくダメなのです。【9月】 生いくらIkura_3だいたい七月末~十二月末まで生いくらを仕入れます。その他の季節には塩蔵のものとか置きません。なので一月~七月くらいまで、いくらは当店にはありません。一年中置いていないことによって旬はすごく解かります。まず七月末に鱒の卵であるマス子が出て、八月にはサケ子(いわゆるいくら)が登場します。最初は粒が小さく味もややあっさり。それがだんだん濃厚になってきて十二月には(写真)粒も大きく“大人の卵かけごはん”という異名までついてしまうほどです。【10月】イナダ (写真はワカシです)Nogami0906_007八月ワカシ⇒九月~十月イナダ⇒十一月ワラサ⇒十二月~一月ブリ(寒ブリ)と、大きさとともに名を変えていく出世魚です。当店、開店以来ずっと十月は空いています。何が原因なんだろうと考えました。「シンコ、シンイカで話題が持ちきりになる七月ほどのウリがないのでは」と思いました。単品で名前が挙がるナンバーワンがないとしても、夏の幼魚から冬の成魚になる間の脂が乗り始めた例えばイナダはその象徴ではないか、と。真冬にこってりと脂が乗る前の、あっさりからややしっとりとしてきた身質を愉しんで頂きたいと思います。[2020年]
新型コロナウイルス感染の影響を鑑み、4/5(日)~4/12(日)まで休業致しました。
[2019年][2018年][2017年][2016年]
[2015年]のがみの車エビの話 
開店当初はランチ用に26/30(にじゅうろくさんじゅう=1ポンドの箱に26-30尾入り1尾16-19g)という冷凍無頭のブラックタイガー、夜の営業には有頭の車エビを使っていました。
初めのうちは知り合いの仲買さんに仕入れを一括して頼んでいました。
日々の流れを作るのが精いっぱいで毎日が過ぎていましたので、当時車エビが養殖だったのか天然だったのか天然であがった(活けじゃない)ものだったのか、まったく憶えていないということでした。
ランチ営業を辞める時、主人は言いました。
「これからは夜営業だけだから、ランチのために仕入れていた冷凍エビや養殖のサーモン、塩蔵のいくら、おもにランチのお吸い物用となっていた昆布や鰹節はやめて、本当に自分が仕入れたいと思うものだけを揃えたい」
と。
それは仕入れ値も売り値も確実に跳ね上がることを意味していました。
覚悟を決めた主人はサーモンは入れないけれど季節々々で登場する桜鱒や時鮭、琵琶鱒などが入った時だけ入れる。
いくらは七月下旬から十二月まで生いくらが出回る時だけにする、
車エビは無理にいつも入れないで、自分の気に入った大きさの気に入ったものが気に入った値段で入る時だけ入れる、
など次々と自分の思いを表現していきました。
利尻昆布と枕崎の鰹節など腰を抜かすくらいの品質で揃えました。
特に天然の車エビにしてよかったなと思うことがありました。
活けで仕入れるので、お刺身だったり茹でたてだったりご提案のバリエーションが増えたことです。
あと天然のエビの頭のところにあるエビ味噌はスッキリ感とコクがずば抜けています。
車エビの大きさはいろいろな呼び名がありますが一例にサイマキ、マキ、クルマ、オオグルマ(マキとクルマは同じ意味の場合も)とあり、主人は25のマキ(25g)が好きでそのまた天然となると一ヶ月に一度あるかないかぐらいになってしまいます。
毎日築地でエビ専門の仲買さんに「どう?」「今日ある?」などと尋ねるものだから仲買さんは困って
「養殖もホントいいもの出回ってるよ。のがみさん、(意地張ってないで)そろそろ変えたら?」
と言われるそうです。主人も養殖の良さは解ってるんです。
でも、行けるところまで頑張るとのことです。
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[2014年]野上啓三が見ている築地の風景 七十二候 3/30→4/4 [春分・雷乃発声かみなりすなわちこえをはっす]今、築地今、築地今、築地今、築地今、築地今、築地4/5→4/9  [清明・玄鳥至つばめきたる]今、築地今、築地今、築地今、築地今、築地今、築地 4/10→4/14[清明・鴻雁北こうがんかえる]今、築地今、築地今、築地


001_2[2013年]くるま海老、ひさびさ入荷です。縞海老、あじ、春子(かすご)、トリ貝、赤貝、新規入荷です。002_2 004

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[2012年]

下田の活けするめいかです。ビニール袋をくちばしで喰いちぎられないように茶紙の袋に入れてあります。開店前にさばいてしまうかもしれません。

日本酒・芋焼酎、新たに入りました。

004

[2011年]

昨日の千葉・銚子産生トリ貝は完売、今日入荷の貝は新たに香川 002・引田産赤貝、愛知産本ミル貝があります。

003北海道・積丹の甘海老が入りました。

千葉・鴨川のイナダは3.8kgで、築地ではワラサと呼ばれていたそうです。

 

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[2010年]

今シーズン、シロイカ初入荷です。今日からいつものガリの他に新生姜を刻んで作った自家製のガリ もご用意しています。

 

[2009年]『すし技術教科書』によりますと、寿司屋で使うアナゴは、このマアナゴが主なのだそうです。両体側にある白い斑点が竿ばかりの目盛りのように並んで見えるところから、

ハカリメ(秤目)・キンリョウ(斤量)などの俗称が付いたということです。

ちなみに主人が通う築地の仲買いさんのお店では、ふつうにアナゴと呼んでいるそうです。

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