tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

あふれるほどに・・・ 9

2017-06-05 07:46:04 | あふれるほどに・・・
ようやく姿を現した事で、普段は見ないスタッフが 事務所へ足を運んだ。
取り合えずと、交代で一緒につき仕事の中味を教える事にした。

陽咲も不思議と早く、事務員の高田美咲になついた。
時々だが、孫の蒼汰を連れて来る・・・端に大きめのサークルを準備して貰い二人の幼子を見ながら仕事をしていた。

高田の娘は、シングルマザーであり夜の仕事をしていると聞いた。
聞けば陽咲とは三ヶ月違いで、それでも大人しく陽咲と遊ぶように互いを見ては安心するように眠っていた。

休憩だと戻った陽緋がミルクを飲ませる・・・お腹が空いたのか泣く蒼汰には離乳食とミルクを高田の代わりに与えた。

事務所にある場所で、高田が準備していたモノで作る・・・よく食べる蒼汰に驚いて手を止めた。
『奈津子のは食べないのよねぇ・・・』
何故かと苦笑いをして眺める高田に笑み返した。

二人を寝かせる・・・陽咲は抱きつくように、彼女の首元へ触れて眠る。
それが安心するのか、手が陽緋に触れると寝ると気付いてからは そうしていた。

蒼汰は彼女の指を掴み眠る・・・それは自宅でも同じで、奈津子の手を掴んで寝ていると聞いてからしていた。

大人も眠れる広さはあるので、完全に柵をはり寝かせていた。

報告だと戻る所員は誰もが一度、立ち止まる・・・微笑ましい光景に笑み、それから机へ向かうのだ。

起き出した陽咲・・・ジッと陽緋を眺め頬を擦り起こす・・・それは偶然だろうが・・・目が合って笑むような陽咲に笑み返すのだった。
先に起きていた蒼汰は、高田に抱かれ遊んでいた。

『起きたな(笑)。明日、病院に行くから準備しとけ。
結果次第で(笑)もう一人も迎えに行くぞ』
『ありがとう(笑)』
呟く陽緋に皆も笑みを浮かべた。

当たり前の光景になりつつある所内に苦笑いしかない瀧川だった。



客の依頼は下の階でする・・・それは専門の所員がいて、受け取れる話かを聞く。
抜かりなく調べあげてから、動き始める所員達へ回されていく。

腕のいい者が集まる事で、色んな場所から出向く客の多さに驚いた。
高田は、この階での仕事につく・・・同じ事務員でも役割は違う。

このビルの一階には、カフェと服屋・・・それからクリーニング店で埋まっている。
二階から五階までが事務所として使われ屋上までの階は、プライベートフロアになっていた。

一棟まるごと瀧川の持ち物だった。
1ブロック離れた場所に、羽佐間関係の表は全うな会社があると聞いたのは数ヵ月後の事だった。

出入りしても、すれ違っても・・・子を抱いて買い物へ出ても、陽緋達に目が向かなかった事に 瀧川と彼女自身が驚いた。

何より理由を知りたかったが、それで調べて手が伸びる怖さが先に立ち荒立てて動く事は止めた。




街では大きな病院なのだと知った。
設備は数多く小児科の腕も良く、看護師も丁寧だった事にホッとした。

検査結果が出る日に出向く・・・ソコに瀧川までが着いて来た事に驚いた・・・
説明を聞きながら理由を知る・・・

『本当の子供か(笑)疑ってたんだ』
『悪かった・・・』
『父親は?』
『 ・・・』
聞かれて答えない彼女に苦笑いをして隣で笑って眺める瀧川に、医師が笑って声をかけた。

『雅弥(笑)。それは少しずつ聞き出す事にしとけ。
今は、この子を大事に育てろよ』

言われて苦笑いで返した瀧川・・・これで二人は知り合いなのだと見返した陽緋だった。
深くため息をする陽緋・・・それでも異常という病気では無かったとホッとした。

『(笑)気長に付き合えばいい・・・まだ幼い・・・話ながら鍛える事も出来る』
『大丈夫で良かったな(笑)』
見つめ笑み合う二人に呟く瀧川だった。
何かを言いたげで笑う陽咲・・・

『笑いな(笑)、それで頑張れるから』
小さな囁き・・・その優しい声音に嬉しいのかジッと見返す陽咲だった。

『どんな言葉も声をかけてく事(笑)。口を動かしたら待つ・・・返事の仕方も・・・全部に教えながら話しかけてくんだぞ?』

『(笑)ありがとうございました。頑張ります』
『微妙な変化が気になるなら迷わずにお出で(笑)。それから無理な大声は声帯にも負担はかかる・・・
小さいから、発達が遅れてるだけだ(笑)気になる大声は診るから連れてくるように』

『はい(笑)』
擽ると笑う・・・微かな呻く声・・・それが笑い声に近いと分かる陽緋だった。
抱き締める姿に笑み、陽緋を出して瀧川と話を始めた。

『(笑)マジで繋がってた?』
『DNAは一致してる(笑)。正真正銘、彼女の子だ・・・
何処に疑いを持ってたんだ?』

『産院に二人で入った・・・二人とも妊婦らしくてな・・・駆け込みで一人が産んだが、翌日に一人が消えるように姿を見せなくなった。

ケバい化粧だったから、本物の妊婦かも分からず・・・全部の検査も終ってるし、飛び込みだったから巻き込まれないように出したらしい』

『も一人は?』
『行方不明だ・・・陽緋は居ないと言った・・・それは男の事か、友人の事か・・・その相手か・・・』
『産んだのは誰か・・・か・・・』

『産んで直ぐに男を蹴飛ばせるか? 連れてくる一月前だから・・・陽咲は一か月あたりだ、しかも双子だぞ?』
『産んで一か月か・・・
もともと腕があったならだな・・・』
『 ・・・』
二人で考える・・・

『(笑)諦めて、今の彼女を受け入れとけ。正真正銘 彼女の息子だ(笑)』
『ん?男?』
『あ? ・・・・知らなかったのか?』
『あー(笑)陽咲って名前で女の子と思い込んでた・・・』
『双子の女の子?』

アハハと笑い合う二人に、ドアを開けて声をかけようとした陽緋が眺めていた。
片手で抱いた子は静かに眠っていた・・・静かに閉めると診察室の前にあった椅子へ座り瀧川を待った。

子を眺めながら、考え込む・・・
『陽咲・・・頑張るから・・・清瀬を迎えに行こうね(笑)』
胡座をして陽咲を乗せたままに、陽咲を覗き込んで呟いた。


暫く眺め観察されていたが、その一人が声にした。
『何処に隠した?』
不意に現れた声・・・彼女は振り向きもせずに ため息をした。
『七瀬は?』
『追い込んだから居ないんでしょ・・・誰がしたのよ』

『子供は?その子か?早いよな・・・』
『七瀬の子じゃない・・・
お願いだからホッといて・・・探さないで幸せを願ってあげて。
離れたから助けられないじゃん』
『 ・・・』
『視線に入ってくるな!』
『 ・・・』

足音が遠ざかる・・・ホッとした陽緋は、震える手で陽咲の手を撫でた。
数人の足音・・・静かに振り向けば、見知る人達まで居て素通りしていった。

一人考え込むように陽緋は押し黙り子を見つめるのだった。


看護師に言われ静かにドアの隙間から眺めていた瀧川・・・
『彼女繋がりの男も居たとか?』
『やくざに動じねーって・・・どんな中に居たやら・・・』
『見てないだろ・・・』

『あの会話は知り合いだろ・・・
何より消えた妊婦は七瀬という子と知れたんだ』
『(笑)どうせ探してやるつもりでもあったんだろ・・・』
苦笑いで返す瀧川の口が微かに微笑んだのだった。

『観察終了なら帰ろ(笑)』
不意に瀧川に呟く陽緋に、笑ってドアを開けた医師だった・・・

『瀧川さん(笑)。事務所に保育士雇って下さい・・・その分も働きます』
『 ・・・』
『居場所がバレたから・・・』
『偶然・・・』

有り得ないと笑み返す陽緋・・・それから二人へ静かに頼み込んだ・・・誓えと先ずは見返した陽緋だった。

その言葉に戸惑いつつ、誓いのように守ろうと思えた二人だった。
それは子供の為に・・・彼女達の為に・・・それぞれの先の為に・・・



陽咲を預け清瀬に会いに向かう陽緋だった・・・シスター達に笑みを浮かべた清瀬が居た事に辛くなった。
それは七瀬が迎えに来ていなかったからだ・・・

立ち止まり項垂れた陽緋を優しく抱き止めたシスター・・・背を優しく撫でて呟いた。

『親子の絆は消えないのよ・・・
ごめんね、預かりは限界みたい・・・引き取り手が増えたの・・・小さいと里親も増えるから・・・』
『大丈夫です(笑)、だからもしもと・・・だけど本当に居るとは思わなくて・・・』

『七瀬さんの写真を見せられたわ・・・臨月と知ってた・・・だから、そのままに出て行った事だけを話したわ。
それは三回もあった・・・』
スッと出された写真に驚いた・・・隠し撮りのように見えた写真・・・

『全部の非常事態に備えてね(笑)。神父様がなさってるの・・・ほら、暴力とかで逃げ延びてくる人もいるから証拠の為にと(笑)』
そうなのかと笑う陽緋に笑み返すと、清瀬を抱いたシスターがやって来た。

そっと腕に抱く・・・陽咲よりは大きいが、やはり年相応の成長はなかった。
必要な書類さえ預けてあった事に驚いた・・・それでもホッとして抱き締めた。
泣かない事も似ていた清瀬を眺める・・・

『自分を知ってる顔つきよね(笑)。子供らしく・・・頼んだわ』
『はい(笑)。七瀬から』
『連絡するわ(笑)。余計に安心はするでしょう・・・
上手く逃げ延びて会えるといいね』
笑みの優しさに清瀬は眠りだした様子に皆で微笑んだ。



抱かれた清瀬を眺め驚く人達に笑み返す・・・本当に双子だったのだと。
それでも可愛い小さな子に笑みを浮かべた人達は優しく迎え入れてくれた事に感謝した。


部屋で眺める陽緋を、ジッと見つめる瀧川に口を引いて黙った。
陽咲は清瀬に触れて眠った・・・重なる小さな手に笑み、二人へキスをして眺めていた。

『親友の子か?』
『 ・・・』
『双子として育てんのか?』
『月が合わずです・・・黙っててごめんなさい・・・』
全部を知る物言いに観念した彼女の呟き・・・口数の少ない陽緋が声にした事で、本当に悩んでいる事なのだと知った。

『早産だったろ・・・』
『本当なら二ヶ月違いで清瀬が上でした・・・同じ早産で・・・
今は余計にバレる怖さが先にあって・・・』
『戸籍に載せたら、どっちかは養子扱いになるよな・・・』

『シスターが準備してくれました・・・時間を変えて翌日に・・・』
『それなら可能だからか?』
『逃げ延びて出産する人達の為の保護としてと・・・そう聞きました』
産んだのだという証拠として書き加えてくれていたのだ。
そして名前さえ陽緋の名を記していた・・・

『もしもを考えてたのか・・・』
『 ・・・』
それ以上は話さなかった陽緋を眺め、フーと静かに息を吐く瀧川だった。