tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

lose 3

2017-01-16 07:46:06 | lose
無駄に広いマンションの一室だった事に驚いて彼女は眺めていた。
この広さにも関わらず部屋は一つしかなかった・・・・
物置のように広いウォークインクローゼットだった・・・

手早く説明して、申し訳無さげに彼女をレンヤが案内していた。
寝室へ行きドアを開く・・・
「セミではありますが、取り合えず(笑)シングルは準備してはあります」
「ここを使えと・・・一緒に・・・」

「体調のチェックは近場が一番かと・・・・ただ、同じベッドは不味いかと隣ではありますが(笑)置いてみました・・・・ヤバい時は直ぐに飛んでくるので連絡して下さい。
これは貴女の携帯です(笑)、これからは こちらをお使い下さい」
スッと携帯を渡すレンヤ・・・・

「番号は入れてあります。もちろん医師の番号も(笑)名前は・・・カナタと言います・・・親友でもありますので、遠慮なく・・・ それと・・・・」
迷うように彼女を見つめるレンヤを見返した・・・・

「ソウは睡眠薬を飲みます・・・もちろん眠気を誘う程度ではあります・・・
出来れば極力・・・飲ませないで寝かせて頂くと・・・」
「(笑)やってみます、夕食は・・・」
「今まではココで食べさせた事はありません・・・もともと食べないので、外で無理矢理食べさせてココへ連れてくるので・・・」

「作りましょうか?」
「大丈夫ですか?貴女へ負担が・・・」
「変な考えをしないで済みますし・・・考える時間が潰れる事は私にも助かりますから・・・」
「ならば頼みます(笑)、戻る時間等は早めに連絡は入れるようにしますね・・・・」
そう言って彼女を見つめるレンヤは、ゆっくりと頭を下げて礼をした。

「生きて頂き感謝します・・・・何より・・・ソウを生かして頂き感謝します」
「見てて辛くないですか?」
「すみません・・・どんな理由があっても・・・親友を連れて逝かれる事は避けたいので・・・
貴女へ辛さを強いて申し訳ないが、それで生かして貰えるなら利用させて頂きます・・・」

「私に出来るか分かりません・・・隙をついて私が・・・・」
「 ・・・・何度も引き留められた貴女なら・・・それは大丈夫のような気もします・・・」

「彼は・・・もしかして・・・薬で・・・」
「数回ほど・・・食べず押し黙る日が続くと迷いなく自分を落とします・・・
その日が来ないよう頼みます・・・」

ハァというため息に似た息を吐く彼女・・・・レンヤが驚いて眺めると笑みを浮かべる彼女と目があった。

意思を固めたような笑みにも見え・・・不思議と不安は消えた気がした。
もう一度頭をさげてレンヤは部屋から出て行った。

「少し待ってね・・・・私の最後の仕事にしたいと思えたから・・・
助けられるなら・・・彼を助けたいから・・・あと少しだけ・・・」
少しだけ時間をと、祈るように外を眺める彼女だった。



見晴らしが良い高層マンションだった・・・・人目さえない。
遥か下にあるモノは玩具のように小さく見えた・・・・

取り合えず自分の荷をほどく・・・少し大きめのスーツケース一つしかない彼女の荷物だった。
仕舞えと開けられた場所へ片していく・・・・その下にあるケースへも積めていった。

確認する事はない・・・寝室から出た彼女はキッチンへ向かう・・・
立派なキッチンに存在を示すように置かれた冷蔵庫もあった・・・
鍋やフライパン・・・食器さえ無いに等しいほどの様だった。

冷蔵庫を開ける・・・並ぶ缶は全てアルコール・・・かろうじてあった瓶もアルコールだった・・・
軽く引いた野菜室さえ冷やすモノはなかった。
想像はついていたが、眠るだけに帰る彼の部屋なのだと思えた・・・

自分と重なる・・・・口煩い友人の言葉が甦ると苦笑いしか出なかった。
「すみません(笑)失礼します・・・」
ふいに入ってきた男に驚いて身構えた・・・・携帯が鳴り眺めるとレンヤの名前が出された。

「もしもし?」
「すみません、連絡が遅くなりました・・・もう着きましたかね(笑)
それは私の部下でシュウと申します。
必要なモノを揃えて頂きたく買い物はシュウをお連れ下さい。

荷物運びを致します・・・・何もないので・・・・カードを持たせましたので支払いはそれでお願いします・・・
・・・・・ラナさん? すみません、驚かせましたかね。予備の鍵は持たせたので・・・鳴らさずに入りましたか?」

「大丈夫です(笑)」
「ではお願い致します・・・」
切れた電話に笑むと、申し訳なさげに苦笑いをしている人を眺めた。

「すみません(笑)シュウと言います・・・・チャイムを鳴らして来るのを忘れました・・・・
今の電話って・・・・」
「はい(笑)レンヤさんでした」
「あー・・・」
ヤバいと 肩を落とす彼に微笑んだラナだった。


次々と買い込むラナに、笑みながら手にするシュウだった。
一度、車へ運び入れ新たに場所を変えて買い物をする。

「皆で食べる事はありますか?」
「今までは(笑)外でしたからね・・・一緒なら食べさせて戴いてました」
「んーなら予備の食器は必要かな・・・」

「いえ、取り合えずは二人分でいいと聞いてます(笑)
ラナさんが慣れるまでは入り込むなと言われてるので気にせずにボスの力をつけて頂けますか?」

「(笑)彼はどんな人?」
「俺たちを守る方です(笑)迷わずに第一に・・・だから申し訳なくて・・・」
「守るのに、彼に守られるから?」
そうだと苦笑いするシュウに笑み返しながら、必要なモノを揃えた。

「部屋を綺麗にしてたのは誰?」
「あー交替でしてました。知らない誰かを部屋に入れたくなくて・・・」
「じゃ掃除用具はあるのね(笑)」
「はい(笑)人として必要なモノだけを頼みます・・・」
「部屋では何を飲むの? お酒以外よ?」
「 ・・・・」

「それ・・・真面目な話?」
答えずにうつ向くシュウに驚いた・・・好む モノを聞いて買い揃える彼女・・・
だが食品に関しては聞いて来ないので彼女も眺め考えていた。

「もしかして好き嫌いが多いの?」
気づいた彼女がシュウへ聞いた・・・苦笑いをして頷く事に呆れ驚いた。
特別にと聞き出したラナに、驚いたが彼女は構わずに買い込んだのだった。

買ったモノを仕舞い込む二人・・・ソウの話だったがシュウは嬉しそうにラナに教えた。

「それは影口か?」
突然会話に交ざる声に驚いて、食器を落としそうだったシュウが慌てて抱き込んで守った。
笑いを堪えて冷蔵庫へ全て詰め込んだ彼女は洗った食器を拭き出した。

「で、出ましょうか?」
「終わったのか?」
「まだ・・・・」
「もういい・・・お前は戻れ・・」
「へっ? ・・・・・あ、はい・・・失礼しました。
ラナさん、俺の番号はこれです(笑)買い物をする時は連絡を貰えますか?」
「(笑)大丈夫よ・・・」

「えっと・・・・」
「あー、レンヤさんの命令・・・」
「はい・・・すみませんがお願いします・・・・」
丁寧に言ったシュウは帰って行った。


「残りはこれだけか?」
そうだと苦笑いする彼女に笑むと、ソファーへ身を投げ出してしまった。
お湯を沸かしていたので、ハーブティーを彼へ持っていった。
良い匂いだと笑み静かに口にして微かに笑みを浮かべた彼を眺めながら片付けをした。

「連絡なかったけど、食べて来たの?」
「当分はいい・・・慣れるまでは家事はいいから・・・」
様子の違う気がした彼女はレンヤへ連絡をした。
携帯はサイレントにして身へつけた彼女だった・・・

消化のいいモノをと作り始めた彼女を眺めるソウに気づいた。
「(笑)食べる?」
「んー・・・・・」
「そっ?」
どっちでもいいぞと笑みを浮かべ彼に構わずに作るラナだった。

小さな土鍋をカウンターへ運んだ。
ダイニングテーブルではない事に驚いて彼が座りこんだ。

「何でココだ?」
「あの広さは寂しい・・・
ついでを言うとココなら、片しも早く出来るから・・・」
彼の分の食器をランチョンマットへ並べ自分の分も出して行った。

食べている彼女を眺めるソウに呆れ、彼の分をよそうと手へ持たせ箸を持たせた。
「右利きだった?」
何も言わずにそうだと頷く彼に笑み、食べろと促した。

「見られたら食べにくいの(笑)、一緒なら平気なんだけど・・・」
冷ました麺を彼の口へ放り込むと、自分もと食べ始めるのだった。

「あ、ごめんなさい・・・味の好みは聞いてなかった・・・」
「気にすんな(笑)旨いよ・・・出汁も効いてる・・・」

ゆっくりと食べる彼に笑み返した彼女は安心したように食べ始めるのだった。
「悩みながら食べない(笑)、それは今は端に置いとけば?」
「 ・・・」
驚いて声にならない彼は彼女を眺めフッと笑みをこぼした。

食べ始める彼にホッとしたラナだった。


寝室のさまに驚いて固まる彼がいた・・・・着替えを手渡して有無もなくバスルームへ追いやる彼女だった。

出てくると、ベッドは彼が直ぐに眠れる状態だった・・・
笑みを浮かべた彼女もバスルームへ消えていった。

髪を乾かす彼女・・・緊張は解れず、それでも諦めて戻った・・・
寝室から入るので、バスルームと直結した造りだ・・・出ればベッドが出迎える・・・・

自分のベッドがあった場所・・・彼との隙間が閉ざされていた事に驚いて眺めていた。
「安心をくれ・・・」
小さな囁きだった・・・

「寝る場所が違う(笑)」
「抱いて寝たい・・・」
「 ・・・」
「迷うな・・・それ込みで助けてくれ」
「必要?」
そうだと微かに頷く彼に驚いた・・・静かに彼の待つ腕へ入ると目を会わせた。

「お金が交じってる・・・体を売った覚えはないのよ?」
「悪い・・・
だけど、寝室なら・・・ココでならソレは切り離していいか?
買ったつもりもない・・・助けろ・・・」

「押し潰されないように、ココで住むのよ?先に落ちてどうするのよ・・・」
項垂れて言葉にも出来ない彼を優しく抱き返した彼女に驚いた。

「愛した人が中にいるのに・・・こーしてても怖さはないのが不思議・・・
このまま寝てみたら?」
「眠気が・・・」
「大丈夫(笑)」
背を撫でる彼女の手に意識も薄れていく気がした。

「温かいね(笑)」
「人・・肌・・・だからな・・・」
ゆっくりとだが眠りに誘われて行く彼に笑み優しく撫で続ける彼女だった。



身が軽いと笑む彼が目覚めた・・・背から回された彼女の手を外し寝返りをした。
隙間へ手を差し込んで彼女を抱き込んだ・・・穏やかな寝息に笑み優しく口付けた。

「んっ・・・・」
離れるはずもなく絡ませていく・・・両手で彼の顔を挟むと目を合わせ防いだ。
悪戯な子供の笑みに微笑んだラナに、優しく口付けをする・・・それを許したばかりに先へと襲うソウだった。

巡らせていく手に翻弄されていく・・・力さえ抜け彼女は抵抗もせずに彼へ身を預けていった。
互いに解放されたように求める・・・ソコへ落ちていく二人だった。

寝落ちした彼女へキスを落とし、謝る小さな囁きがあった。
静かに気づいた彼女が苦笑いをして囁きに似た小さな声で彼へ言った。

「この部屋で起きてる事は夢の中にある(笑)そう思えば多少の気持ちは楽になると思えない?」
「夢・・・・」
「本当に愛し合ってる私達じゃないでしょ?だけど、何かから切り離す為の行為とも思いたくない・・・悲しすぎるから・・・」

「夢だけで・・・」
「先は分からないもの・・・傷を増やしたくないって気もするから・・・置き換えてくれない?」
「嫌じゃないのか?」
「なかった・・・・触れられても・・・何でか・・・辛さや悲しさも・・・一人っていう寂しさも貴方は私の隙間を埋めてくれてるのかな・・・」

「冷たいはずのラナの体が温かいな(笑)」
「そうね・・・寒さはない・・・
・・・・仕事よね、朝食・・・」
支度をと、起きようとした彼女を掴まえた彼に驚いた・・・

なんでと彼を眺める・・・悪戯な目に代わる・・・時間だと彼を引き離して彼女は準備をしに寝室を出たのだった。



時々、チェックだとカナタが来る事に呆れ睨みを効かせたソウだった。
それでもラナまでを確認していく事に気づくと、多少の我慢はして仕事へと素直に出て 行くソウを見守ったカナタだった。

薬をチェックするカナタが、家事をしている彼女の邪魔にならないように会話をする。
「減ってますよね(笑)」
「君に負担は?」
「ないです(笑)静かに寝ますから」
「襲ってない?」
「 ・・・」

「してるか・・・弱い方にして飲ませようか?」
「様子見を(笑)、時々内緒で飲ませてもいます・・・量は半分以下ですけど・・・
すみません、ネットで読んで(笑)崩して使うという人がいたので・・・・駄目でしたか?」
驚いて声に出なかった・・・

「自分から飲もうと彼はしてました・・・・多めに取って・・・嫌そうに・・・
だから飲まなくて済むならと・・・話をしたり・・・少し飲んでみたり・・・
ホットにして体も温めると眠気に誘われて静かになります。だから・・・」

「子供を抱くように?」
そうだと苦笑いをする彼女に驚き眺めた。

「辛さは互いを消してます・・・
大丈夫ですよ、全部に付き合ってる訳じゃないですから心配しないで下さいね・・・」
「君は寝てない?睡眠不足じゃないか?」

「いいえ(笑)背中に居る人肌が優しいと思えるようになりました。
彼を思い出して・・・寂しいと辛くて起きる事もありましたけど・・・そっと大丈夫と彼が呟くので・・・不思議と睡魔に襲われます(笑)
時々・・・目が覚めて・・・彼の寝息を確認する事もしてます」

「寝なきゃ駄目だろ・・・」
「大丈夫ですよ(笑)ちゃんと眠れてると確認したら普通に自分も寝てますから・・・
ちゃんと疲れも取れてます(笑)、強いて言うなら・・・バスルームに鍵は付きませんか?」
可笑しくて笑い出したカナタだった。

「真面目な話です(笑)、変態さんと暮らしてる気がしてきます・・・」
「(笑)何をしてる?」
「脱衣場でローブを広げて待ってます・・・」
「中に・・・は・・・」
「かろうじてセーフです(笑)」
アハハとまた笑うカナタに笑み返した。

「悲しみや辛さから・・・多少は離れられてる?」
「残念な気持ちが残ります・・・」
「ちゃんと(笑)生きれてるね・・・
互いに生かせる意味を・・・君は理解して過ごせてるようだ・・・」
「彼もそうだといいけど・・・」

「少し前の事だね・・・
地位を確立したくてソウを狙うが・・・今は手放せず離しても貰えないんだ。
だから辛くなる・・・助かったよ・・・切り換えが早くなったようだ・・・」

「(笑)精神科のお医者さまでしたか?」
「今は外科にね(笑)」
「それはソウさんの為に・・・」
そうだと頷くカナタに悲し気に笑み返した・・・

カナタの携帯が鳴る・・・暫く聞いていた彼はふいにラナへ視線を飛ばした。
その事に焦り慌て目を反らした・・・
苦笑いをするラナは、家事を続けたのだった。

「すまない(笑)。今日は家から出ないで欲しいと連絡を貰った。
自宅のチャイムも全部無視する事・・・」
巻き込みを避けたいのだと気づいた彼女が笑み返し家事をするのだった。

夕食を済ませラナへ話してからカナタは、そっと帰っていった。
ソウの仕事は何かと聞いた事は無かった事に気づいた彼女がいた。

もしかしてという思いが過るが、それは知らぬを通そうと・・・自分の生活をしようと心に決めた。