tamiのブログ

このブログ・・・妄想ー空想大好きな私が、勝手に楽しんで・・・勝手に文字にしています。ボロボロですが(笑)

exceed 1

2017-02-21 07:51:10 | exceed
車から出された・・・・・余りの寒さに身が一瞬で凍り付くかのように固め静かに耐えた・・・・

往来の激しい交差点付近に車は停められ、女性が出て来たのだ。
車中から放り投げられたブーツやマフラーに回りの人達が呆れ眺めていたが、彼女は構わず片方ずつ履き替えていく。
車は走り去っていった。

ジロジロと視線が飛ぶなかで、足を入れファスナーを ゆっくりとあげていった。

吐く息さえ凍り付くと思えるほどに、微かに光りを帯び消えいく息は真っ白だった。
帽子を目深に被りマフラーをする。

よく見れば交差点近くではあるが、身支度をしているように見えた・・・横断する人から青信号を待つ車・・・・それて流れていく車から・・・それぞれの運転手達、それ以外の人達までが その女性を驚いて眺めていたのだ。


長い髪の女性はタートルセーターを着て、デニム地のスカートを履いていた。
この寒い中・・・・上着さえ着ずにいた彼女だからか、余計に目立った。


横断歩道を渡る・・・・

人質の祖母を助けるべく彼女が渡り始めた・・・

別の車の中で口を塞がれて泣いている祖母が見えた・・・・。
最後に会えたと、微かな笑みで別れを告げる彼女に気づき、駄目だと首をふり引き留めている気がした。

突き付けられているナイフが鈍い光りを魅せていた。
顎で行けと促す車中の男たち・・・

指示され歩いている彼女に、一台の車が彼女を消そうと向かってきていた事に誰も気づかなかった。


誰かの気付きで歩道に居る人達や、横断歩道を歩く人達が叫び声をあげた。
遥か先から信号を無視し暴走している車があったのだ。

幅広い車道・・・・遠く感じる長い横断歩道・・・
だからか非常事態が起きていると、誰もが不安になり動きを止めていた。

その中で一人 足を進める女性が目立っていた。
迷う事なく・・・ゆっくりと歩を進ませる女性に誰もが驚き声も出なかった。

少しして、誰かの止める声、叫び声、心配している声が辺りを響かせた・・・・それでも迫り来る車に怯え、掴まえて止めようとする人は現れなかった。

危ないと早く逃げろと叫ぶ人達で溢れ始め・・・・走り去ろうとする男たちだったが、停車している それぞれの間に人が滲むように入り込み車は出せなくなった。

何より人質とバレないように、男たちは彼女の祖母を黙らせた。


赤信号で停車している車の間を、高速で走り抜ける車・・・・障害物を薙ぎ倒すかの勢いは、停まらなかった。
急ブレーキが、あちこちで響かせ始めた。
パトカーが必死に停めようとドライバーに声をかける。

しまいには車止めを使うが、大型車なだけに効果は薄かった。
対向車さえ 衝突し停車した車は、退けろと云わんばかりに体当たりし突き進んでいた。

蛇行する車・・・・激しい衝撃を与えながら前へと他車を飛ばしているように誰もが思えた。
獲物に狙いを定めた車が、より動きを早めた事に驚き出した。


車道のど真ん中で、彼女が歩みを止めた事に驚く人達・・・
微笑んでいた彼女は、祖母を見つめ ・・・・そっと震える手を握り締め、ゆっくりと目を閉じた。





高台にあるホテルに彼女はいた。

ピンと張りつめた空気が辺りをつつんでいた。
どこかの国の洋館のような佇まいのホテルは人気も高く、そこは綺麗な朝陽が見れる場所でもあった。

早く目が覚めた人や朝陽を見たい人達は、ホテル前の砂浜へ散策に出る。
日ノ出前にも関わらず、ホテルの宿泊客は朝陽を求めて出て来ていた。

薄暗さは幻想的にみえた。
海の向こうは暗闇を消すように静かに優しく見えてきた。
海の色を変え・・・空さえ太陽を迎えるべく、準備をするように待っている気がした。

もうすぐだと気づく人達は砂浜へ身を置き、その時を待った。

ふとホテルを眺めると、部屋から眺める人達に気づいた。

『映画のワンシーンみたいね(笑)』
優しい声音の呟き・・・・
『何が?』
『カメラの音がしたから、見たら(笑)ほら・・・・ホテルの方を撮ってる。
だから何を撮ってるかなってみたの・・・あの人じゃないかな(笑)』

友達の呟きを聞きながら、仲間と視線の先を追った・・・・
最上階のベランダが開け放たれカーテンは揺らめいていた。

ベランダに立つ女性が、朝陽を求めて眺めているように見えた。
長い髪が風を受け靡いていて・・・・真っ白な何かを羽織り真っ直ぐに海を見つめていたのだ。

『一人かな、ほら映画なら後ろから(笑)抱きつくじゃない』
『いいよね(笑)最上階なんて・・・眺めも最高だろうね』
仲間達の彼女が想像を膨らまし笑みながら呟いた。

『泣いてる?』
『・・・・』
その言葉に皆が驚いて呟いた人を眺め、改めて女性を見上げた。
『お前には、そう見えんのか?』
『あれ、落ちないよな・・・』
『やだ(笑)綺麗な朝陽が見れる場所で有名なのに、そんな人は居ないわよ(笑)』
『そうよ、止めてよ(笑)』
『・・・お前(笑)妄想し過ぎだぞ!』
『出るぞ(笑)』
その声に皆は水平線から覗き出してきた太陽に目を向けた。


空に ゆっくりと明るさを取り戻すように見えた。
一瞬にして神聖な場所のように静けさで包まれたようだった。

誰もが口を閉ざし、優しく輝く朝陽を眺めていた。
照らされていく波間の鮮やかさに、彼女達の口許が緩み出す。
微かな笑みは穏やかな彼女達に、優しく降り注いで来るようだった。

『あっ・・・・』
その溢れた声は、一瞬にして場を消した事に彼女達はムッとして声の主を睨み、今度はため息をして朝陽へと目を向けた。
仲間達が呆れ視線の先を眺めた。

風に揺られ舞うように、流れるように靡きながら 何かがフワリと飛んでいるのが見えた。

『ん?気づいてない?』
また呟く彼の背を叩くと、彼女は彼に埋もれながら朝陽を眺めたのだった。

『気になるのか?』
仲間が そっと呟いた・・・・
『ん・・・別れを告げてるように見える・・・・自分に? 悲しそうに笑ってる気がする・・・・』
『視力良かったか?』
『いや・・・・ただ、そう見える』

『涙を流して?』
『んー・・・・・・流してじゃなくて、出ない?』
『何かに辛すぎて? お前には、そう見えるのか?』
『あー確かに笑っては居ない(笑)』
隣に来た仲間が呟き、写真を撮ったモノを二人に見せた。

表情のない顔だった・・・・
『ちょっと!その為に望遠出来るカメラを持ってきた訳じゃないわ』
怒りながら男達に言うと、カメラを取り上げて朝陽を取り始めた。

苦笑いしながら目を合わせ、視線を女性へと向けた。
『人形じゃないよな・・・・』
『えっ・・・・』
彼の呟きに驚いて、カメラを向けて数枚を撮った彼女・・・・

『良かった(笑)生きてる・・・・』
眺めていた彼の呟きに、苦笑いしながら見上げると 女性は眩しいのか手で朝陽を遮っていたのだ。

伸ばされた手のひら・・・
微かに笑み、彼が同じように朝陽に手を翳した事に笑う仲間達だった。

皆も同じようにする・・・・指の間から漏れてくる光りの眩さに目を細め笑みが溢れた。

『あーぁ(笑)部屋に戻っちゃったわよ?』
彼女の呟きに慌て振り向く彼を眺め・・・・彼の仲間が笑いながら見つめたのだった。