3月22日(月)市内小学校の卒業式が行われた。
私たちの関城地区でも今年はコロナ禍のため、卒業生、保護者、先生方だけのちょっと寂しい式になると聞いていた。
そんな折、私の携帯がブルブルと鳴った。会員でもあり、長らく保護司を務められた田崎満男さんからであった。
「毎年、卒業式に 彼岸さくら(伊豆多賀という品種)の枝を西小、東小に 届けていたが、今年、事情があり、その木を切ることになった。ついてはコロナ禍で卒業する児童に「里山を守る会」としてその枝を送ったらどうだろう? というご提案であった。
詳しく事情を知るため、自宅に伺った。 久しぶりに会った田﨑さんは緑内障のため、ほとんど視力を失っていた。造園業を営んでいたが、たった1年で急速に視力が衰え、車の運転も不可能になり、仕事も辞めた。 と淡々と話しをされた。
しかし、声も、話し方も全く元気で、私の知る明るい田崎さんだった。
伊豆多賀というさくらは丁度、卒業式の頃、花が咲くので、その枝を切り、児童一人一人にプレゼントしてはどうだろう。というご提案である。
その桜を見たこともなかったので田崎さんを軽トラックの助手席に誘導し、道案内をお願いした。
その木は鬼怒川河川敷にすくっと2本立っていた。遠くからもよくわかるほどの大木に育っていた。
私が伺ったのは3月初旬だったので、まだ蕾は固かったが、てっぺんの方はちらほら咲き始めた蕾もあった。
今年も温暖化の影響でソメイヨシノの開花も例年より10日以上早いとの予測もあり、この伊豆多賀の開花が卒業式にぴっ
たり合うかどうかわからない不安もある、とのお話しであった。
「私一存では判断がつかないので、理事会に諮り、後日お返事をします。」と言って、自宅にお送りした。
早速、定例の理事会にこの話をしたが、意外と反対の声は出ず、せっかくのご厚意なので、受けようとなった。
その桜を見たいという意見も出たので理事5人で現場に出かけ、「これなら何とかなる。」という楽観的な意見が支配した。(その時は、卒業式の前日、人数分の枝を切り取り、水を入れた容器に入れて、自由に持ち帰ってもらう、との考えであった)
田崎さんに理事会の結果を報告し、卒業式にぴったり花が咲くことを願った。
ところがである。
その晩、田埼さんから電話があった。「息子に今回の話をしたら、今年は桜の開花が想像以上に早く、3/22日の卒業式には散ってしまう恐れがある。ここ数日のうちに、枝を切り取り、冷蔵庫に保管し卒業式に合わせ、開花させる方法でないとだめだ。」という。
息子さんは「花の会」という会社に勤務し、様々なイベントでその催しに合った時期に花を咲かせてきた経験があり、その道のスペシャリストだった。
思いもよらぬアドバイスに若干のパニックに襲われたが、気をとりなし、息子さんに詳しく話を伺うべく、翌朝、出勤前にお邪魔した。
息子さんの話によると、今の蕾の状況では、明日にでも適した枝を選び、2℃から5℃の冷蔵庫に容器に水を入れ保管し、当日のニ、三日前に外に出し、太陽に当てるという。(一枝に2,3割の花が咲き始めているのが理想という)+
早速理事会に諮り、翌日作業を開始した。 幸い、我が家に約一坪の冷蔵庫があり、室温を2℃~6℃に設定し、その中に長さ約40㎝~50㎝に切り取った枝約300本を大きなポリ容器3個に入れ、湿気を保つため、ポリ容器をビニールで包み、保管した。
まったくこうした経験がない我々にとって、唯一、息子さんの助言が頼みの綱だった。
毎日、冷蔵庫をチェックし、果たして順調なのか不安の日々が続いた。蕾の状況を見に来てくれた息子さんのアドバイスにより、冷蔵庫から出す日を3/18日に決定した。
当日、竹澤事務局長に手伝ってもらい、冷蔵庫から大きなポリ桶2つと小ぶりなポリバケツ計三個を軽トラに積み、五郎助山に向かった。
一部の枝に咲き始めた蕾もあったが、全体としてはまだ蕾は固く、果たして4日後に3,4分咲きになるのか正直不安だった。
19日、固かった蕾も徐々に膨らみを増してきたが、まだ理想の開花にはなっていない。(大丈夫だろうか?)
20日、全体の枝の一部に開花し始めた蕾が見え始め、確かな手ごたえを感じ始めた。
21日、予定通り9時に、理事が集まり、一本の枝に2割から3割開花した桜を枝の長さと蕾の数を整え、一本づつ水を含ん
だキッチンペーパーで切り口を包み、更にアルミホイルで包み、最後にビニール袋に入れ輪ゴムで留めた。
そして一本づつ、「卒業おめでとう」と書いた札を取り付け、西小(48名)、東小(59名)計107名分の桜の小枝が完成した。
そして3/22日(月)卒業式当日、午前8時、西小、東小にお届けした。
後日、西小、東小の校長先生より丁重なるお礼のお言葉を頂いた。
コロナ禍での卒業式に文字通り「花を添える」ことが出来、うれしかった。
この度のサプライズのご提案を頂いた田崎さんそして息子さんに御礼を申し上げ、無事その務めを果たしたことをご報告した。
以下西小ブログより
卒業生へ~サプライズの贈り物~NEW
卒業式に、文字通り花をそえてくださいました。
地域の皆様に、心から感謝いたします。
卒業式NEW (東小HPより)
卒業生は、厳かな雰囲気の中、立派な態度で証書を受け取り、この関城東小学校を巣立っていきました。
卒業生のみなさん、ご卒業おめでとうございます。みなさんのこれからのさらなる活躍を祈っています。
里山を守る会の方々より、卒業生に一枝ずつ桜の花をいただきました。ありがとうございました。