<3789> 野鳥百態(50) 水上池のコアジサシ
鰺刺のダイブ時には失敗す
この間、奈良市の水上池に出かけたらカモたちが去って久しい水面で四羽のコアジサシ(小鰺刺)が池面を占有して思い思いに飛び回り、小魚の採餌に勤しむ姿が目撃された。ハト大であるが、ハトよりスマートで、全身が白く、頭部に黒い帽子を被った感じである。仲間には北極から南極に飛翔するものもいる。ツバメ返しのツバメと競わせたらどちらに軍配があがるだろうか想像が膨らむ。
池の上空5~10メートルほどをゆっくりと飛び、それはのんびりとして見えたが、その瞬時、中空で止まり、羽を翻したかと思うと、水面めがけて一直線、激しく頭から突っ込み、水飛沫を上げて小魚を嘴にして飛び上った。見事な狩りである。
小魚は体長10センチばかり。アユをよく捕るのでアユタカ(鮎鷹)の異名でも知られるアジサシであるが、水上池にアユの話は聞かないし、生息する環境にもない。果たして如何なる小魚か。その漁の様子は見ていて飽きない。
持参したカメラに望遠レンズをセットして撮影に入ったが、上空を飛ぶ姿を追ってピントを合わせる難儀の末、何コマか撮った。何回もダイブするということはときに失敗することもあることにほかならず、そこにはコアジサシのそれなりの努力が認められる。
ときに池の中の棒杭で羽を休め、また、捕食の漁を始める。営巣地は砂礫地で、別の場所にあり、小魚が豊富な水上池に通って来るのだろう。『大切にしたい奈良県の野生動植物』(奈良県版レッドデータブック2016改訂版)によると、大和地方(奈良県域)では絶滅危惧種で、環境省でも絶滅危惧Ⅱ類に指定しているので全国的に少なくなっている野鳥の一つということになる。
アジサシについて、この改訂版には「小型のアジサシ類で、日本には夏鳥として渡来し、本州、四国、九州で繁殖する。海岸、河川、湖沼などの水辺に生息し、水中にダイビングして小型魚類を採餌し、砂礫地を利用して繁殖する」と見える。水上池の近辺では近年少数の繁殖が確認されていると言われている。
写真は水上池で小魚の採餌に当たるコアジサシ。左から小魚を狙う水面へのダイブの瞬間、小魚を嘴にして飛ぶ姿、池中の棒杭で羽を休めた後、また採餌に飛び立つ姿(いずれも水上池)。