大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

日ごろ撮影した写真に詩、短歌、俳句とともに短いコメント(短文)を添えてお送りする「大和だより」の小筥集です。

大和だより ~写詩 写歌 写俳~ 小筥集

2020年04月13日 | 植物

<3013>  大和の花 (1026) アブラナ (油菜)                               アブラナ科 アブラナ属

               

 西アジア原産の1、2年草で、在来と外来があり、在来は弥生時代に中国から渡来したと言われ、外来は明治時代のはじめ、ヨーロッパから入り、セイヨウアブラナ(西洋油菜)と呼ばれている。主に種子から種油を採るためナタネ(菜種)とも呼ばれ、広く栽培され、セイヨウアブラナではときに野生化しているものも見られる。また、花の観賞や食用にされるハナナ(花菜)もアブラナの一種で、最近よく植えられている。

 在来のアブラナは高さが1メートル以上になり、上部で枝分かれし、軟らかく大きい葉を有し、葉が茎を抱く特徴がある。セイヨウアブラナは葉に厚みがあり、黒っぽく、茎や葉が粉白色を帯びる。また、よく川岸などに野生化して群生しているセイヨウカラシナ(西洋芥子菜)もよく似るが、少し小形で、葉に柄があり、茎を抱かないので区別出来る。

 花期は4月前後で、茎頂や枝先の総状花序に、倒卵形の花弁が十字形の黄色い4弁花を多数、密に咲かせる。花にはミツバチやチョウの類がよく訪れる。実は円柱形のくちばし状で、熟すと裂けて粒状の種子を現わす。種子からは種油が採れ、灯火に使用し、江戸時代ころから電灯が普及する戦後間もないころまで、全国的に栽培されて来た。通称、ナノハナ(菜の花)と呼ばれ、大和平野ではナノハナに埋め尽くされるほどの時代があり、文芸作品などにもその風景が取り上げられている。

 例えば、江戸時代の俳人与謝蕪村は「菜の花や月は東に日は西に」と詠み、森川許六は「菜の花の中に城あり郡山」と詠んでいる。また、近代になってからは、大正3年、「菜の花畠に 入日薄れ 見わたす山の端 霞ふかし」の歌い出しで名高い唱歌「朧月夜」が歌われ、ナノハナは春を代表する花として親しまれ、菜の花畑の風景は日本の農村の原風景として、今もその歌は歌い継がれ、私たちの心に響いて来るところがある。

 なお、『万葉集』の10首に登場するナ(菜)は春を代表する蔬菜で、摘むことが詠まれているのでナノハナのアブラナには該当しないと思われる。『万葉集』にナノハナが見られないのは不思議である。 写真は菜の花畑(左)、観光用の花畑(中)、ミツバチが訪れる花(右)。いずれも明日香村。   菜の花の海に蜜蜂挑みゐる

 


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