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第二の矢を受けず

2010-08-12 15:07:54 | 古典
第二の矢を受けず

このところ様々なレベルの虐待やいじめ・殺人など、心痛む事件が多い。心のちょっとした
波立ちが、悪感情を増幅させて悲惨な事態をひきおこしてしまうようだ。

 仏教、とりわけ禅は「心を調(ととの)えよ」との教えである。たしかに、上手に心を調え
られたならば事件にまでは発展しなかった、と思われるケースも少なくない。

 お釈迦さまは、実に多様なかたちで繰り返し、心を調えることを教えられた。
 その中には、「調える」前に「心を乱さない」という手法もあった。

 雑阿含経の第十七に、『箭経』と名づけられた短いお経がある。

......お釈迦さまが弟子達に尋ねられた。

「人は誰でも、美しいものに出会えば楽しいと思い、痛い目にあえば苦しいと感じるだろう。
それでは、仏教を学んだ人とそうでない人との差はどこにあるだろうか?」

 弟子達は教えていただきたいと懇願した。
 そのお答えの要点は「第二の毒箭(毒矢)を受けない」ということだった。

「仏教を知らぬ人達は、楽しい事に出逢うとそれに執着し、『もっと欲しい』と"貪(むさぼ)り"
の念をおこす。同様に、苦に出逢うと"瞋(いか)り"の感情にとらわれてしまう。そうして、いよ
いよ混迷していくのだ。

 けれども、仏教を学んだ人は、外界の刺激でいろいろな感覚は触発されるが、いたずらに感情
を増幅させられることがない。それを、身受を受けても心受を受けずともいう。そこのところを、
第一の矢は受けても第二の矢は受けないと表現したのだ」......と。

 沢山の経典の中に、心を調える法が種々説かれている。だが、乱れてしまってから調えるより
も、乱さないで過ごした方がいいに決まっている。

「第二の毒矢は受けない」と自らに言い聴かせながら、心の乱れを防いでいくことは、お釈迦さま
の大切な御教えである。

高橋 宗寛