雑にゃん日記<俺ってズレてる?>

文章を書く練習で始めました。
いろいろな趣味や語りを書きたいと思いまーす

「文身」岩井圭也さん作、読み込ました。考えます。。。

2024-06-29 11:43:27 | 読書
岩井圭也さん作
「文身」
を読みました。
読書後、少し経ちましたので、思い出しながら読みます。

ちなみに「文身」は「KaBoSコレクション2024」金賞の作品となります。
本屋さんでは、結構ポップが多く絶賛と言う感じでした。

岩井さんの作品を読むのは初めてですので、岩井さんテイストと言うのがわからないという事もあり、手探りでした。

さて、どうでしょう?
物語の中で書かれる小説の主人公である一人男性・・・いや二人なのか。
その中で紡がれる、仮想の主人公男性。
そして仮想が現実にフィードバックされ、その物語が仮想を描く男性にフィードバックされる。
そして、その上に影響を及ぼし、一番上の位置するリアルの読み手にファンタジーと言う奇妙な感覚を覚えさせる。
そういう物語です。
つまり、複数の小説を通して、多段構成になって複雑な構成と思わせながらも、一段上の読み手に影響を与える・・・ちがうかな?取り込んでいくという人間の心を・・・小奇麗ではない心を引っ張り出してしまうような作品。
私は、そう読み解きました。
解説の方は、これを「浸食」と表現されていましたが、まさしく浸食されていく・・・そんな感覚を、第三者的に読み取り、最終的に読み手にまで浸食していく。
この作者さんは、良くプロットを考えておられると感じられます。
大変だったのではないでしょうかね。

内容は硬派でハチャメチャな人生を生きる主人公(達)が描く小説、自小説の話であり、その点では読みごたえがある物語。
そう・・・2/3ぐらいは。

2/3は、そいう物語でハチャメチャ人生をトレースします。
「まあ、こう話なのね」
と、アニメ好きが読めば・・・言葉は悪いですが、この程度の多段物語は良くある話です。
アニメのようなファンタジーに慣れていない人には新鮮かもしれません。
そして、最後の1/3には・・・嫌な感じがしました。
たぶん「ああ」なるんだろうなーと。

小説内の一説
「今回の候補作はいずれも、きわめて個人的な事情を描いている。(略)素人の日記と変わらないという批判もまた的を得ている」
これは小説の、そのまた小説の中の(裏)主人公が、新人小説賞の総評として書いているものです。
・・・これは、どういう意味だろうか?
作者は、どういう心情をキャラクターに語らせたのだろうか?
私には「自戒」に感じました。
この小説がそのように感じたからです。
この小説の最後は、本当に「日記」になるか、「ファンタジー」になるしかないわけです。
であるなら、本箇所は「日記」以外何者でもないと。

そして1/3の部分。
キャラクターの心情は重く、悲しみにあふれた心情でしたが。
最終的には・・・アニメ的に言えば「夢オチ」。
夢ではないですが、ファンタジー的なラスト。
夢オチの良くないところは、それまでの物語をゼロにしてしまう点。
それまでの盛り上がりも、伏線も、謎も、全てが「どうでもよい」状態にしてしまう。
確かに、夢オチ前までは「なになに?」「どれどれ?」と読み手を引き付けます。
でも、夢オチになった時点で、前の出来事は泡と消えてしまう。
忘れることのできない物語であったとしても、記憶に強く刻まれていようが・・・単なる思い出になってしまう。
前後で話が切れてしまう感じがします。
その点において、私的には悩みのタネになっちゃうんですね。
一気に覚めてしまいます。

そして、一番最後に・・・とってつけた1文があります。
小説内の一番上の読者を「浸食」する1文です。
そして「浸食」が確定する1文でもあります。
「小説っぽいなー」
と思います。
最後としては良いと思います。
合わせて「とってつけたような」文にも思えます。
もっと本文で感じさせてほしかったのに、最後で決めの1文は、少々いやらしい。
そんな感覚は、私だけでしょうかね。

総じて、面白い物語ではありました。
ただ、なぜかモヤモヤしてしまう物語でもありました。

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