57歳から始めるレンタルカートの世界

唄う物書きアマミヤユキト57歳で人生初のレンタルカートデビュー。

レーシングカートのフロントフェアリングについて

2017年07月24日 | 2017全日本選手権

カートは大雑把に分けると
「レンタルカート」(誰でも気軽に乗れます)

とレースに出場するための
「レーシングカート」(それなりの技量と体力も必要です)



にに分けてよろしいかと思います。
***
今回神戸スポーツサーキットで行われた全日本選手権。
その規則書を読んでいて、興味を惹かれたのが
「フロントフェアリング」です。
車で言えば
「バンパー」ですね。
材質は樹脂でできていて、それだけでも、カートが衝突した時、衝撃を和らげる機能があります。
写真は「エナジージャパン」チーム
の競技用レーシングカート

メカニックの方にお話を伺いました。
「規則書には、フロントフェアリングが正しく装着されていないと、ペナルティがありますね」
さらには、もっと興味深いのが
フロントフェアリングはコースインする直前
『”ドライバー”あるいは”メカニック”が、車検員”監視下”の元「組み立てエリア」で装着しなければならない』
と決められているのです。
「これはどういうことでしょうか?」
とお尋ねしました。
メカニックの方が明快に答えてくれました。
「フロントフェアリングは、衝撃を与えると、後ろにスライドする構造になっているんです。」
下の写真、フェアリングとフレームの間に黒い樹脂製の取り付け部分が見えると思います。



シャシーのフレームとフェアリングの間に溝のようなものが四ヶ所見えますね。
その部分がいわゆる「緩衝装置」になっている。
車が何かにぶつかるとフェアリングには前から後ろに力がかかる。
そのとき、この溝の部分に、フェアリング本体がはまり込む、という仕組み。
***
これをレース直前に選手自身、あるいはメカニックが、「正しい位置に取り付ける」という規則。
そしてレースが終了。
車検があります。
そのときフェアリングが
「斜めになっていた」あるいは
「後ろに押し込まれていた」
ということは……
みなさま、おわかりでしょうか?
つまり、レース中に
「どっかにぶつかりましたね?」
というのが一目瞭然なわけです。
***
カートレースのほとんどは
「イコールコンディション」で行われます。
出場するすべての車は
「タイヤが同じ」
「エンジンも同じ」
「燃料も同じ」
これは何を意味するのか?
当然”団子レース”になる、ということです。

***
つまりは
タイムトライアル、および決勝レースの結果は
「ドライバーの腕の差」
である、という厳しい現実がつきつけられている、ということです。
***
なおかつ、フェアリングは、ドライバーやメカニックが、車検員監視下の元「レース前に」「正しい位置」に取り付けている
訳ですから、車検の時、
もう言い訳はできません。
「何かにぶつかった」ことの証明になります。
***
極端なことを言いましょう。
自分は前の車を抜きたい。
レースなんだから当然です。
だから相手の車にぶつけて、リタイアさせてしまえ!!
ぶつけまくって周りの車をスピンさせまくれば、自分は1位になります。
***
当然これは危険な行為。
そこでペナルティが課される訳です。
接触した相手がスピンしたり、コースアウトでリタイヤすると、当然オフシャルにもわかってしまいます。
ところが、それと分からないような、微妙な接触、もしかすると「単独スピン」とオフィシャルが判断してしまうような場合。
それを公正な判断、スポーツマンシップに則ったレースとするための手段。
それを象徴しているのが
「フロントフェアリング」の装着、なのだと思うのです。
***
なぜ、ここまで厳格なのでしょうか?
僕も当初そう思いました。
全日本で戦う若い十代のレーサーたちは、明日の日本のレース界を背負って立つ人たちです。
それには、もちろんレーサーとしての技量はもちろん、フェアプレイの精神が求められます。
さらに現代のモータースポーツにおいて何が最も重視されるか?
F1やスーパーGTをよくご覧になっている方はお分かりでしょう。
ズバリ「空気力学」です。


1,000分の1秒を争うモータースポーツの世界において、いまや空気力学が勝利を左右すると言っても過言ではありません。
F1やスーパーGTのマシンをよくご覧ください。



実に細かな「フィン」要するにひれですね。
それがいくつも取り付けられています。
「こんなもん、なんでひつようなのか?」
と素人目にはおもいますが……

各メーカー、各チームは空洞実験によって、最適と思われる空気の流れをつくろうとします。
それを突き詰めて、「理詰め」で出来上がったマシンがサーキットに持ち込まれます。
ですから、その「小さな空力パーツ1個」がなくなっただけで、
もう、マシン本来の操縦性、速さは、実現できなくなるのです。
空力パーツをなくさないようにするには……。
答えは簡単。
「接触しないこと」なのです。
***
レース中は当然激しいバトルがあります。
しかし、21世紀のモータースポーツ、そのレーサーたちには、極めて高度なテクニックが要求されているのです。
毎週放送されている「スーパーGT」を見ればよくわかります。
レースで接触したマシン、ドライバー、チームは、必ずといっていいほど、順位を下げてしまいます。
最悪リタイアとなります。
最高速度300㎞に近い速度で闘う中、
「接触をせずに、前の車を抜く」
という、極めて高いスキル。
それを実現できるドライバーのほとんどは「カート出身者」だということ。
***
モータースポーツを最初に見始める人たちは
その
「スピード」
「サウンド」
そして
「派手なスピン」
とか
「クラッシュ」などに目が行きがちです。
***
車間距離を保って、それでいて、接触も起こさず、なおかつ、いつのまにか前の車を抜いている。
そんな「目立たない・地味なレース」をする人が、
じつは「強い、勝てるドライバー」なのです。
それを学べるのは『カートレース以外にない』と僕は思っています。


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