goo blog サービス終了のお知らせ 

毎週小説

一週間ペースで小説を進めて行きたいと思います

唐木田通り 18

2006-11-23 14:21:16 | 唐木田通り
「由起子さん、遅くなりまして、大分待ったでしょう」
「待ったけど、ここは懐かしくて、思い出に浸れて嬉しかったわ」
「それなら良かった、由起子さんは新宿が故郷でしたね・・ところでこちらの方はうまく話が進みまして、8月上旬に懇親会に出席できる事になりましたよ」
「そう、前進ね、私家に戻ったらこんな書類が届けられていたの、忘れ物を送ってきたのね」
沢村は受け取った書類に目を通すと、納得する様に2,3度頷いた。
「何か犯罪の匂いがしてきましたね」
「そうでしょう、尋常な書類じゃないわよね」
「これ、コピーしてもいいですか」
「好きにしてください」
「岐阜に行っていた様ですね」
「ええ、今まで全く縁の無い場所でしたから、何があるのかとちょっと不安にもなってきて」
「大丈夫ですよ、私が解決しますから、もう少しで真相に迫れます」
「そうね、頼りになる探偵さんね」
8月に入り、都心は夏休みで空いてきたが、沢村にとっては勝負の月になる。
名刺を作り、貿易コンサルタントという肩書きにしておいた。輸出入に関しては友人の佐藤に詳しく教わり、食品業界の事はデパートの仕入れ係に聞いておいたので何とか話せるだろう。
懇親会の夜、10分程過ぎてから会場に入っていった。立食パーティ式になっているので行動しやすい。
ウイスキーの水割りを飲みながらゆっくり一周してみたが、井上玲子の姿はなかった。期待と不安で久々の緊張感を覚え、気分は高揚していた。
仕入れ係と暫く雑談をしていると、明るいグリーン系のツーピースを着た井上が入り口に見えた。
いよいよだ、沢村は充分時間を掛けてから、仕入れ係に伴われて挨拶に出向いた。
「井之さん、貿易コンサルタントを紹介します。あなたの会社も今以上に中国市場拡大を考えているでしょう、彼は中国、台湾に精通していますから役に立つと思いますよ」

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする