今夜は彼女の家まで送る事になるのだろうか、同じ路線の、自分の住んでいる駅から15分程先の駅だから近いのだが、近い故に戸惑っていた。
演奏が始まり、女性ボーカリストのシャンソンが流れてくる。
寺井は歌を聞いているうちに、金縛りのような催眠状態に近い感覚に落ち入り、現実には戻らず逃避行に憧れて、遊牧民の民と化す、放浪の世界にさまよう様を一瞬夢見た。
「修さん、大丈夫、少し酔ったの?」
春子は心配そうで可愛い表情をしている。
「いや、君に酔ってしまったのかな」
「よかった、酔ってないのね、私も全然大丈夫よ」
春子は今宵も美しく、一、二ヶ月会っていないだけなのに大人びて、内面の変化や成長が大きく進んでいる印象をうける。
もう10時を回っていた。
歌舞伎町を左に歩いてすぐの改札口から駅に入った。春子はそんなに酔ってはいない様だった。
「今日もご馳走様でした」
「僕も楽しかったです、今夜は・・」
「お礼がしたいので、これから私の家に寄っていって下さい」
「でも、もう遅いし」
「土曜日だし、私酔ってないから大丈夫よ」
そう言うとさっさと電車に乗ってしまった。まあ今日は本当に酔っていない様だからついて行くか、と寺井は観念した。
急行で20分程だったが、降りると閑静な住宅街が続き、春子の住んでいる賃貸マンションの二回は女性専用との事で、足を忍ばせながら入っていった。
「そんな泥棒みたいな歩き方しなくていいのに」
「だって女性専用だっていうから」
「兄弟や親戚が来ることだってあるでしょう」
「あ、そうか」
「独身用の部屋らしく、六畳一間に台所、バス、トイレとこじんまり綺麗にまとまっている。
演奏が始まり、女性ボーカリストのシャンソンが流れてくる。
寺井は歌を聞いているうちに、金縛りのような催眠状態に近い感覚に落ち入り、現実には戻らず逃避行に憧れて、遊牧民の民と化す、放浪の世界にさまよう様を一瞬夢見た。
「修さん、大丈夫、少し酔ったの?」
春子は心配そうで可愛い表情をしている。
「いや、君に酔ってしまったのかな」
「よかった、酔ってないのね、私も全然大丈夫よ」
春子は今宵も美しく、一、二ヶ月会っていないだけなのに大人びて、内面の変化や成長が大きく進んでいる印象をうける。
もう10時を回っていた。
歌舞伎町を左に歩いてすぐの改札口から駅に入った。春子はそんなに酔ってはいない様だった。
「今日もご馳走様でした」
「僕も楽しかったです、今夜は・・」
「お礼がしたいので、これから私の家に寄っていって下さい」
「でも、もう遅いし」
「土曜日だし、私酔ってないから大丈夫よ」
そう言うとさっさと電車に乗ってしまった。まあ今日は本当に酔っていない様だからついて行くか、と寺井は観念した。
急行で20分程だったが、降りると閑静な住宅街が続き、春子の住んでいる賃貸マンションの二回は女性専用との事で、足を忍ばせながら入っていった。
「そんな泥棒みたいな歩き方しなくていいのに」
「だって女性専用だっていうから」
「兄弟や親戚が来ることだってあるでしょう」
「あ、そうか」
「独身用の部屋らしく、六畳一間に台所、バス、トイレとこじんまり綺麗にまとまっている。