田沢は後ろめたさもあって黙っていたが、その後紺野と会った時、母が入院する事になり故郷に一緒に帰るので、学校をどうするかはまだ考えていないと話していた。
話しに夢中になっている間に雨はあがり、高原の春らしい澄んだ風が体の中を通り抜け、美沙子は一瞬の幸せを感じた。
眼下には、山に囲まれた街並みが小さくよせ集まってひっそり暮らしている様にみえる。
「私、体が冷えてしまったので温泉で温まってくるから、後で私の部屋で食事しない?」
「そうだね、僕も一人では広い部屋なので寂しかったんだ」
美沙子は自分から誘うなんて初めてだが、気持ちが割り切ってきたのだと思った。
いつもより時間をかけて隅々まで洗った。髪も納得いくまで何回もとかした。
一体なんで、と自分に問いかけたいのを無視する事にした。
田辺は美沙子の変化に驚き戸惑っていた。
彼女はとても人気があり、自分が入り込むのは無理な気がして、よけい親戚的な立場にしていたのかも知れない。彼女も積極的に話しかけてくる事はなく、きょうは別人の様な女を感じた。
温泉に浸かってから彼女の部屋に連絡を入れたら、もうすっかり準備ができているので早く来て、
と嬉しそうな返事がきた。
部屋に入ってみると浴衣姿の彼女が待っていたが、眩しいくらい美しかった。
「この浴衣、夏休み用のを特別に用意してくれたの」
「まったく別の人かと思ったよ」
「もう子供じゃないでしょ、靖夫さん、私の事なんか相手にしてくれないんだから」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあどうなのよ、あなた紺野さんと映画行ったでしょ」
「知ってたの」
「友達が偶然同じ映画を観ていたんですって」
美沙子の顔がピンク色になってきた。
「お酒飲んでるの?」
「ウイスキーよ、貴方も座って呑みなさい、早く」
「あまり呑めないんだよ」
「何言ってるの、何呑む?」
「それではウイスキーの水割りを」
話しに夢中になっている間に雨はあがり、高原の春らしい澄んだ風が体の中を通り抜け、美沙子は一瞬の幸せを感じた。
眼下には、山に囲まれた街並みが小さくよせ集まってひっそり暮らしている様にみえる。
「私、体が冷えてしまったので温泉で温まってくるから、後で私の部屋で食事しない?」
「そうだね、僕も一人では広い部屋なので寂しかったんだ」
美沙子は自分から誘うなんて初めてだが、気持ちが割り切ってきたのだと思った。
いつもより時間をかけて隅々まで洗った。髪も納得いくまで何回もとかした。
一体なんで、と自分に問いかけたいのを無視する事にした。
田辺は美沙子の変化に驚き戸惑っていた。
彼女はとても人気があり、自分が入り込むのは無理な気がして、よけい親戚的な立場にしていたのかも知れない。彼女も積極的に話しかけてくる事はなく、きょうは別人の様な女を感じた。
温泉に浸かってから彼女の部屋に連絡を入れたら、もうすっかり準備ができているので早く来て、
と嬉しそうな返事がきた。
部屋に入ってみると浴衣姿の彼女が待っていたが、眩しいくらい美しかった。
「この浴衣、夏休み用のを特別に用意してくれたの」
「まったく別の人かと思ったよ」
「もう子供じゃないでしょ、靖夫さん、私の事なんか相手にしてくれないんだから」
「そんなんじゃないよ」
「じゃあどうなのよ、あなた紺野さんと映画行ったでしょ」
「知ってたの」
「友達が偶然同じ映画を観ていたんですって」
美沙子の顔がピンク色になってきた。
「お酒飲んでるの?」
「ウイスキーよ、貴方も座って呑みなさい、早く」
「あまり呑めないんだよ」
「何言ってるの、何呑む?」
「それではウイスキーの水割りを」