毎週小説

一週間ペースで小説を進めて行きたいと思います

フクロウの街 23

2021-06-28 13:07:52 | ヒューマン
緒方靖子は村井から、山路がやくざや台湾マフィアとの繋がりもあると聞かされた。
うすうす変だとは感じてはいたが、予想よりも悪い結果になった。
「わかっているだけで7年以上前から東南アジアを中心に、貿易と言うよりブローカーをやって稼いでいたようです」
「ブローカー?」
「そうです違法のね、それが台湾のマフィアに騙され大損したそうですよ」
「そういう事をしてたのですか」
靖子は信じがたく、この頃あまり話をしていない山路と向かい合おうと決心した.

すぐにも問い詰めたい気持ちが強くなるばかりだが、自分には手が負えない大きな闇を感じ始めていた。

村井は妻と長い間会って話をしていないが、決着を着けなければと焦りを感じていた。
法律事務所の仕事は資格が必要な訳ではなく、いわば弁護士のサポート役で、指示がくれば休日や夜遅くなる事も多く、家でゆつくり寛げる時間はあまりない。
家庭を考えれば他の会社勤めにすべきだが、大きな組織より小さな事務所で忙しくしている方が、自分には向いていると勝手に決めていた。
そうした時期に緒方靖子と旅先で知りあい、何故か運命的なものを感じた。
彼女も同様らしく、真っ直ぐな気持ちをぶつけてくる。
村井は下落合に住んでいる90才を過ぎた伯母に会う事にした。
幸いとても体調がよく、昔の事はよく覚えている、と介護をしている周りの人達から連絡があった。
久しぶりに新宿区下落合に向かう為、目白駅からバスに乗る。
相変わらず狭い目白通りをゆっくり進んだ。
伯母の家に着いてみると、付き添いの女性が二人で待っていた。
二人共孫だそうだが勿論初対面だ。
早く終わらせかったので、仕事の途中だと言っておいた。
伯母の話を要約すると、以前下落合4丁目の一部が中落合3丁目に変更された地区があり、村井の父は一時期そこに一人で住んでいたそうだ。
結婚後の事だが、何故一人だったかは分からない。