東風（コチ）の再会 3

飲み会があるので、駅にあるカフェに入った。
美沙子と一緒にいる彼女は紺野千恵子と名乗った。
「研修から一緒なの、家も割と近いのよ」
美沙子は親友ができたと喜んでいた。
田沢は落ち着かない気持ちで動揺していた。
特別目立つ顔立ちではないのだが、周りの空気を変える様な存在感がある。
あの時会っていなければ・・・
紺野千恵子とはアルバイトの職場が同じになったのがきっかけで急速に親しくなっていった。
あまり積極的に話さない方だが、父親がシカゴに赴任していた事があり、自分も海外にとても興味があり英会話教室に通っているという。
「就職は外資系の会社がいいの？」
「まだ決めていないけれど・・実は航空会社を受けてみたいとも考えているの』
「キャビンアテンダント？」
「ええ、そうね」
少し恥ずかしそうだったが、意思は強そうだ。
田沢は就職先が決まっていて、今回が最後のアルバイトになる。
美沙子には特に話すことはせず、紺野千恵子と映画を観に行く約束をしてしまった。

「そういえばあの時一緒に来ていた友達はどうしてるの？」
「ああ、紺野さんね・・そう、アルバイトが終わった後すぐ学校のテストが始まったので、済んだらすぐ会う事になっていたけど・・』
「会えなかったの？」
「家の事情で暫く会えなくなるけど落ち着いたらすぐ連絡するといって、でも結局それきり会えなくて」
「学校の方は?』
「それがね、同じクラスの人を見つけて聞いてみたけど、試験が全部終わらないうちに来なくなって、どうも急に引っ越したらしいと言ってたわ」
「それっきりなんだ」
「詳しい事はだれも分からないみたい」
田沢は思い返してみると、美沙子に内緒で紺野と映画に行き、その後食事をしている時も殆ど話しをしなかった。
テストが終わったばかりで、やっと来れたとほっとした表情をみせていたが、あの時はもう学校には行ってなかったのだ。