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光の風☆★

~画家すずきゆきおの世界~
 夢と希望に癒しの芸術を
生み出す画家の日々の、つぶやき

シティライフの狸(2)

2006-10-20 | ポエム
私の住むこの地は、
横浜市T区の高台にあり住宅地で、
禅の曹洞宗の大本山のS寺が、歩いて数分のところにある。
S寺は15万坪の広大な境内で緑が多く、雲水の修業の場である。

住宅地は境内に隣接した台地にあり、
東西南北どちらに行くにしても坂を降りる。
急な斜面は緑が多く、人の立ち入ることが出来ない所がある。

狸に訊いたわけではないので、本当のことは判らないが、
そのような斜面とか、お寺の緑の多い斜面に棲息しているのだろうか?

狸の目撃談は多く、数家族の狸がいるらしい。

歩いて、10数分のところに駅と繁華街がある、このような都会の片隅で僅かに残る自然を寝ぐらにしている狸は哀れであり、愛しく思う。

久しぶりにマロンが激しく吠えた。
パンを持ち静かに外に出て桜の木のところを見た。
そこにいた、若い男女が私達が木戸を開けたのに驚き、
お互いに顔を見つめ合い、そして笑顔でこちらに軽く会釈をした。

部屋に戻り、思わず吹き出してしまった。
『狸の奴、今日は上手く人間に化けるのに成功したな。着ている服は洗練されていないが、まあ、仕方無いか。』

彼等は今頃、アスファルトの坂道を降りている。
夜更けの街の散歩と洒落こんで、
一昔前のファッションに身を固め、見事な尻尾を大きく揺らし、
街を闊歩しているに違いない。

追記(あれから数年、狸を見かけなくなっている。
斜面にマッションが建ったり、我が家の前の道路を隔てた
桜の木も今は無くなり住宅になっている。
まだ緑地帯はあるので、どこかに元気に棲息していることと期待していますが。)

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シティライフの狸(1)

2006-10-19 | ポエム
今日と明日の文章は数年前のものを載せます。
掃除をしていたら、シティライフの狸(たぬき)という原稿が出てきたのです。

『シティライフの狸』(1)

夜中12時、マロンが激しく吠える。
こっそりと妻と私は裏木戸を開けると、
道路の脇の桜の木の下で狸ニ匹が、あたりの様子を窺っている。

大きさが違うので雄と雌のつがいなのか、
私達と視線が合うと、今日も狸同志、お互いに顔を見合わす。
人間に化けたつもりだが、
どうやら上手くいかなかったようだと囁きあっているように見える。

パンを小さくちぎって投げると、警戒しながら食べる。

翌日は桜の木の下からパンを点々とおいて
家の庭まで誘導したが、
そんな稚拙な策に引っ掛かるような間抜けではなく、
餌付け作戦は失敗した。

マロンが激しく吠えることなく二週間が過ぎた。

私の手帳に狸があらわれた日は、(タ)と記しをつけている。
(サ)の記しもある。これは酒を飲まなかった日であるが、
タも、サも、なかなか手帳に書きこまれない。
                    ( 明日に続く。)

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2006-02-17 | ポエム
海に誘われ
私は、ひたすらに歩いていた。
海岸の砂は果てもなく広がり
目ざす海には
まだ辿り着かない
歩みは亀のように遅く
波打ちぎわは、まだ遠い
私は徒らに足跡を記しているのか
日々の彩りが砂に吸い取られていくようだ。
まして、この曇り空では
青い空と海への期待も失せた
歩き疲れ立ち止まった。

そこには乾涸びて粉を吹く風化寸前の
大きな亀の死骸が砂の白い陰影を彩った
貝の輝きに、なかば埋もれていた。

産卵の熱の伴った情念も昇華した
きれいさっぱりの見事な
がらんどうの甲羅。

もう虫は湧かないだろう
いつの日にか近い内に砂にまじるだろう
さらさらと砂を鳴らしながら
風が流れていった。

再び歩きはじめた私に
波の音が聴こえてきた。

目ざす海は
すぐそこにある
白く輝いているのは波打ちぎわだ
波が打ち寄せて白い沫の中から亀が顕れた。
頭上には降りそそぐ花びら
一条の光がさしている。

亀はひたすらに
こちらへ向かって歩いてきた
一歩、一歩を力強く
私に向かって歩いてくる。

心あう日

2006-02-11 | ポエム
きらめく季節を告げるように
船の訪れがある。
 
良き報せの便りや
胸をときめかす品々を載せ
何よりも懐かしい人を乗せて
喜びと希望を、たずさえた船が訪れる。

生きとし生けるものを育む
龍宮の海にいだかれた
豊饒の日々を営む港に船は訪れる。

厳冬の凍てつく日々を
どこか遠くへ置き去りにして

心と心が出会う
きらめく季節を、たずさえて船は訪れる。

光の風(2)

2006-02-08 | ポエム
一条の光が流れてきた。

希望と喜びの日を告げるように
光が風と共に流れてきた。

光は岬と海を存分に満たしている。

希望と意気あふれた朝を迎えた人々に
さらに力を与えて
失意の人には慰めと力を与える
一条の光が流れてきた。

小さな生き物達も
魚も草花も
一条の光と
さわやかな風にうながされ
今日の営みを始める。