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希望の芽よ大きく育て~自衛隊イラク復興支援~2004年1月その1

2018年05月07日 06時20分00秒 | 陸上自衛隊
2004(平成16)年1月9日、陸上自衛隊・イラク復興業務支援隊の先遣隊と、航空自衛隊の本隊に派遣命令が発令されました。

1月16日には、イラク復興支援業務隊の編成完結式が防衛庁(時代を感じますな~)で行われ、先遣隊の隊長に石破茂防衛庁長官から隊旗が授与されました。


イラク復興支援業務隊の初代隊長は、言わずと知れた、現参議院議院・佐藤正久 元1等陸佐ですが、いかがですか?この隊旗を受け取る時の凛々しいお姿!



その日の夜に、先遣隊の30名は成田空港から民間機でクウェートへ向け出発、クウェートの米軍基地に滞在した後、19日にはイラク・ムサンナ県のサマーワに到着しました。


先遣隊はサマーワで、現地の治安状況の確認、宿営予定地の使用についての調整や建設の準備、県知事・部族長らとの会談、現地で必要とされている支援内容の確認、給水施設・病院・学校の視察等、精力的に活動したそうですが、それをイラク復興業務支援隊の日報で振り返ってみたいと思います。

まずは、サマーワ到着翌日の2004(平成16)年1月20日の日報からどうぞ。
特に注目していただきたいところは、スマホの方にも読みやすいように、画像の下に文字おこしと注釈をしてあります。



◎サマーワ主力
・CPAの表敬・調整
CPAを訪問し、じ後の人道復興支援活動について調整を実施

(CPAは連合国暫定当局の略称。アメリカ軍を中心としてイラクの政府体制を再建しようとする連合暫定施政当局のこと)
・ムサンナ県知事表敬
知事、部族長、宗教指導者等を含め、歓迎の意向を表明。隊長より、陸自人道復興支援活動につき説明し理解獲得
・陸自宿営予定地偵察
午前、午後の2回にわたり、現地を偵察し宿営地の測量要領、その際の警備要領について検討を実施
・蘭軍ブリーフィング
現地での活動に必要な諸手続、特に蘭軍との連携に必要な手順、要領等について説明受け。また、最新の現地情勢につきブリーフィング受け

(蘭軍はオランダ軍のこと。イラク戦争以降2005年3月までサマーワのあるムサンナ県の治安維持を担当し、自衛隊の護衛を行っていました。
ブリーフィングとは何かをする前に行う事前説明、打ち合わせ、報告のこと)
・■■■■、■■■■による教育
現地活動に必要な心構え、語学、アラブの文化・伝統・慣習等について教育受け

(■■■■は黒塗り部分。多分個人名が書かれていたのでは?と思います。)


◎クウェート分遣班
CFLCCとの調整を実施し、先遣隊の受入・展開に必要な調整を実施。

(クウェート分遣班はイラク入りする隊員の受け入れや訓練、イラクへの食糧・燃料輸送などを行っていました。
CFLCCはCombined Forces Land Component Commanderの略。クウェートやサウジアラビアに展開する米陸軍を中心とした連合軍地上部隊のこと。)
◎バクダットLO
日本大使館を表敬し、情報交換を実施するとともに、じ後も引き続き緊密な連携を確保することにつき合意。その他、執務場所等の整備実施

(バクダット、正しくはバグダッドもしくはバグダードですね。イラクの首都です。
LOはLiaison Officerの略で連絡幹部のこと。バクダットLOとは、多国籍軍の司令部に、連絡官として派遣された自衛官のことです。)
◎バスラLO
執務場所の整理と、通信機材の準備実施

(バスラはイラク南東部にある同国第2の都市です。ここにも多国籍軍の司令部がありました。)


派遣先国・派遣先地域の治安状況
◎CPAムサンナ代表(■■■■)表敬訪問時の発言
・サマーワの人々はサダム政権の崩壊を「解放」と呼んでいる。
・本地域の治安情勢について、全般的にはpermissiveであり、身の危険を感じることはない。私は市内の床屋で散髪をする位。

(permissiveとは、寛大な、寛容な、許す、黙認の等の意味らしいです。)
・もし悪いことがあれば、それは外国から流入してきた者の仕業であり、住民は外国人について必ず警察に通報する。CPAは住民からの良好な情報ネットワークを有しており、非常に役立っている。
・デモへの対応について、去る1月3日のデモは、米軍が実施していた清掃作業に伴う雇用が、そのプロジェクトの終了に伴い、なくなったための失業者によるデモ。これに近傍の政党の警備員が威嚇射撃したところ、たまたま通りがかりの市民に当たったもの。
・治安維持の施策について、銃の携行禁止、祝砲の禁止をして効果。また、県の治安委員会(Security Committee)は毎月曜日1000
(10:00のこと。「ひとまるまるまる」と読みます。自衛隊用語の時間はちょっと特殊ですね。)から治安に関する会合を実施。市の治安委員会はキッダとルメイサに設置済み。サマワでは設置準備中。
(キッダとルメイサはサマーワ近郊の地名のようです。)




◎現地におけるデモの発生に伴う状況視認(1月20日1135ごろ)
CPAムサンナ訪問間にちょうど同施設前の道路でデモが発生したため、状況を確認
・デモは平和裏に実施され、終了
・デモはCPAや近傍の職業安定所に対して実施されるが、職を求めるデモは後者に対して実施
・デモ隊は通常要求書等により、対象に要求を伝えて解散
(解散の状況は現認できなかったが、CPAを出た際にはデモは解散ずみ。)



◎ムサンナ県知事への表敬訪問時の発言
(県知事)
・サダムの制圧下で30年も苦しんできた我々に対する日本からの復興支援に感謝
・サマワの住民及び県議会を代表して日本の到着を歓迎。日本の人々は我々の友人であり、人々の絆、企業の絆があって、今も残っている。
・我々は日本隊の到着を喜んでおり、あらゆる支援をする。また日本からの支援を喜んで受けたい。
・現在列席しているのは部族、県議会、市議会等の者であり全員が日本の到着を歓迎。
・昨日は、このほかに有力者、警察の幹部等が夕方まで日本隊のサマワ到着を歓迎するべく待っていたが、貴隊の予定が遅れてできなかった。改めて歓迎する。


当時の報道では、予定よりも7時間遅れて現地時間の午後9時に到着したそうです。
佐藤1佐は会見で、
「食事や給油で連合軍のキャンプに立ち寄った」
と説明、遅延の詳しい理由は明らかにしなかったそうですが、
「安全に配慮して移動してきた。(危険を感じたことも)ありません」
とのことでした。


(佐藤1佐)
・昨日の出迎えができなかったとのことであるが、先遣隊の隊員は今日の偵察でも町の人から温かい歓迎の気持ちを表され、感激している。
・我々もイラクの人々の生活の安定、発展に力を尽くしたい
〔任務を説明〕
・イラクの人々の仕事の機会を奪うのではなく、ともに汗を流したい。この際オランダ軍、CPA等とも協力する。
・ただし来たばかりであるので、実行は医療支援、浄水支援、建設支援の順になると思う。また当面は宿営地の建設をすることとなる。
・我々の行動がうまくゆけば、民間企業も来ることができると思う。陸自の支援から官民協力しての支援に発展すると思う。
〔外務省の■■■■をサマワ出張所長として紹介〕
(■■■■)
支援の内容を決めていろいろな支援を実施したい。



(県知事)
・すべてに対して感謝。日本の人々と政府に感謝。今後のCPA、蘭軍、県、サマーワの人々の協力を誓う。
・また、日本の自衛隊の安全は我々の安全の一部と確信しており、日本の自衛隊も我々を守るものとなる。
・この集まりは友人をもてなす集まり。仕事の話はそれぞれの部下同士により、各専門の間で実施。
・宿営地の建設には協力する。
・復興のあらゆる分野における日本の人々の参加を希望。
・この厳しいときの支援に改めて感謝。協力、調整、サービスを提供したい。
(佐藤1佐)
・当地が第2の故郷と思って努力。
(■■■■)
・我々は支援を実施する上で、公平に行うことを重視する。
(県知事)
・心配ない。支援先が偏るのは当方も本意でなく、過去にそのような事例もない。
・この際、調整は大いなる助けであり、有力者との連絡は必ず我々を通じて実施されたい。我々が公平になるよう調整する。


外務省の■■■■さん、なんとなく感じわるっ。
佐藤1佐が「当地が第2の故郷と思って努力」って言ったのもぶち壊してるよね。
まあ、こういう官僚的な人も必要なんでしょうけど。


(佐藤1佐)
イラクの人に支援するというよりは、ともに仕事をするという感覚でやりたい。
(県知事)
感謝。列席の主要な人から言葉をいただく。
(部族代表)
日本隊を歓迎、我々もがんばるのでよろしくお願いする。(片言の日本語も使用「我々もがんばります。」非常に友好的。)
(政党代表)
我々が日本隊の安全を確保する。先ほど順次支援を実施するとあったが、我々としては早い支援を頼む。失業が問題であり、我々としては急務。
(宗教界代表)
日本隊の到着を歓迎。住民には協力機運が広がっている。いつの日かともに成果を喜び合いたい。


自衛隊、すごく歓迎されていると思いませんか?
この日のために日本語を調べて、日本語で挨拶してくれるなんて!


(医療担当)(女性)
歓迎します。日本からの復興と女性に対する支援を期待します。
(サマワ市評議会議長)
以前我々が提出した支援要望が受け入れられて感謝。日本隊が来たのは平和の証であり、歓迎。
(■■■■CPAムサンナ代表)
先遣隊を歓迎。復興の膨大な業務は始まったばかりであり、多くの困難があろうかと思う。日本隊の存在は平和の証であり、日本、オランダ軍とともに全員で協力。
(オランダ海兵大隊長)
日本隊の到着を歓迎するとともに、今後密接に連携して業務を実施。
(佐藤1佐)
このような友好的な雰囲気で会合できたことに感謝。今後ともこのように仲良くイラクの人と接していきたい。(以上)





通訳支援
〇18日
・■■■■によるクウェート国内での銀行口座開設、業者調整等の際の通訳支援
〇20日午前中
・■■■■による現地偵察時の地方メディア対応時の通訳支援
現地教育支援
〇20日1700~1800
・■■■■によるイラクでの活動間の心構え、注意事項
・■■■■による日常会話
その他
〇現地メディア放送・記述内容の翻訳支援
〇2名の帰国予定
・21日1230サマワ発~蘭軍ヘリ~1430クウェート着(アリ・アルサーレムAB)~市内サフィアホテル泊
・22日1310クウェート発~2020フランクフルト発
・23日1540帰国

(アリ・アルサーレムABはクウェートにある空軍基地です。)

行ったばっかりでもう帰国⁉と思いませんでしたか?
実はこの2名の自衛官さん、イラクの治安情勢などを政府関係者に報告するという大事な任務を担っていたんです。
その報告いかんによっては、本隊の派遣をも左右してしまうんですよ!
結果として、派遣する環境が整ったと判断され、2004(平成16)年1月26日、陸上自衛隊の本隊と海上自衛隊の部隊に派遣命令が出されました。
こういうのは、電話じゃダメなんですね。
クウェートで1泊してるとはいえ、サマーワから日本まで50時間超ですよ!
しかもフランクフルトでトランジット。クウェートからの直行便は無かったんですかね。


人員現況
陸幕展開支援班
調整組(急性胃腸炎おおむね完治)
移動支援組 左手第3指打撲(骨折の疑いなし)


こんな細かいことまで、日誌に残すんですね。
急性胃腸炎って、何か悪いものでも食べちゃったんでしょうか。




明日の活動予定
◎サマーワ本隊
0600:起床
0800:朝礼、武器・装具点検、情勢ブリーフィング、ジュピターステイト等徹底。

(ジュピターステイトとは、1台の車輌に乗り込むべき最低人数についての指示のようです)
0920:車両・通信点検
0930:出発
1000:CIMICにて今後の活動等調整(■■■■■■■■を含む)

(CIMICとは、現地の人々に対する教育支援型・施工管理型の支援を行う民生協力部隊。)
1100:陸自宿営予定地地権者との顔合わせ
1200:帰国組見送り(ヘリにてアルアリサーレム空軍基地へ移動)
1400:病院関係者との業務調整
1430:陸自宿営予定地の測量
1600:サマーワ着
2000:終礼
物品等掌握、指揮所・作業所の開設準備
◎バスラLO
MND(SE)での業務調整

(MND(SE)はMulti-National Division (South-East)の略で、イラク南部に展開する複数の国の旅団や大隊から構成される師団のことです。)
◎バクダットLO
CJTF-7での業務調整

(CJTF-7はCombined Joint Task Force 7の略。イラクに展開する米英軍の統合連絡所の中に設置された、各国の連絡将校がいる部署のことです。)
◎クウェート分遣班
CFLCCにLO派遣
業務調整等実施
帰国組のクウェートでの受入









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