ふしょうなブログ

ご不要になった詩は粗大ゴミでお出しください

62のソネット 谷川俊太郎

2006年03月23日 23時04分37秒 | 書評のようなもの
 初版は詩人が22歳だった1953年12月に創元社より刊行されています。「98篇の詩より父の助言を得て取捨選択の上62篇の詩集として編んだことを覚えている」と前書きに記されています。
 全編を通じて語られているのは自分自身と世界(外界)との係わりです。世界(外界)は風景であり神の存在ともいえるものです。
 そして係わり方を追い求めることにより際立っているのは詩人の孤独感です。
 「世界が愛してくれるので/私はいつまでも孤りでいられる」「…私はひとを呼ぶ/すると世界が振り向く/そして私はいなくなる」この詩行は62篇目の詩「62」で歌われています。「ひと」とは「私にはじめてひとりのひとが与えられた」ひとであり、「私」とは心そのもの、魂そのものと解釈できます。
 孤独であること、それは世界と同一化した自らの姿であり、「私の不在」は詩人にとり安らぎの姿なのです。

 詩のスタイルは14行詩、所謂ソネットの形式を用いていますが、脚韻には特に拘っていません。しかしながら定型詩のもつ独特な存在感(小宇宙)に魅了されてしまいます。
 ただ、何れの詩もサプライズ、高揚感がやや乏しく感じるのは残念でなりません。


にほんブログ村 小説ポエムブログへ

 


最新の画像もっと見る

2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (The Boys On The Rock)
2006-03-26 11:40:14
以前、角川文庫に入っていませんでしたっけ?あっさりと読み通した覚えがあります。洒落たソネット形式で、おそらく二十代前半の谷川さんの醒めた視線が羨ましく思えた覚えがあります。ただ、「62の」は無いんじゃないの?単に作品数で、手抜き?と、当時の友人と突っ込みを入れたことを思いだしました。
返信する
多すぎるかも (Yock)
2006-03-26 19:23:51
ロックさん、こんばんは



あっさり読み通したと書かれているのが意味深ではあります。一人称で綴られた62の詩篇、「私的ノート」ともいえそうです。手抜きとは思わないけど、道造を読んだ後ではちょっときついかな



ありがとうございます
返信する