昨夜のNHKニュースで「小林製薬 「紅麹」の成分含む健康食品を自主回収」との報道がありました。
摂取した人が腎臓の病気などを発症、一時6人が入院 現在も7人が通院ということで、健康食品が原因となった可能性があるとして、紅麹の成分を含む3つの健康食品を自主回収するとともに使用中止を呼びかけた、というものです。
まずは、罹患された方々の早いご回復をお祈りいたします。
120歳まで生きることを目標とする者にとっては、とても気になる情報です。
NHKの報道では「健康食品」と言ってますが、正しくは「機能性表示食品」で、小林製薬の「重要なお知らせ」ではきちんと「機能性表示食品」と記載されています。
では、何が違うかと言うと、そもそも「健康食品」に法律上の定義はなく、一般的に健康に良いとされる食品のことを指します。いわゆるサプリメントというものでしょうか。
薬機法(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律:昔は薬事法と言ってた)では、、医薬品、医薬部外品、化粧品、医療機器及び再生医療等製品(まとめて「医薬品等」といいます)を規制していて、それぞれに決め事があります。その決め事に該当しないものは食品ということになるのです。
裏を返せば、「@*はチョメチョメに効く」なんて言えるのは医薬品等だけで、「これはチョメチョメに効くんです」と言って、あたかも薬のように食品を売るとお縄になってしまいます。(野菜や果物などの生鮮食品、豆腐などの加工食品などは「明らか食品」は適切な表現であれば問題ありません)
でも、「昔から身体に良いとか言われているんだから、そう言って売ってもいいじゃん」ってということ、”科学的な根拠”を証明して国(消費者庁)の審査を受けて許可を得たものであれば、「お腹の調子を整える」とか「コレステロールの吸収を抑える」といった健康増進ができますよ(医薬品みたいな「チョメチョメに効く」という治療効果ではないですよ)という表現で売っていいですよという制度ができた、それがトクホ(特定保健用食品)です。でも、トクホの許可を取るには莫大な費用と時間が掛かるので、健康に良いのなら、科学的根拠さえあればもっと簡単に売れたらイイネ、と政府の骨太の方針の一環として機能性表示食品制度ができました。トクホのように国の許可ではなく、事業者の責任で届出したものを国が受理すれば売っても良い、それが機能性表示食品です。
今回、自主回収となったのは、機能性表示食品なのです。
ただ、本事例は、機能性云々ではなく、商品の安全性の問題なので、ある意味、健康食品と言おうが、機能性表示食品と言おうが、あまり関係のない話だと思いますし、そもそも機能性表示食品って何?から説明しているとニュースでは分かりにくくなっちゃうので、NHKの報道は許容できるかな、と思います。
前置きが長くなりましたが、本題に戻ります。
紅麹で”米”を発酵させると、腎毒性を引き起こすシトリニンというカビ毒ができることがあって、ヨーロッパで健康被害が報告されていて注意喚起がなされていてスイスでは売買できないそうです(内閣府 食品安全委員会)。
小林製薬の「重要なお知らせ」によると、シトリニンは原料となった紅麹からは検出されず、原因はなさそうです。また、腎臓の病気を発症した人が摂取していた製品の製造過程をさかのぼって調べたところ、いずれも同じロットの原料が使われていて、一部の製品と原料に製造過程で意図していない成分が含まれている可能性があるという結果が出たということです(成分の特定、腎疾患等との関連性の有無の確定には至ってない)。
ということで、自主回収する紅麹関連の一部の対象製品は以下のようになっています。同じシリーズでも非対象品があるので注意が必要です。
・通販:紅麹コレステヘルプ 15日分・30日分
・ドラッグストアなどの店舗やECサイト:紅麹コレステヘルプ 20日分、ナイシヘルプ+コレステロール、ナットウキナーゼさらさら粒GOLD
で、代表的な製品として「コレステヘルプ」とはどのような製品なのか、消費者庁が公開している機能性表示食品の情報サイトで調べてみました。
(機能性表示食品制度では、情報公開することが義務づけられていて、誰でも商品の検索ができて情報を見ることができます。
まず、表示されている機能性は「本品には米紅麹ポリケチドが含まれます。米紅麹ポリケチドにはLDL(悪玉)コレステロールを下げる機能があることが報告されています。LDL(悪玉)コレステロールが高めの方に適しています。」です。つまり、コレステヘルプが悪玉コレステロールを下げるのは、含まれている米紅麹ポリケチドという成分の作用だということです。(LDLは本来、身体に必要なコレステロールなので「悪玉」と言うのは良くないと思うのですが)
また、安全性については、2018年から20万食以上販売されている機能性関与成分量が同じ類似製品が原因と示唆される重篤な健康被害は報告されていないということであり、原料の米紅麹の製造量でみると、1.75億食分でも健康被害は報告されていないことから、製品あるいは機能性関与成分には問題なさそうです。
米紅麹ポリケチドについて小林製薬は次のように説明しています。
「米紅麹ポリケチド」には様々な成分が含まれていますが、中でも薬理活性物質モナコリンK(Monacolin K)は、米国で承認されている高コレステロール血症治療薬ロバスタチンと同じ構造を持ち、体内でコレステロールの合成を阻害する働きがあることから、高コレステロール血症の改善といった高脂血症薬と同じ作用を示すことが知られています。
小林製薬が、コレステヘルプのコレステロールを下げる成分がモナコリンK(ロバスタチン)と言ってないのは、コレステヘルプが食品であり、医薬品ではないからです。
ちなみに、紅麹菌は沖縄の豆腐餻(とうふよう)を作るときにも使われます。
ロバスタチンなどのスタチンと呼ばれる薬は、腎機能を保護する作用があると言われているので、むしろ腎臓には良いと考えられます。(日腎会誌 2013;55(7):1295-1300 慢性腎臓病(CKD) における脂質改善療法)
やはり、原料か製品の製造工程で何らかの毒性成分が混入した可能性が高いと考えられますので、小林製薬の検証結果と対策の報告を待つしかないですね。
それにしても雨が続き、膝が痛みます。