遅れて体育館にやってきた彼女に「あっ、こんばんは」と声をかけた。彼女はぺこっと少し笑って応えた。
僕たちはバドミントンの練習にきていた。試合の前には、練習をするのが常になっていて、僕はそれがもう終わっていて、後は彼女だけになっていた。彼女だけ練習をせずに試合をさせるわけにはいかない。僕は勇気を出して彼女を誘ってみた。
「あ……」
やはり名前が出てこない。彼女の名前は母音から始まるからか、言いにくい名前の一つである。こちらでも向いてくれたらいいのだが、彼女の視線は右手に持ったケータイに集中している。
「あ、あ……」
下顎が震えてなかなか言い出せない。しかし、右足を前に出すのとタイミングを合わせて言った。
「しししませんか、練習」
彼女はこちらを見たが、何も言わずに立ち上がり、ラケットを持った。それを見て、先にコートに入る。
集団でだが、一緒に遊んだこともあるのに、同じ合コンの席にもいたのに、同僚なのに彼女と僕はものすごく遠い場所にいるような気がする。名前が言えないと、その人との距離がいつまで経っても縮まらないような気がする。
僕が打ち出したシャトルには彼女の名前が乗っている。それは彼女の近くに飛んでいくのに、おそらく名前を呼んでいることには気づいていないだろう。
僕たちはバドミントンの練習にきていた。試合の前には、練習をするのが常になっていて、僕はそれがもう終わっていて、後は彼女だけになっていた。彼女だけ練習をせずに試合をさせるわけにはいかない。僕は勇気を出して彼女を誘ってみた。
「あ……」
やはり名前が出てこない。彼女の名前は母音から始まるからか、言いにくい名前の一つである。こちらでも向いてくれたらいいのだが、彼女の視線は右手に持ったケータイに集中している。
「あ、あ……」
下顎が震えてなかなか言い出せない。しかし、右足を前に出すのとタイミングを合わせて言った。
「しししませんか、練習」
彼女はこちらを見たが、何も言わずに立ち上がり、ラケットを持った。それを見て、先にコートに入る。
集団でだが、一緒に遊んだこともあるのに、同じ合コンの席にもいたのに、同僚なのに彼女と僕はものすごく遠い場所にいるような気がする。名前が言えないと、その人との距離がいつまで経っても縮まらないような気がする。
僕が打ち出したシャトルには彼女の名前が乗っている。それは彼女の近くに飛んでいくのに、おそらく名前を呼んでいることには気づいていないだろう。