じゃっくり

日常をひたすら記すブログ

気管がやられたようだ

2006年05月24日 | 雑記
せきは改善さえしていたが、まだ出るには出たので前回と同じ医院に足を運んだ。受付で紙に名前を書くとき、名前の横にチェック欄があって、僕の前まで皆チェックがし終わっていた。だから、すぐに僕の順番がくると思っていたのだ。
 体温計を渡され、ロビーで計る。しかし、音が鳴る気配がない。前回も音がならず、六分ほど待った。が、鳴らないので、結局そのときの数値を提出したのだが、今回も鳴らない。もうどうでもよくなったので、今のままの数値で出した。脇の下から体温計を取り出し、受付のおばさんの手にそれが触れた瞬間、ピっと音が出、「E」というマークが表示された。おばさんは「あっ」と言った。僕はすかさず「あ、三十七ですから」と嘘偽りなく言った。

 ロビーで吉田修一の「パーク・ライフ」を読んだ。すぐに順番が来るだろうと思っていたのだが、いつの間にか二十ページも読み進めるくらい時間が過ぎていた。一時間、掛け時計を見て苦笑した。僕より後に来た客が診察も終えて、スリッパを脱ごうとしているのに、僕はまだロビーで本を読みながら、何もしないで待っているのだった。しばらくして、不安になってくる。ロビーにいるからいけないのかもしれない。診察室の横の待合室に居らなくてはいけないのかもなどと思った。しかし、僕の腰が上がらない理由があった。ロビーと待合室を繋ぐ道にある長椅子には、門番のようにどかっと髭面で長髪の肉付きのいい男性が座っているのだった。アマチュアのプロレス選手にも見えるし、宗教人にも見える。彼がいるから、僕はその場から全く動けないのだった。僕が動いたらおそらく彼は僕を見る。視線恐怖症の気がある僕にはそれは耐え難いものだった。待合室にいこうにも、彼の目の前を通ることはとても難しい。

 だが、しばらくしてその彼が名前を呼ばれ診察室に向かった。どうやら点滴をするらしい。いなくなったので、すぐに僕は待合室に急いだ。

 カルテには「急性気管支炎、咽頭炎、鼻炎」と書かれている。気管支炎だかんて大仰な名前である。でもせきが止まる気配がないので、そういった名前もうなづける。診察は三分程度で終わって、先生は「新しい薬をつけておきますので」と最後に言った。新しい薬とはシロップのことだった。蜂蜜みたいに黄色い液体を見て、僕は熊のプーさんかよとつっこみを入れた。
 
 その後、最寄りの図書館に行って「パーク・ライフ」の残りを読み終えた。女性から届いたケータイのメールに返信をしてから、そこを後にし、次は別の地域の図書館を訪ね、芥川龍之介の「創作」と「私と創作」と「鼻」を読んだ。