じゃっくり

日常をひたすら記すブログ

あざらしの彼

2005年08月11日 | 芸能・スポーツ
僕が毎週水曜日にいっているバドミントンサークルは、かなり開かれている。飛び入りで参加してOKだし、うまい人がいってもいいし、逆にほとんどバドミントンをしたことがない初心者が行ってもいい。

そして昨日、見たことのない男性が一人やってきた。話をこっそり聴いていたら、どうもこのごろバドミントンをはじめたらしく、他のサークルでもしているらしい。なるほど、じゃあけっこうそれなりにできる人なのかもしれないなと思っていたのもつかの間、かなりの素人さんで――いや、つまり下手な人だったのだ。

どのくらい下手なのかというと、なんでもないふわーとした羽に対してもラケットに当たることなく空振りをしてしまい、数回ならいいのに、それが何度も繰り返され、ましてや打ち方は羽根つきそのままで振りかぶることもなく、面を顔の前に出し、そのまま押し出すといった感じなのだ。

しかし、彼の本領はそんなところじゃなかった。相手がドロップ(ネット前に落とすショット)を打ってきたとき、彼は反応が鈍いながらもそれを拾おうと懸命に前にダッシュし、羽が地面に着地してからもなぜかわからないが、ダイブするようにして体から地面にぶつかりにいくのだ。その豪快なプレーは感動を呼ぶことはなく、どことなく皆が覚めた目で彼を見ていたのを僕は見逃さなかった。

そういう僕も最初、そういう目で彼を見ていた。というのも、”わざと”そうしていると思ったからだ。わざとそういうアクションをして人目を引こうとしているのだと。でもそうじゃないらしい。彼は自分でそれがベストの行動だと思い、滑り込んで体を地面に打ち付けていたのだろう。どこかあざらしのような体のぶよついた動物が獲物を捕らえるときみたいにとる行動に似ていた。

彼は初心者の中の初心者だった。彼とダブルスを組む人は途中から試合を諦め、取れるような羽もとらずにいたように思える。ペアの力ないプレーのとなりでは相変わらず豪快な滑り込みが見られたし、なんともない羽を空振りして自らの頭に当ててしまう芸人のような輩のパフォーマンスが披露されていた。

僕とも一度組んだ。僕は負けず嫌いで、ことのほか今回はバドミントンなので絶対に負けたくなかったから、その彼がちょっとでも気の抜いた動きをみしたら彼に軽蔑のまなざしを向けようとしたのだけど、見る限りでは自分なりに努力しようとしていたので、そんなことはしなかった。ただ、ルールの「ル」の字も分からず、毎回のように立ち位置について知らせなくてはいけないのが面倒だった。