ずいぶん売れているようで、前から気になっていましたが、なかなか手に取る気持ちになれませんでした。ようやく、読んでみようという気になって、久しぶりに本を買いました。
長い移動時間があったので、電車の中で読み始めましたが、まうが子猫だった頃や、最期の日々と重なって、何度も泣きそうになりました。最後の3ページはどうしても読めなくて、家に帰って読みました。
「もうわかっていた。猫はずいぶん前から、藤治の準備ができるのを待っている。別れる準備。一人になる準備。モンなしで生き続けていく準備。だが、いつまで待っても準備などできようはずもない。」
モンは、まうより二つ上の二十歳。天寿をまっとうして旅立とうとしている猫の命をあきらめきれず、何度も往診を頼む藤治に、若い獣医師が、死は自然なこと、とぽつりと言います。
「じじい同士長く一緒にやってきたが、こいつはまるで、俺に手本を示しているみたいじゃないか。そう遠くない日に、俺自身が行かなけりゃなんない道を、自分が先に楽々と歩いて俺に見せているみたいだ。」
まうもモンと同じように、「もう一人で大丈夫だね」と私に卒業証書を渡して、潔い死に様のお手本を見せて旅立っていったのでしょうか。だとしたら、今の家では無理だけど、またいつか、まうのような子猫に出会って、その一生をしっかり見届けたい。まうを見送った今、「猫鳴り」に出会えてよかったです。