南の丘を越えたあたりにはもう獣たちの姿はなく、道もそこで終っていた。僕たちが人影のない枯れた野原や廃屋の集落をつっきって進むうちに、たまりの水音の響きが少しずつ聞こえ始めてきた。
それは僕がこれまでに聞いたことのあるどんな音ともちがっていた。滝の音とも違うし、地鳴りでもない。それはまるで巨大な喉から吐き出される粗々しいため息に似ていた。その音はある時は低くなり、ある時は高まり、また断続的に跡切れ、何かにむせぶように乱れもした。
「まるで誰かにむかって話しかけているみたいだ」
君は振り向いただけで何も言わずに、手袋をはめた両手で藪をわけながら歩き続ける。
「昔よりずっと道が悪くなっているわ。引き返した方がいいかもしれない」
「でもせっかく来たんだ。もう少し進んでみよう」
それは僕がこれまでに聞いたことのあるどんな音ともちがっていた。滝の音とも違うし、地鳴りでもない。それはまるで巨大な喉から吐き出される粗々しいため息に似ていた。その音はある時は低くなり、ある時は高まり、また断続的に跡切れ、何かにむせぶように乱れもした。
「まるで誰かにむかって話しかけているみたいだ」
君は振り向いただけで何も言わずに、手袋をはめた両手で藪をわけながら歩き続ける。
「昔よりずっと道が悪くなっているわ。引き返した方がいいかもしれない」
「でもせっかく来たんだ。もう少し進んでみよう」