7月26日の気になる3つのニュースを紹介しますね。
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なぜ黒い雨による「被ばく」は置き去りにされたのか 届かなかった医師の訴え
毎日新聞2020年7月25日 18時57分(最終更新 7月25日 21時00分)
https://mainichi.jp/articles/20200725/k00/00m/040/169000c 広島と長崎に設置されていた米原爆傷害調査委員会(ABCC)
の医師が1950年代半ば、米政府の公式見解に異を唱え、
原爆投下直後に降った「黒い雨」
が住民たちの病気の原因になった可能性があると指摘していた。
しかし、被爆75年を迎える今も、
黒い雨の健康への影響を巡って論争が続く。なぜ、
医師の訴えは届かず、黒い雨による「被ばく」
は置き去りにされたのか。【小山美砂】
目に見えない問題に時間割けず
「広島の残留放射線及び放射線による兆候と症状」
と題した9ページの報告書。添付された広島市の地図には、
48個の小さな丸印が書かれている。
原爆の爆心地からの距離は2~6・5キロ。
いずれも爆発時に放出された直接放射線の影響がほとんどないとさ
れる場所だ。だが、
そこにいた人たちも脱毛や紫斑などの急性症状に見舞われた。「
現在入手できる客観的証拠では、
原爆投下後の残留放射線は無視できるとされている。
なのに放射線を浴びた時の兆候や症状が表れている」。
報告書は矛盾を指摘する。
報告書を作ったのはABCCの生物統計部長、ローウェル・
ウッドベリー医師(故人)。
原爆放射線による人体への影響を調査する研究の中枢にいた。
広島では原爆投下直後、原子雲や火災に伴ってできた積乱雲から、
核分裂で飛び散った放射性物質を含む黒い雨が降った。
爆風で巻き上げられたほこりやちりも放射性物質とともに広範囲に
落ちた。多くの人が浴び、空気や水、
食物と一緒に体内に取り込んで被ばくしたと考えられる。
だが、
米政府は一貫して直接放射線以外の放射線の影響を否定した。
被爆1カ月後の45年9月12日、広島・
長崎を視察した原爆製造計画「マンハッタン計画」
の副責任者だった米軍准将が「
広島の廃虚に残留する放射線はない」と発表し、
翌日の米紙ニューヨーク・タイムズが報じた。
原爆の放射線研究と黒い雨を巡る動き
54年3月には米国のビキニ水爆実験で、静岡・
焼津のマグロ漁船「第五福竜丸」の乗組員らが放射性降下物の「
死の灰」を浴びて被ばくした。
それでも米原子力委員会は55年2月、上空500~
600メートルで爆発した広島と長崎の原爆は水爆と異なり「
危険な核物質は消散した」と発表した。
放射性降下物が病気を招いたと考えるウッドベリー氏が、
米本国のスタッフォード・ウォーレン医師(故人)
らに異論を伝えたのはこの頃だ。だが、壁は厚かった。
ウォーレン氏はマンハッタン計画の安全対策責任者。
放射能を洗い流したといわれる45年9月中旬の枕崎台風の前後に
広島と長崎に入り「
患者の障害は危険な量の放射能が地上に残った結果ではない」
と報告して政府見解を支えた。
核開発にその後も関わった放射線研究の権威にウッドベリー氏はは
ね返され、政府を動かすことはできなかった。
ABCC内部で黒い雨はどう見られていたのか。「組織として『
調査をしよう』という動きはなかった」。当時、
ABCCの印刷課にいた宮川寅二さん(93)=広島市南区=
は証言する。
ABCCは広島と長崎の被爆者ら約12万人を対象に55年ごろに
始めた寿命調査で「黒い雨に遭ったか」との質問を設けた。
質問票の書式を任された宮川さんは「
余白ができたから盛り込んだだけだった」と言う。
宮川さんの質問票が使われた61年までの調査に対し、
約1万3000人が黒い雨に遭ったと回答した。しかし、
75年にABCCが日米共同運営の放射線影響研究所(放影研)
に改組された後も、
長崎の医師らが回答の存在を2011年に指摘するまで「
黒い雨に遭った場所や時間の情報が不十分だった」
との理由で解析しなかった。
ウッドベリー氏と同時期にABCCで被爆者らを診察した医師の玉
垣秀也さん(97)=広島市佐伯区=も、
黒い雨の影響を感じていた一人だ。「でも、
ケロイドなどで苦しむ人が多い中、
目に見えない問題に時間を割く余裕はなかった」
と振り返って続けた。「もし、あの頃に詳細な調査を始め、
黒い雨と症状の関連性が究明されていれば、
国の援護政策は変わっていたかもしれない」
疑われるなら国は救済を
国による被爆者援護は、
原爆投下から12年後の1957年に原爆医療法(
現被爆者援護法)が施行されて始まった。
対象地域の拡大や手当の創設などが進められ、
黒い雨を巡っては76年、
広島の爆心地から北西側に広がる長さ約19キロ、
幅約11キロの楕円(だえん)
状の地域が援護対象区域に指定された。
この区域にいた人は無料で健康診断を受けられ、国が「
放射線の影響を否定できない」
と定める11障害を伴う病気になれば、
医療費が免除になる被爆者健康手帳を受け取れる。
区域指定の根拠となったのは、終戦直後の45年8~12月、
広島管区気象台(当時)の技師らが百数十人に聞き取りをし、
53年に発表した大雨の雨域図だ。
集落を内外に分断するような線引きに住民らは反発した。
爆心地から約18キロの自宅で雨を浴びた本毛稔さん(80)
は一緒にいた弟を翌月に肝硬変で亡くし、
自身も60歳を過ぎて白内障などを患った。
自宅前を流れる川の対岸にいた同級生らと違って援護を受けられず
「不公平だ」と憤る。
しかし、国は80年に厚相(当時)の諮問機関が出した「
被爆地域の指定は科学的・
合理的根拠のある場合に限定して行うべきだ」との意見書を盾に、
区域の見直しをしなかった。黒い雨に遭った人の高齢化も進み、
広島市や県は2008年、3万人超を対象にアンケートを実施。
援護区域の6倍の広さで黒い雨が降ったとして国に区域拡大を求め
たが「60年前の記憶によっていて、正確性が明らかにできない」
と退けられた。
黒い雨の健康被害を認めない国がよりどころにするのが、
45年8~11月の現地調査などのデータから放影研が作り、
被ばく推定線量の計算に使われる評価システムだ。
放影研は87年に出したシステムに関する報告書で「
残留放射線の影響は無視できる程度に少ない」
との見解を示している。
「直接放射線による外部被ばくだけでは、
被爆者にもたらされた健康被害の説明がつかない」。
19年10月、広島地裁。
援護区域外で黒い雨に遭った住民ら84人が被爆者健康手帳の交付
を求めた「黒い雨訴訟」で、
住民側の証人として出廷した広島大の大瀧慈(めぐ)名誉教授(
69)は訴えた。
75年から広島大原爆放射線医科学研究所に勤め、
統計学の観点から原爆の影響を見続けてきた。
広島市などのアンケートにも携わった研究者に気付きをもたらした
のは、11年3月の東京電力福島第1原発事故だった。
低線量被ばくや内部被ばくが議論される中、
広島大が約1万8000人の被爆者を対象に10年までの40年間
に実施した健康調査のデータを改めて分析し、
黒い雨が降った爆心地の西側では被爆した場所が遠いほど、
がんで死亡する割合が高いとの結果が出た。
原爆の放射線による健康被害のリスクは爆心地に近いほど高いとい
う「定説」と矛盾する。「放射性物質を空気や水、
野菜とともに体内に取り込んだことによる内部被ばくの影響が否定
できない」と結論づけた。
放射性物質が体内に入ると、
排出されない限り局所的な被ばくが続く。だが、
放射線量の測定方法は確立されておらず、
がんの発生など健康への影響も解明されていない。
被爆者援護法は「他の戦争被害とは異なる特殊の被害」
を受けた人々を救済するために制定された。その趣旨を踏まえ、
大瀧名誉教授は主張する。「
黒い雨の影響で健康被害が生じたと断定できなくても、
疑われるなら国は救済すべきだ」。29日に言い渡される判決が、
国が内部被ばくと向き合う契機となることを期待している。
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「いずも」など防衛費1.1兆円、コロナ対策に回すと…<2020年 核廃絶の期限>
2020年7月26日 06時00分
https://www.tokyo-np.co.jp/article/44846
核兵器予算を新型コロナウイルス対策に回せば、
必要な医療をどれだけ提供できるか―。非政府組織(NGO)「
核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)が、
米英仏3カ国の核軍備費を基に試算したところ、
多くの命を救うための医療態勢を整備できることが浮き彫りになっ
た。感染拡大で医療崩壊が懸念される国が少なくない中、
軍事費を削減してコロナ対策に充てる国も出てきた。(柚木まり)
ICANは、主な核保有国のうち比較的情報が得やすい米英仏で、
核兵器に使われた昨年の費用などを用いて試算した。
◆米の核関連3.8兆円は22万人分の給与
核大国の米国は、コロナの感染者と死者がいずれも最多。
核の小型化を進める核兵器関連予算351億ドル(
約3兆8000億円)を医療費に置き換えると、集中治療室(
ICU)
のベッド30万床と人工呼吸器3万5000台を用意でき、
看護師15万人と医師7万5000人の給与をまかなえる。
英国が新しい原子力潜水艦システムの構築などに使った72億ポン
ド(約1兆円)は、
ICUのベッド10万床や4万人の医師の給与などに相当。
フランスは2025年までの7年間の核軍備予算から、
19年分を45億ユーロ(約5600億円)と推計すると、
ICUのベッド10万床や医師1万人の給与などに充てられる。
これとは別に、日本で防衛費を当てはめるとどうか。
ICAN国際運営委員の川崎哲あきら氏の試算では、
20年度の防衛予算のうち、戦闘機購入や護衛艦「いずも」
の事実上の空母化など新規契約分の1兆1000億円は、
ICUのベッド1万5000床と人工呼吸器2万台に加え、
看護師7万人と医師1万人の給与に相当する。
◆韓国、国防費1600億円を削減
実際に、軍事費を削減してコロナ対策に回す国も出ている。
韓国は今年の国防予算の3.6%
に当たる計約1兆7700億ウォン(約1600億円)を削減。
米製戦闘機の導入費などの予算を、
全国民対象の給付金や中小企業支援などコロナ対策の財源とした。
インドネシアやタイ、フィリピンなどでも同様の動きがある。
核兵器廃絶を目指す科学者でつくる「日本パグウォッシュ会議」
副代表で千葉大の栗田禎子よしこ教授(中東現代史)は「
どの国も社会保障や医療費の財源確保が待ったなしだ。
核兵器の近代化や軍拡に一銭も出している余裕はない。
核廃絶に向けてかじを切るチャンスだ」と指摘している。