アンコウ物語

徒然なるままに

ヘレン・ミアーズ著「アメリカの鏡・日本」

2014-03-02 23:06:03 | 政治

1931年の米軍事予算はもう少しで日本の三倍を超えるところまできていた。満州事変に関する
公式報告が正しければ、この年日本は1億2千2百万ドルに満たない軍事予算で世界征服を開始し、
一方、私たちは国内の軍隊を満足させるだけで6億6千7百万ドルを必要としていた。

1941年までに、日本の年間軍事予算費は13億3千4百万ドルに達しているが、アメリカの「国防」
支出は60億ドルにまでふくらみつつあった。

日米関係が戦争に向かって急速に悪化していた1941年11月中旬、両国政府はそれぞれの議会に
軍事予算の増額を求めている。ルーズベルト大統領は70億ドルの増額を、日本政府は9億8千万ドルの
増額を要請した。

1937年7月の「日華事変」からパールハーバーまでの4年3ヶ月の間に、日本は中国と満州の
軍事・防衛
活動に62億5千万ドルを使った。1940年7月から1941年3月までに、アメリカは
1、610億ドルをつかって
いる。満州事変から降伏まで、14年間の日本の総軍事予算は480億ドルを
下回っている。戦争の全期間を
通じて私たちが支出した軍事費は3、300億ドルにのぼっているのだ。


鉄鋼生産だけとってみても、十分状況がわかる。1939年、アメリカは5,250万トンの鉄を生産していた。
生産はさらに増大し、1942年には8、800万トンに達した。日本の生産量は1934年333万4、000トン
である。


「アメリカの鏡・日本」に太平洋戦争当時の日本とアメリカの軍事費の比較や国力の違いが詳しく書かれている。
この本での日米双方の軍事費の総額と年度にいくつかの疑問はあるが、何れにせよこの両国の国力の大きな
違いがよくわかる。上記のように工業、軍事国家としての日本はドイツや
アメリカにくらべてピグミー程度のもの
(著者の表現)であるにも拘らず、何故日本は戦争を始めたのか? 
この本の著者もこの疑問を解明する
ためにこの「アメリカの鏡・日本」を著した。


「アメリカの鏡・日本」(角川書店発行)の著者、ヘレン・ミアーズ(Helen Mears)(1900~1989)は
この本を太平洋戦争終戦の3年後の1948年に著した。彼女は1920年代から日米が開戦する直前まで
二度にわたって中国と日本を訪れ、東洋学を研究、1946年に連合国最高司令官総司令部の顧問機関
「労働諮問委員会」のメンバーとして来日した。

この本が発行された年に日本での翻訳・出版をするため翻訳家はGHQに嘆願書を添えて出版の許可を
求めたが却下された。
この本では太平洋戦争における連合国側の責任も記述している。1946年から
1948年に行われた極東国際
軍事裁判との関係からGHQとしては到底許可することは出来なかったものと
思われる。


現在の日本の中国・韓国との対立を考える上で、この著作は非常に示唆に富んだ内容となっている
どのようにして国と国とが戦争に至るのか。
著者は欧米列強のアフリカ・アジア・南アメリカでの植民地
政策と日本の満州進出にいかほどの
相違があるのか疑問を投げかけている。欧米列強は植民地政策を
通じて支配、搾取を行って来たが、日本は現地政府の独立支援(欧米列強は傀儡政権と非難したが
植民地政策を続けた国々が言える話ではない)
や治外法権の返上を行っていることを考えると、
連合国側に日本を裁く権利はないのではないかと指摘している。
とは言え、勿論、日本軍がアジアや
中国で行った残虐行為について許しているものではない。


これまで日華事変から太平洋戦争開戦に至るまでの状況に多くの疑問があったがこの著作はその多くに
回答を与えている。



最新の画像もっと見る

コメントを投稿