政治家の公約と気象庁の長期予報は、ありがたいことにその「予言」の期日にはもう世間の人はそれを覚えていない。そうでないと永田町は毎年「政界再編」しないといけないし、気象庁は毎年大幅人事異動で混乱する。
ただこの点では政界にわずかながら改革の兆しが見える。最近は「マニフェスト」なる一種の御誓文を政党が公表するので、これを保存しておけばチェックは可能になった。言いっぱなしで無責任なのが気象庁の長期「予報」だ。
今年の冬は寒い。異常に寒い。平年以下などという生易しいものではない。然るにこの秋の段階で、気象庁の公表した”占い”はどうであったか。
例えば、大阪管区気象台 9月22日発表の「近畿地方 寒候期予報」によると、「冬(12月から2月)の出現の可能性が最も大きい天候は以下のとおりです。 日本海側では平年に比べ雪の日が少ないでしょう。」 そして「12月の気温が平年よりも低くなる確率を20%」としている。
正反対である。減税をマニフェストに掲げていた政党が大増税に踏み切るようなものである。占い師なら見料返せと迫られ、証券マンなら闇討ちにあっても文句の言えない背信だ。しかし気象庁幹部がカメラの前で「お辞儀ゲーム」をすることはない。
それでもさすがにまずいと思ったのか、今日のニュースでは「気象庁は来週、あらためて今冬の見通しを示す方針で、暖冬予測の修正を迫られる可能性もある。」(東京新聞12月17日)と、非難の風向きを変えようという努力を見せている。
気象庁の弁明は「想定外」の大気の流れ、具体的には「シベリアに現れた“謎の高気圧”」が原因(西日本新聞12月16日付)ということらしい。しかしこの異常気象の時代にそもそも過去の経験則を当てはめようというのが間違いなのだ。今の地球の気象は十年前の気象ではない。その様な危機を感じさせる兆候が。
北山杉は警告する
12月に入っての雪害で京都の北山杉が深刻な打撃を受けているという報道。京都新聞12月16日付。「京都北山丸太生産協同組合だけで、少なくとも5000本以上が折れたり裂けたりした。12月上旬の雪害は経験がない」。(写真は倒れた北山杉。京都新聞記事から)
<組合の中田治専務理事は「自然災害とはいえ、これほどの被害があると、北山での林業が難しくなるかもしれない」と話している。>というから、単に雪害というだけでなく、気候変動によって京都の北山杉自体が急速に消滅しようとしていることになる。
地球温暖化対策を定めた「京都議定書」合意の地で、川端康成の『古都』に美しく描かれた北山杉が存亡の危機に立っているというあまりにも象徴的な出来事だ。温暖化の影響は誰が考えるよりも早く具体的な現象となっているのかもしれない。
だから気象予報官も予想ハズレの言い訳をしたり雲隠れするのでなく、これを地球的な気候変動がもたらした異常事態の表れとして積極的に訴えることだ。
例えば今年のような丸ハズレの場合には次のようなパフォーマンスで世間の耳目を引きつければよい。
お白州の上に、白装束で胡座をかいた予報官。カメラに向かって語りかける。「拙者 浅野匠 気象予報官は今冬予報において決定的な間違いを犯しました。最早世間の人にあわせる顔もない。最後に辞世を詠むことをお許し願いたい。
風さそふ 予報外して 我はまた 温暖化対策 いかにとやせん
それでは、さらば」と、前に置かれた短刀を手に取ったところに上司が駆けつけ、「待て、浅野、お前の予報が外れたのは地球温暖化のせい。この異常事態の原因を突き止めて対策を見出さぬ限りあの世に旅立ってはならん。ひとつここはお前の命、ワシに預けんか。」、「予報課長~!っ」二人抱き合う・・・
まあこれくらいコテコテにクサくやれば、園児や政治家にも現在の地球的危機を訴えることが出来るんじゃないかと・・・