おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

山内一豊は「ヤマウチ」:NHKが「決定」

2005-12-05 11:50:17 | 発見
 「ああワシに馬がいれば信長様にお仕えできるのに」、「どうかこのお金で名馬をお買いくださいませ」という故事で誰でも知っている山内一豊。と言うか、実は有名なのはこの「内助の功」の鑑、一豊の妻の方なのだが、とにかく来年のNHK大河ドラマ「功名が辻」の主人公に抜擢された。
 ドラマの出来不出来にかかわらず、「大河」に登場すれば地元の観光客は急増する。一豊が長浜城主を務めていた湖北と、後に土佐藩主となった高知県は共に期待に胸膨らませる。

 ところがこの2つの「地元」に思わぬ対立が生じた。「山内」をどう読むかという一見些細な問題だが、NHKが読みを”ヤマウチ”に「統一」したため戸惑いが生まれているという。

 京都新聞12月5日によると、湖北では昔から”ヤマノウチ”一本で、<地元では年配者の大半は「『ヤマノウチ』としか口にしたことがない」と話している。> 一方高知では<「ドラマ化以前から県民になじみの『ヤマウチ』を用いている」>と大満足

 高知v.s.滋賀の争いは高知が圧勝したのだが、これは元NHK記者の橋本大二郎氏が高知県知事だからというのは穿ちすぎた見方だろう。<「寛政年間の幕府公文書の表記や慶長年間に豊臣家関係者が山内家にあてた書簡に『やまうち』と仮名文字で記されている」>とNHKは根拠を上げている。

 両方を併記とするのが「平等」な扱いだが、まさかドラマのセリフで、「あっ!”ヤマウチ”様、または”ヤマノウチ”様、危ない!」と言わせるわけにいかない。日本最大のマスコミNHKの権威は絶大だ。人名”関ケ原”に敗北した”ヤマノウチ”は、「間違った読み方」として石田三成のような運命をたどらざるを得ない。

 表記の問題では、報道の分野ではNHKはもっと”こだわり”を見せている。例えば自衛隊が駐屯しているのは、NHKによると、「サマーワ」であって、他の報道機関がすべて「サマワ」としていても一向に揺るがない。たぶん「アラビア語ではこの発音の方が近い」というのだろうが、しかし例えばМоскваは現地読みでは「マスクヴァ」だが、NHKでも他のマスコミと同じく「モスクワ」としている。

 しかし日常的にもっと困るのは年号の表記だ。「昭和54年に起こったこの事件では」・・ん?えーと何年前かな。電波メディアでは少なくとも報道分野では元号でなく西暦を用いるのが圧倒的多数派だ。NHKは西暦を嫌っているのかと言うほどニュースでも元号で押し通している

 あまりに不便なので、一度NHKに電話してこのことを尋ねてみたのだが・・・・「その点については、編集権にかかわることであり、なぜ元号を用いるかの理由については一切お答えできません。答えないというのが解答だと受け取ってもらってよろしい。」といきなり喧嘩腰で言われたのでこちらの方が面食らってしまった。迂闊だった。どうやらここはNHKの奥の院のようだ。疑問を差し挟んではならない。

 山内一豊が、”ヤマウチ”と呼ばれようが、”ヤマノウチ”と呼ばれようがもはや抗議できない幽明界を異にする環境に住んでいるように、私たち視聴者もNHKニュースには質問さえ許されない別世界にいるのだ。