おもしろニュース拾遺

 BC級ニュースが織り成す可笑しくも愛しい『人間喜劇』。おもしろうてやがて悲しき・・・

貸金業者に「クリスマスキャロルを読みなさい」:裁判長

2005-12-23 14:07:24 | 快挙・怪挙
 
(↑『クリスマスキャロル』の初版の挿絵から)

 クリスマス直前に、ちょっと粋な和製のニュースが。全国ニュースになっていないので、いっそう紹介する値打ちがあると思います。
 12月22日青森地裁での出来事。事件はよくある無許可貸金業の裁判。公判で突然裁判長が被告に語りかけた。「チャールズ・ディケンズの『クリスマスキャロル』を知っていますか」。

<裁判官は「この時期に、あなたを見ていて思い出した小説がある」と切り出した。評判の悪い金貸しの男が、クリスマスイブの夜に見た夢で改心し、町の人のために尽くしたというあらすじを紹介。「社会的弱者のために自分が何をできるか、考えてください」と諭した。> 河北新報12月22日

 この被告の罪は、青森市で貸金業登録を受けていないにもかかわらず、男女5人に計75万円を貸し付け、月3割の利息を取ったというもので、この手の犯罪ではそれほど悪質とは言えないでしょう(と言うか、あまりにも大きな「悪」の犯罪報道で感性が麻痺しているのかも)。まあ『クリスマスキャロル』の主人公、ケチで身勝手なスクルージ(Ebenezer Scrooge)爺さんも、別に犯罪をやっていたわけでないので、どうしょうもない「悪」というわけではありませんから。
 「被告の男も神妙な面もちで裁判官の話に聞き入った」と記事にはありますが、『クリスマスキャロル』を読んだかどうかは疑わしい。ただ、<傍聴席からは「クリスマス前に良い話が聞けた」との声が漏れ>たということで、少なくとも傍聴人には感動を与えたので、最近不祥事が続く日本の裁判官にもちょっと気の利いた人(季節を考えた発言)がおられるということを見せただけでも○。

 明日がクリスマスイブですが、『クリスマスキャロル』をまだ読んでいない方は、ここから無償で全文の日本語訳が手に入りますので今からでも間に合います。
 英語の原文はもっと簡単に入手できます。

 ディケンズの『クリスマスキャロル』については、ここに作品の背景や解説(英文)、初版の挿絵などがあり当時の雰囲気を楽しめます。

 それにしてもです、19世紀のロンドンから時空を隔てた21世紀の日本のクリスマス。気象予報士全員切腹かという想定外の寒空の下で凍えている人たちのことを想うと、日本の「スクルージ爺さん」に余計な一言を言いたくなるのが悪い癖。
 「ご利用は計画的に」しなかったからだと言われますが、急に妻が病気になって「計画」が狂ってしまったんです。ああたとえ姉歯設計のマンションでいいから入りたい。または電気を止められて震えている人は多いはず。
 「あんた地獄に落ちるわよ」なんて品のないことは申しませんが、ディケンズのスクルージよりももっともっと貯めこんでおられる「スクルージ」族の社長さんが、クリスマスだけでもちょっと粋な計らいをしても「精霊」から文句は出ないと思うのですが。